第18話 夏の終わりと秋の始まり
9月も下旬。
夏の蒸し暑さが少しずつ和らぎ、我が家にも秋の気配が訪れている。
もう流石に時季外れでスイカは生っていない。
瓜系だから普通に食えるのか河童も消費してくれたんだが、余りそうだったので家庭菜園で採れたと言って爺に持って行った。
そうしたら代わりにブランドのサツマイモを貰ったので、今はそれを種芋にしてスイカの代わりに植えている。
キュウリは撤去しようとすると河童達が悲しそうな顔をするので、そのままにしてある。
夜になると湿気はありつつも少し涼しい日もある。
化け狐と縁側で酒を飲んでいると人魂や鬼火がそこら中に浮かんで闇を照らすので、ちょっとしたショーを見ているみたいで楽しい。
普通は同類としてまとめるのかもしれないが、人魂と鬼火を分けているのは橙と青の火の玉がいるからだ。
橙を人魂、青を鬼火と呼んでいるが、実際はどっちがどっちなのか。
そもそも名前はそれで合っているのかも謎である。
「秋は何をするかねぇ」
『夏は何もしなかったからな』
俺がしみじみと溢した言葉に化け狐が風情の無い事を言う。
意外と色々やったと思うんだがな。
「小屋を立派な屋敷に改築したよな」
『あやかしがな』
「家庭菜園を作った」
『あやかしがな』
「出来た野菜を収穫したな」
『9割以上はあやかしがな』
「いいじゃねぇかよ。皆がやりたがるんだからよ」
『確かにな。あやつらは今まで出来なかった事をしているに過ぎない』
飲み干された化け狐のグラスにウイスキーを注ぐ。
「随分と待たせちまったか?」
『本来であれば訪れる筈の無かった時間だ。
お主が気にする事ではあるまい』
化け狐の言葉を考える。
そもそもが人間にあやかしの気持ちを察しろというのは無理のある話だ。
俺と同じで放っておくとあやかしが寄って来る人間もいるにはいるが、わざわざ近付けて生き急ぐ奴はあまりいないのかもしれない。
誰だって長生きしたいだろうからな。
『お主はただそこにいるだけで良い。
あやかしからすればお主と触れ合える時間が極上なのだ』
俺が一番良く知るあやかしである化け狐がそう言うのだから、その言葉を信じるしかない。
「だとしたら化け狐はどのあやかしよりも極上の時間を過ごしてるって話だな?」
『む?そんな事は、、、ないわ』
グラスを咥えて背を向けた化け狐。
「おい、照れるなよ。
事実なら事実だって言っちまって良いんだぜ?おいおいおい」
『うるさいわ!我を揶揄うな生臭坊主が!』
何だか拗ねてしまったので、もっと強い酒を持って来て口に含み。
人魂と鬼火を一つずつこっちに来いと呼んで。
ぶぅぅぅぅぅうう
物凄く綺麗な二色の火吹きが出来た。
気分は正に世界的ハードロックバンドのベーシストだったのだが。
『酒を無駄にするな馬鹿者!』
化け狐に怒られて二度とやらないと約束させられてしまった。
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