初戦闘で自分を見つめ直す
光輝の注意勧告が終わると全員に落ち着きが戻ったからか、ブラッドさんが最後の説明を始めた。
「これからダンジョンに入るわけだがそれぞれに三つ渡しておくものがある。
一つ目は鑑定盤と言われてる、素材や魔物について忘れたことや見たことがないやつはこれを通して見るといいですよ。
二つ目は連絡鐘と呼ばれる物です、何かあったらこれに魔力を通すと対応した鐘がなるからすぐ駆けつける、終了の時間になったらこちらが使うからそれまで自由にするといいです。
三つ目はまあ、弁当ですね昼はこれで済ませるように、今回は護衛の兵が見張りをするが仲間内で次に機会があったらどの順番にするか決めといてくださいね。」
最後の説明が終わりついにダンジョンに入る時が来た、それぞれに付いた護衛兵に先導されるように馬車に乗った順で中に入っていく。
それにしても人が門を潜るのを見てるとダンジョンだとは分かりにくいな、外見は完全にただの遺跡なんだが本当にこれの下に何十階層もあるんだろうか。
「そういや樹って武器は双剣にしたんだな、てっきり槍にするのかと思ったぞ。」
「別に槍でも良かったが遠、中距離はスキルでどうとでもなるからな。」
「でも両手塞がったら使えなくないか?」
「え?あぁ、模擬戦のやつね、掌から出してたのはブラフだ。出そうと思えばどこからでも出せる、イメージのし易さって問題はあるがな。」
うわ、マジでチートだよ、イメージのし易さってまだ厨二病が抜けきってない俺らには問題にならねえだろ。
樹のスキルの性能に少し引きつつ時間を潰していると俺達の順番が回ってくる。
遺跡の中に入るとあったのは四方の壁に描かれた壁画と階段が一つあるだけだった。
階段を降りると上の遺跡とは異なり幅がおそらく4、5メートルの薄暗い洞窟だった。
俺のチームは俺と樹と護衛だけなので割と最後の方だったせいか大半はもう行ってしまいここに残るのは俺たちの他には話あっているリア充グループにここで待機するブラッドさんだけだ。
「で、今からどうする」
樹が聞いてくる、道は今降りてきた階段と左右の三方向。
「できることなら帰りたいんだが」
「いやダメだろ、てか脱出するなら今だろ、レベル上げとかなくていいのか?」
護衛兵には聞こえないように聞いてくる。
「流石に冗談だ、あとその件は性格スキルの使い方とかも分からんしな、今は様子見だ。」
とは言っても力を持った高校生の集団の中とか一緒にいたくないから早く出て行きたくはあるが、あいつら数が揃えば俺以上に自分勝手だからな。
とりあえずいく方向だけでも決めとくか。
「まあそこら辺は置いといて右でいんじゃね、ク◯ピカさんも言ってたし。」
「確かクラ◯カ理論って自然には通用しなかったんじゃないか?別にいいけど」
俺達2人と護衛兵1人でダンジョンを進む。
しばらくして一つ目の曲がるとモンスターが現れた。
「ゴブリン2武器棍棒、俺が前衛でいく。」
軽く樹に伝え俺は習った付与魔法を発動する。
思い浮かべるは付与の基本の魔法陣、そこに付与する対象、属性、威力を書き足し魔力を流す。今回は手に持つ片手剣、属性は炎、威力は下位。
「エンチャントフレイム」
俺は走り出し魔法を発動させた、流石に気付いたのかゴブリンも戦闘体制をとる。
「グギャア、グギガ」
「ギャアグ」
俺達が元いた場所から弧を描くように走る。
「飛雷針」
「「ギャアアァァァ」」
俺の横を圧倒的スピードで飛来した針がゴブリンの至る所に刺さる。
ナイス、悶えるゴブリンが痛みに耐え再び戦闘体制を取ろうとする。
が、もう遅い。まだ足もふらついているようなゴブリンの首を俺の炎の剣がとらえる、
グチャッ、ゴリッ、ジュワッ
お世辞にも綺麗とは言えないような肉を切った感触や焼けた音が伝わる。
初めて生き物を切った。吐き気などはないがやはり思う所もある、気付いた時にはもう一体のゴブリンは棍棒を振り上げていた。
この攻撃を避けなければあと数秒とかからずに俺に強力な一撃が叩きつけられるだろう、全力に横に飛ぶ。
「雷刃」
飛んだ直後に背後から雷の斬撃が飛んでくる。
バチイィィ!!
「危ねぇよ!!当たる所だったぞ!!」
「大丈夫だろ、何のための先読みだよ」
「分かってたよ、分かってたけど少なくとも味方の不意打ちを避けるためのものではないわ!」
「そんな連携には持ってこいなスキル使わん手はないだろ。」
別に本気で怒ってるわけでもないし助けられた訳ではあるが、なんかなあ。
「おら、さっさと回収するぞ。」
はいはい、分かってますよ。
ダンジョン産の魔物は肉体が魔力で出来ており、倒すと肉体は消え魔石が落ちる。
小さめの魔石を拾うと樹が問いかけてくる。
「どうだった、やっぱきついか?」
この手で殺したことについてだろう、全く何も感じなかったといえば嘘になるだろう。
「いや、そこまででもないな。少し気持ち悪いが向こうの世界でも生きるために食ってた、その自覚はそれなりに持った上で生活してたつもりだ。この世界で俺が生き残るために……、まあ元から自分を中心に考えやすい性格だし、この一週間で割り切ったよ。」
「そうか……次は俺が前線に出る。」
「了解」
そこまで深く踏み込んでくる訳でもなく丁度いい距離感をとってくれる、ありがたいな。
「敵発見、ゴブリン3、武器棍棒」
次は樹が見つけて駆け出す、俺は後衛ができるスキルはないが支援くらいはできる。ここにくるまでに拾った石ころを数個手に乗せ
「エンチャントサンダー」
腕から手に持った石までに雷のエンチャントをかける
先程の俺と同じように駆ける樹、
「ふっ!!」
雷を纏った腕が唸り石ころが雷の尾を引く。
2匹のゴブリンは四肢の一部を撃ち抜かれ、1匹は当たりどころが悪かったのか即死だった。
先程と同じように悶えるゴブリン達の両方に樹は双剣を突き立て、雷を流す。
「ショックボルト」
2匹のゴブリンは何も出来ずに煙を吹き倒れていった。
同じように魔石を拾い樹に尋ねる。
「そっちはどうだったよ」
「刺しただけではあるが結構気持ち悪いな、割り切るのは時間が必要そうだ。理屈ではお前の考えも理解できるが気持ちがついて来ねえよ。」
苦い顔をして答える
「そうか、……今日は俺が前衛を担当する。」
「すまんな。」
「おう、そのかわり後方支援は任せたぞ。」
今日、俺達は初戦闘を行い自分と見つめ合う機会を得ることになった。
主人公の性格が垣間見れる?回ですね。




