第24話 干し芋作り
雪女と河童の活躍により、サツマイモが大量に収穫出来てしまったので、干し芋を作る事にした。
干し芋の作り方なんぞ俺が知っている筈もないので、ネットで調べたところ、収穫した芋を追熟させると良いらしいと書いてあった。
追熟ってのは温度管理のもと熟成させる事で、サツマイモのでんぷんを糖に変える事が出来るんだと。
冷蔵庫の野菜室がちょうど良い温度らしいのだが。
「雪女の部屋の側に置いときゃいいか」
うちの冷蔵庫は冷蔵室と冷凍室しかないからな。
冷凍室も雪女がいるから使わないし、冷蔵室は冷蔵が必要な酒と炭酸水なんかで一杯だ。
結果野菜やなんかは雪女の部屋から漏れる冷気を使って保存している状態である。
『お主からは旨い物を作る気概が感じられないな』
「料理が上手い奴ってのは案外適当に目分量でやるんだぜ」
『お主は料理下手ではないか』
「それを言っちゃあおしまいよ」
正直に言って旨いに越した事はないが、失敗するのもそれはそれで悪くないと思っている。
今年失敗しても来年こそは成功してやるってモチベーションになるからな。
と言うか、うちの土なら時期が外れてても普通に育ちそうだから、年明けリベンジとかも普通に出来そうだが。
馬鹿息子が持って来た保存食やら何やらを屋敷まで運んだり、酒を飲んだりしつつ、サツマイモを追熟させて一ヶ月。
一ヶ月だぞ一ヶ月。
追熟期間ってのは芋の品種によって変わるらしいんだが、うちで育てた丸々したサツマイモは一ヶ月以上も掛かるんだとさ。
収穫したのをそのまんま焼き芋にしてても、十分旨かったんだけどな。
期間が空き過ぎて忘れそうになっていたが、どうにか思い出せたので早速干し芋作りを開始する。
まずは芋の両端を落として、桶に張った水であく抜きをする。
で、水につけたままあく抜きに五時間。
五時間だぞ五時間。
こういうのって真面目にやると滅茶苦茶時間掛かるよな。
サツマイモの数があるから片っ端から入れてって、寿司桶にびっしりとサツマイモが並んだ。
五時間後、あくが抜けたと思われる芋をアルミホイルで包んで、囲炉裏の灰の中に埋める。
焼き芋の干し芋が旨そうだったので、今回はそれにチャレンジだ。
酒を飲みながら、しばらく置いておくと良い匂いがして来たので、取り出して皮を剥き、一センチぐらいの厚みに切る。
切る、、、切る?
化け狐と座敷童達に全部食われた。
化け狐は少々食い意地が張っているだけだが、五人姉妹の方は食べ盛りだからな。
あやかしに食べ盛りとかあるのか知らんけど。
作った分の焼き芋が、次々に消費されていく。
明らかに収穫したばかりの芋で作った焼き芋よりも旨そうに食っていて、俺も一本食ってみたが、全然甘みが違った。
食感もねっとりしていて、正直干し芋にしなくても良くないかとすら思った程だ。
結局追熟させた分は十本も残らなかったが、皮を剥いて一センチの厚さに切り、笊に載せて縁側で干す。
普通は防護ネットを被せないと鳥や虫が寄って来るのだろうが、虫は最近やってきた巨大な蝦蟇が一匹残らず捕まえて食っているので安心だ。
こいつはミミズと同じで見えない側の人間でも見える奴だから。生物にも普通に干渉する。
ついでに言うと、鳥はこんなヤバそうな奴がいる所に近付かないので、鳥に食われる事もまず無いだろう。
昼は外に干して、夜は中にしまうこと五日。
ようやく干し芋が完成したので、実食の時を迎えた。
「あっま!旨過ぎじゃねぇかこれ」
外側はやや硬い食感だが、中はねっとり。
何よりも味が焼き芋の時よりも更に一段甘くなっていて、所謂スイーツを食べているみたいな感覚になる。
これは時間を掛けて苦労した甲斐がある味わいだな。
『旨いな。これならば良くやったと褒めてやろう』
化け狐は本当に素直じゃないよな。
一本分ペロっと平らげて物欲しそうにこちらを見ている癖に。
雪女は凍った物しか食わないので放っておくとして。
五人姉妹も干し芋を手に取って、高い菓子でも食べるように、味わって食べている。
頬を押さえているのは、ほっぺたが落ちそうってリアクションだろうか。
とにかく蕩ける様な顔をして旨そうに食っているので、作った身としては嬉しくなるな。
「おいしいね!」
ん?今のは誰の声だ?
「おいしいね!」
おかしいな。
座敷童の五子が言葉を話し始めたぞ。
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