第25話 喋る座敷童
「こいつは一体どういう事だ?」
『さぁな。わからん』
五子が喋り始めた理由については化け狐にも心当たりがないらしい。
『その童はお主に一番懐いておったからな。
あやかしとしての格が上がったのではないか?
想像の域は出ないがな』
「ふぅん」
まあ、うちに居付いたあやかしは、家鳴が立派な家を建てたり、加夫羅太伊が耕した土で尋常じゃなく植物の成長が早まったりと、不可思議な性質は持っているんだが。
「それにしても、座敷童が喋るとはねぇ」
今、五子はおいしいおいしいと言いながら干し芋をパクついている。
この子は確か、うちに来るのが一番遅かったんだよな。
ただ、それこそ爺ちゃんっ子の孫みたいに俺の膝の上に乗っかっている事が多い。
重さはリンゴ一個分しか感じないんだけどな。
何処かの人気キャラクターに倣うなら。
「旨いか?」
「うん!」
頭を撫でてやるとこっちを向いて目を細めた。
一子達は五子の変化に何のリアクションも無いから、どう思ってるのかわからんな。
他の子も喋れる様になったなら、何かがわかるかもしれないが。
「考えてもわからねぇもんはわからねぇわな」
『そういう事だ。そんな事よりつまみを作れ』
全く人使いの荒い化け狐だぜ。
それから数日経って。
少しずつ五子についてわかって来た事がある。
「おいしいね!」
まず五子は喋れる様になったが、俺や化け狐の様に流暢に喋れる訳ではない。
“おいしい”とか“うん”とかが多くて、例えば俺が得意な昨今の政治経済の話なんかはまるで出来ない。
『お主の口から政治の話も経済の話も聞いた事など無いが?』
「煩いな。人の心の声に一々反応するなよ」
『ふむ』
化け狐は大人しくなった所で続きだ。
これは五子と言うか座敷童の全員なのだが、この子達が食べるのは、囲炉裏で調理したものだけだ。
理由はわからん。
加えて、家庭菜園で採れた野菜を好む。
極端な話、キュウリを串に刺して囲炉裏で焼くなんてとんでもない料理でも旨そうに食う。
流石にそんなものばかり食わせてるのは悪いから、少し真面目に料理をしようかなと考えている。
実行するかはわからんが。
そして五子は気が付くと俺の傍にいる。
俺が座ってる時に膝の上に座るのは毎回として、台所に立っていれば背伸びして調理の様子を眺めているし、寝ている時はどうやら川の字になって、一緒に横になっているらしい。
他の子達は追い掛けっこをしたりして自由に遊んでるんだがな。
仲間外れにされている様に見えなくもないが、どうやらそんな話でもないらしく。
『その童が好き好んでそうしているだけだ。
あやかしは人間がする様な下らない事はせん』
と言う事で、いじめなんかでは無いらしい。
まあ、何と言うか懐いてくれるから可愛いぞ。
幼女趣味の変態とかではなく。
『お主は年上が好みだからな』
いや、流石に、この歳になって年上好きって事はないぜ?
一人を除いては三十代までの若いお姉ちゃんが好みだよ。
五子は俺が外に出ると、縁側まで出て来る様にもなったし。
もしかしたら、そのうち屋外に普通に出られる座敷童が誕生するかもしれないな。
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