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【第一章完結】とぼけたS級冒険者と悪役令嬢   作者: 佐倉真稀
第一章 逃亡

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第26話 謁見

「ありがとうございました」

 パドを狩人小屋に置いて宿に戻ってきた。

「この馬はパドに返しに行くから預かっていくよ」

「はい」

 護衛してくれた、パドと仲の良いA級冒険者を見送り、厩に馬を預けた。

 鍵を受け取って部屋に戻る。

 しばらくは戻ってこれないと言っていた。

 一人で大丈夫なのだろうか?

 これで本当に襲撃があったなら、あのピアスは発信機だったということだ。

 王家が私を消したいっていう証明。

 どうしてそんなに憎まれているのかしらね。

 私の方がそういう気持ちになる状況だと思うのだけれど。


 異端審問官は多分聖女。

 聖女はわかる。

 婚約者の私が邪魔だと思っていたのだろう。

 冤罪は彼女の捏造だから、教会ではないことないこと吹き込んだのかもしれない。

 それとも、第三王子との共謀なのかしら?


「さて、お父様に連絡を取らないといけないわね」

 魔導収納から四角い金属の箱と丸い金属に収まった消音の魔道具を出す。

 消音の魔道具を起動し、四角い金属の箱を開ける。

 箱の蓋は鏡になっていて、中身は魔法陣の回路が埋め尽くし、中央に大きな魔石が嵌っている。

 その魔石に魔力を通した。

「接続、お父様」

 これは、通信の魔道具。いわゆるビデオ電話。

 通信の魔道具はこの世界にはなかった。

 手紙を届ける郵便業はあるけれど、馬車を使うから時間がかかる。

 鳥を使うことは空飛ぶ魔物がいるせいで出来ない。

 なので、電話が出来ないかと試行錯誤してできたのがこれだ。

 鏡の部分に映像と音声を双方向通信にする端子があって、制御は魔石の周りを埋めている魔法陣がする。

 これは試作品一組とこの完成品一組しかない。

 いまのところ相手先は3つしか登録できない。

 でも今は一つしかなくても問題はない。

 この技術を公表はしないつもりだから。


 ブブと音がして鏡の部分に映像が浮かぶ。父だ。

「ディア、無事だったか」

「何度か襲撃を受けて、騎士たちは全滅したわ。S級冒険者を雇えたので、無事領都レイに辿り着けたの。カウーンレイ辺境伯に謁見の申し込みをして7日後に謁見予定」

「よかった。カウーンレイ辺境伯は私の友人なんだ。隠れ家を用意して欲しいと頼んだが、娘が行くことは最近手紙で知らせたばかりだ」

「だから隠れ家がこの領都だったのね」

「ああ。無事で本当によかった。そこは隠れ家かい?」

「いえ、宿ね。貴族街にあるから市民証明書では門が通れないの。謁見の時にお願いしてみようかと思ったのよ」

「ああ、そういうことか。では無事隠れ家に着いたら連絡をしてくれないか」

「わかったわ」

 少し近況報告をして、通信を切った。


 翌朝、パドが帰ってきた。

「終わったぞ。いや、終わってはいないかもしれんが、とりあえず今回の襲撃者は領都の騎士に差し出したから、調べてくれるだろう」

「無事でよかったわ」

 本当に。

 それから謁見の日まではパドに剣術を見てもらったり、薬草採取をしたりして過ごした。


 当日、馬車が迎えに来た。

 とても立派な馬車だった。

「行ってこい」

「だめよ。一緒に行きましょう」

「え?」

 パドを強引に乗せて馬車は出発した。

 一応簡素ではあるけれどドレスは着たわ。

 髪を整えるとか、出来なかったけれど。

 ところが、辺境伯のお屋敷というか、城に着くとメイドたちにお風呂に放り込まれ、磨かれた上にドレスも用意されていた。


「……ありがとうございます」

 上等な布で作られた、シンプルなAラインドレス。

 レースは抑えめで、色はペパーミントグリーン。

 上品な色で装飾品もエメラルドの小さな石のネックレスとピアス。

 髪はハーフアップ。化粧もされた。

 白い手袋、扇子を持たされて謁見の場所に連れて行かれた。


 応接室に通され、待っているとパドが入ってきた。

 モーニング姿で、髪はきちっとオールバック。

 少し長い髪は後ろできちっと結ばれていた。

 すっと背筋を伸ばした姿は貴族に見える。

 そして私の後ろに立った。


「なぜ後ろに」

「護衛だからな」

 お茶が用意されたが、手を付けることはできなかった。

 それからしばらくして扉が開く。

 使用人が重々しく、男性を迎える。

 彼がカウーンレイ辺境伯ね。

 私は立ち上がり頭を下げる。


「顔をあげてくれ。私はカウーンレイ辺境伯代理だ」

 モーニング姿の30代と見える黒髪の男性が咳払いしつつそう言った。

 代理? 

 そう言った彼は誰かに似ていた。

「兄上、いい加減にしてください。なんでそこに立っているんです?」

「いや、今更、なあ?」

「今更なんですか?」

「はい。すみません」

 渋々といった様子で、カウーンレイ辺境伯代理の隣にパドが立つ。

「私がパドレイグ・カウーンレイ辺境伯だ」

 背筋を伸ばし、重々しく名乗るパド。

 そして、公爵令嬢のマナーを思い出してカーテシーを披露した。

「私はディアベイル・リア―ガーン、オキーフ王国リア―ガーン公爵の娘です」

 体幹は鍛えているが、別の意味で足が震えた。

 一体、どういうことなの!?

お読みいただきありがとうございます。

この話で第一章は終わり、間章を挟んで第二章を始めたいと思っています。

二週間ほどお休みをいただき、再開する予定です。


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