55話
大分間が空きすみませんでした。
この後も、ひと月くらいは安定して出せないような気がしますが、そろそろ時間に余裕がうまれ始めたので書きためていきたいと思います、なのでしばらくは不定期更新かと思います
〝異世界召喚もの〟と呼ばれるジャンルにおいて、〝奴隷〟というものはよく出てくる。
これはおそらくは奴隷というものが圧倒的なまでの弱者であり、それを主人公が助けるというのが世の中にいる弱者にも救いはあるのだということにつながり、また奴隷に対してひどい扱いをするものというのがひどく醜く見え、それがわかりやすく悪者を生み出してくれるからこそ、よく出てくるのだろう。
そんな、やや冷めた感情をミツキは奴隷に対して持っているのは、ミツキが異世界召喚ものを見ているとき、物語に完全な形というものを少なからず持っているからだった。
というのも、よく大怪我をして体の一部を失った奴隷を主人公が買って救うなどという展開はテンプレよろしく扱われているが、よくよく考えてみればその救われるヒロインの周りにいる者たちに対しての救いはない。
それを救おうとしたとしても、結局助けられるのはその奴隷を売っている場所のみであり、そのほかの場所に行ってすべてを買い占めるのに、いったいどれだけの時間と労力を割けばいいのだろうという話につながってくる。
だからこそミツキは奴隷に苦手意識がある。
そういう存在を見ていると、どうしても救われない存在たちを思い出してしまうから。
──かつて救われなかったあの子と救えなかった自分を見てしまうから。
「ほう! これはこれは珍しい!」
ミツキのネガティブな思考はここで、目の前にいる恰幅のいい男の言葉によって遮られた。
今ミツキがいる場所は、実に華やかな装飾が施された一室で、もちろん、ミツキたちが訪れていた奴隷商の一室だ。
ミツキの目の前にいる男はトラウマンと名乗っており、この奴隷商を取り仕切っている支店長であり、モットーの友人という話だった。
そのために、信用してもらって結構だとモットーは言っていたのだが、ミツキたちからしてみれば、変態のモットーと友人関係にあるということの方に危機感を持っていたりしたのだが……
ここまでは特に問題はなく、リーフィアの所有権を得るところまで来ていたのだ。
しかし、ここに来てトラウマンは興奮したようにミツキを見る。
「こちらの奴隷は素晴らしいですな。まさかSクラスのスキルを有しているとは」
「?」
言葉の意味が分からずミツキは顔をしかめるが、すぐにアイリスが耳に当てて言った。
「この世界ではスキルについて、剣技ができるとか魔法が扱えるとか、その程度しかわからないことが多いの。現状でわかるのはスキルの効果が強いか弱いかぐらいで、それをF~Sまで分類分けしてるよの」
「なるほど……」
つまり、トラウマンはそのスキルのランクを表しているのだ。
そして、ミツキにはそのSクラスのスキルというのが何かわかっている。
(十中八九、〝剣聖〟だね)
ミツキは先日、リーフィアを自身が持つ〝看破〟のスキルで調べた結果を思い出していた。
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〝剣聖〟(エクストラスキル)
剣をその手に持つだけで、完璧に操ることが出来るようになる能力。長剣、短剣、刀剣、刺突剣など、剣と名のつくものすべてに適応される。
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これを見たとき、ミツキは思わず目が悪くなったのかと思ったものだ。あまりにも破格の強さである。
(あの時はこれに一方的に攻め立てられたからなぁ……)
ミツキは初めてリーフィアと会ったときの戦闘を思い出してブルりと震える。
世の中に〝完璧に操る〟などということは地球では存在しなかったが、〝直感〟に頼り切って回避するのが精一杯だったリーフィアの剣技を思い出せば確かに〝完璧〟といってもいいかもしれないと思うくらいには恐ろしいものだったのだ。
(……そう思うとなんでリーフィアが奴隷になっているのかという話だけど、それはともかく──)
ミツキは思考を一度打ち切って、目の前の奴隷商にきっぱりと言い放った。
「残念ですが、彼女をあなたにお売りすることはありません」
「……そうですか」
トラウマンは少し顔をしかめるものの、すぐに「うん」と頷いて、
「確かにその方がいいでしょうね。冒険者として、自身が勝ち得た奴隷が有能だったら手放さないほうがいいでしょう」
「…………」
ミツキとしてはそんなつもりはないのだが、ここはそう言うことにしておいた方が良いだろうという判断で沈黙する。
沈黙を肯定と受け取ったトラウマンはもう一度「うん」と頷いてミツキに言う。
「では、奴隷契約に入るといたしましょうか」
「……はい」
「どうかされましたか?」
「いえ、何でもありません」
ミツキとしてはもう少し粘るかなと思っていたのでそれが意外とあっさり終わってしまったことに驚いているのだ。
それを表情の変化から読んだだろうか、トラウマンは三度目の「うん」を挟んで言う。
「私たちは商人です。人を見る目というものはそれなりに養っているつもりですが、あなたはどうやら私の商売に対して、不快感を覚える程度には苦手意識を持っているようだ。ならばここは、少しでもあなたの中にある不快感を抑えるために、早めに切り上げるのがいいというものなのですよ」
そんなことを言いながらトラウマンは奴隷契約について説明を行い、実にあっさりとリーフィアが奴隷になるのだった。




