Grand King⑥
ファンの女性生徒が逃げる様に走り去ったあと、レンは目の前のベンチに座り、そのまま沈むように項垂れながら大きくため息を吐いた。
「初めからそう簡単には行かないか・・・まぁ・・・わかってたさ・・・わかってたけど・・・今度はどうやって彼女を探す?」
レンは目を瞑って座り込んだまま思案する。
レンが自身のぬいぐるみの写真をSNSに投稿している人物を学園ランキングのステージに立っている間、出場者用のライブビューイング会場のモニタリングモニターに映る姿からアカウント主の居場所を特定した。
しかし、連絡先を交換しないまま別れてしまった事で、手掛かりは消え、再び計画は振り出しに戻ってしまった。SNSの本アカウントはマネージャーに管理されていて、ダイレクトメッセージを飛ばす事など出来るはずも無く。当然ながら、マネージャーが管理してない所謂プライベート垢からダイレクトメッセージを送信しても、相手は自分が轟レン本人だと言う確証がない為にブロックされるだろう。
だから、直接対面でアカウントを教える必要があるのだが次に手がかりが見つかるのは次の学園ランキング開票日になってしまう。それでは、間に合わない・・・!
なんとか、再び居場所を特定する方法を見つけなければと、レンはベンチに座り込んだまま思案していると、アカウント主の女性生徒の姿を思い出した。
「あっ・・・あの制服・・・第二カレッジの制服だよな・・・?」
皇崎学園にはカレッジ(校舎)が7校舎、仮想カレッジも含めれば10校舎存在している。
そして、通学するカレッジ事に制服のデザインが違う。
つい今さっきに走り去ってしまったファンの女性生徒の制服には水色の縦線がブレザーの胴部左右に走っていた。これは、第四カレッジの制服のデザインだ。
「よし!明日にでも時間がある時に・・・・・・」
「いたー!!」
「うわあ!?」
唐突に聞こえた誰かが発した大声に心臓が止まりかけそうな程驚き、叫び声をあげた。
「やっと見つけましたよ・・・・・・どこに行ってるのかと思えば・・・・・・記事のインタビューがあるって言いましたよね?」
「ビックリした・・・なんだ佐藤か・・・・・・」
レンは急上昇した心拍数を落ち着かせる為、そっと胸を撫で下ろす。
「なんだじゃありません!なかなか帰ってこないので、インタビューは明後日にリスケして貰いましたからね」
「あぁ、助かるよ」
「次は逃げないでくださいよ?」
「逃げた訳じゃない。ただステージから降りたら気分が悪くなったから風に当たりたいと思ったんだ 」
「でも、前からインタビューは嫌がってませんでした?」
「それは・・・・・・面倒くさいから・・・」
「大統領になったら更にインタビューされる機会が増えるんですよ?練習だと思って・・・・・・」
「だから俺は・・・!・・・・・・いや、待てよ・・・・・・?君、どうして俺がここにいるって・・・・・・?」
「あれ!?あの人って・・・もしかして・・・・・・」
噴水広場の外側を歩行している女性生徒4人組の内一人がレンの方に視線を向けた瞬間に呟いた。
「これを」
その瞬間、佐藤は瞬時に鞄からメガネケースを取り出しレンに渡した。
レンは受け取り次第間髪入れずにケースを開いて、メガネを装着した。
「ん〜〜?」
メガネを掛けたレンを遠くから通りを歩いていた女性生徒が凝視する。
「どったの?」
「いや・・・・・・気のせいだったみたい」
「誰かいたの?」
「なんか、轟レンにそっくりな人が見えた気がしたんだけど・・・・・・」
「あはははっ!んなわけないじゃ〜ん常識的に考えてさ〜〜・・・・・・・・・」
「・・・って言いながら探すんじゃないよ」
「いや、本当に一瞬だけそう錯覚しただけだから・・・」
「あんまジロジロ見るなよ他人を」
「はーい」
「サナ、お前もな」
等と話しながら女性生徒四人組は通りを歩き去った。
「助かったよ 」
レンが付けたメガネは「隠変の眼鏡」というAクラスの魔法具で装着している間、周囲に自身の存在を【誰でもない存在】に誤認させる。
「隠れてる間、よりにもよって影隠を使ってましたよね?」
佐藤は「隠変の眼鏡」と同等クラスの魔法具「看破の眼鏡」を装着している為、「隠変の眼鏡」が見せる隠変状態の"レン"を"レン"として視認している。
「ああ、一人になりたかったからね」
「本当にそれだけですか?」
「それだけだよ」
「また"負けようと"してるんじゃないですか?去年みたいに、その為の計画を隠れてこっそりと・・・・・・」
「いいや、本当に休みたかっただけ。それに」
「その時に貰ったこれがあるから、俺はどうあっても"誰にも負ける事が不可能"だってわかってるよ」
レンは佐藤の前で自分の首筋右側の模様を指差した。
この模様は表向きはファッションタトゥーとして公表しているが・・・実際は違う。
この模様は――去年に父親から付けられた三項の魔法を体内に施す魔印である。
レンは佐藤に自分を見つけた時に誰かと会話していなかったか確かめようとしたが、もっと怪しくなるだけだと判断し、確証は無いが、本当にギリギリ見られていないものとする事にした。




