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第21話 馬鹿息子襲来

 木の葉が黄色や橙色に色付き、夜は随分と冷え込んできた秋の終わり。

 俺の山に無断で入り込む不法侵入者が現れた。


 そいつは寺で俺が着ていた僧衣とよく似た服を着ていて、僧衣の上に厚手のダウンジャケットを着こんでいる。

 ウルトラライトなんちゃらじゃなくて、甘えの無い黒のダウンジャケットだ。

 何処かで見たような顔をしているんだが。


「親父。マジで山の中に住んでんのかよ。

 少しは訪ねて来る方の身にもなれよな」


 今思い出したがどうやら俺を寺から追放した馬鹿息子だ。

 エベレストにでも登るつもりなのかと錯覚する程の、随分とでかい荷物を背負っているが、、、。


 エベレストにでも登るつもりなのだろうか?


「カンチェンジュンガには登らないぜ?クソ親父」


「何で世界で三番目に高い山なんだよ。

 わかりづらいわ」


 こういうムービングファストボール系の小ボケをかます辺り、どうやら本物の馬鹿息子の様だ。

 滅茶苦茶な数のあやかしがたかっているのだが、馬鹿息子は俺と違ってあやかしが見えないので気にする様子もない。

 馬鹿息子は縁側から微動だにしない俺の所まで歩いて来て、でかい荷物を下ろした。


「はぁ疲れた。冬に必要なもん持って来た。

 とりあえず持てるだけ持って来たけど、残りは爺さんに預けてあるから暇な時に取りに行ってくれ」


 こういう気遣いが出来るのは親の教育が良かったからだろうな。

 誰が育てたんだったか?

 そう、俺だ。

 百パー俺の教育が良かったと言って過言では無いだろう。


「誰も頼んでないけどな」


「素直に礼を言えよ!

 ツンデレ発揮してんじゃねぇぞクソ親父!」


 このキレのあるツッコミ。

 やはり俺の教育の賜物だろう。


「ところで、何でこんなボロい山小屋に住んでんの?

 遂に本気で出家する気になったのか?」


 化け狐が上手い事やって、あやかしが見えない側の人間には今の家ではなく元あった山小屋に見えている。

 だからこんな世迷いごとを言ってくる訳なんだが。


「俺ほどの敬虔な仏教徒に今更出家だ何だと言うのは失礼が過ぎると思わんのか?」


「クソ親父が敬虔な仏教徒だったら日本人は漏れなく敬虔な仏教徒になるぜ?」


 こいつは何て酷い事を言うんだろうか。

 親の教育が悪かったんだろうな。

 きっとそうに違いない。


「細けぇ事は気にすんな。

 それよりも酒は持って来たんだろうな?

 さっさとコニャックを出せ。コニャックを」


「親父がそう言うと思っても持って来たぜ。そら」


 馬鹿息子はリュックを開いてコニャックをこちらに放り投げた。

 フランス産の高級ブランデーだぞ?

 万が一にも割れたらどうするんだと必死になってキャッチする。

 随分とひんやりしてクニュっとしたこの感触は。


「コニャックとこんにゃくを掛けたオールドスクールなボケかましてんじゃねぇぞ馬鹿息子!

 俺はお前をこんな古ボケをする男に育てた覚えはねぇ!」


「ふざけんなクソ親父!これがあんたの英才教育の賜物だよ!

 それに良く見ろ!それはこんにゃくじゃなくて玉こんにゃくだよ!

 一ひねり加えてて面白れぇだろうが!」


「余計な一手間で料理を台無しにするなっていつも教えてるだろうが!

 ここはストレートにこんにゃくで良いんだよ!玉こんにゃくにしたら折角の王道ボケがブレるだろうが!」


 そこから長い言い合いにはなったものの。

 馬鹿息子が本物のコニャックも持って来ていたので仕方がないから許してやった。

こちらの小説はアルファポリスで開催中の【第7回キャラ文芸大賞】にエントリーしています。

アルファポリスでは既に60話以降の投稿を開始していますので、是非そちらもご覧頂き、面白いと思ったら【投票】をお願いします。

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