第45話 ひとやすみひとやすみ、一
家庭菜園で野菜を収穫したら、次にする事は何だ?
そうだ、休憩だ。
料理とか一瞬でも考えた奴は、頑張り屋さんだな。
体を壊さないように気を付けろよ。
『お主は怠け過ぎなのだがな』
そんな事を言われたって、疲れるもんは疲れる。
料理は明日やれば良いだろうって事で、午後は縁側で酒でも飲みながら、庭で遊ぶあやかし達を見て過ごそうと思う。
酒瓶とグラスを二つ持って縁側に座り、グラスに琥珀色の水を注ぐ。
琥珀色の水って言うと、酒って感じが出なくて良いな。
昼間っから酒を飲んでると、世間一般では、ろくでなしみたいに思われるからな。
これは綺麗な色がついた水だと思い込めば、きっと俺の身体も世間も水として受け入れる筈だ。
『そんな筈がなかろう。何なら我がお主の分を水に変えてやろうか?』
「止めろ勿体ない。単に色のついた水だったら飲む意味がねぇだろうが」
そんな事が本当に出来るのか?って俺も思うんだが、化け狐の場合は本当にやりかねないので、冗談で物を頼むのは危険だ。
長いこと一緒にいて、こいつの習性や付き合い方はわかっている。
例えば今は尻尾を一本しか出していないんだが、その尻尾が俺の手が届く範囲にある。
これは、撫でたければ撫でても良いぞってサインだ。
俺がガキの頃に、時々化け狐の尻尾を撫でたがったから、その名残だな。
本人が撫でて良いと言うのだから、折角なので撫でながらグラスを傾ける。
化け狐の尻尾はサラサラした毛並みで、撫でていると気持ちが良い。
「それにしても、来たばっかりの頃とは随分変わったよな」
『昔の事の様に言うが、まだ一年も経っていないのだがな』
そう、俺が馬鹿息子に追い出されて山に来たのは、去年の梅雨の終わり頃だ。
たったの九ヶ月そこそこなのだが、縁側から見える光景は見違えるぐらいに変化した。
そもそもこの縁側から変化してるんだけどな。
ここは元々、お世辞にも綺麗とは言えない山小屋だったのが、家鳴に揺らし甲斐のある家を自分達で建ててくれと頼んだらちょっとした武家屋敷にある家屋みたいになった。
家に使われた木材は、小屋の近くにあった木を古杣と思われるあやかしが切って用意した。
今でも時々屋敷の前に木が置かれている事があるんだが、あいつは姿を見せないから昼夜関係無く、いるのかいないのかがわからない。
「いまだに謎なんだが、池を作ったのは河童なのか?」
『知らん。あやつらならばやりかねないとは思うがな』
「そうだよな」
屋敷の前、庭と言って良い場所に池がある。
普通の屋敷だと錦鯉なんかを飼っているような池だが、うちの池には普通に川魚が生息している。
始めの頃は釣りをして魚を獲っていたのだが、河童が何処かから魚を持って来る様になってからは、一度も釣りはしていない。
今はもう水面が分厚い氷に覆われてるから、一々穴を開けるのが面倒臭い。
そんな訳だから河童は池に入れずに、時々屋敷に上がって水道の水で皿を濡らしている。
あれは中々に哀愁があって、見ていて面白い光景だったりする。
そろそろ氷も退かしてやるとしようかな。
2月1日よりしばらくの間は作品を非公開とします。
続きはアルファポリスで最終話まで公開していますので是非そちらをご覧下さいませ。
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