第16話 浅漬けと氷漬け
河童から山盛りの魚を貰ってどうしようかと思っていたが。
考えてみたら、うちには冷凍食品を作るプロがいるんだった。
「雪女って滅茶苦茶有難いあやかしだな」
『あやつを空調と冷凍庫代わりに使おうとするのはお主ぐらいだと思うぞ』
そんな事を言われたって善意でやってくれるんだから甘えたって良いではないか。
「先に痛みそうだから内臓だけは抜いておくかな」
屋敷の中の台所から笊を持って来て魚をのせ、そのまま台所の流し台に置く。
扱いが雑なのはわかっているが、大して料理の上手くない60のおっさんに丁寧さとか求められても困る。
スマホで下処理の方法を調べる。
前に池で釣った魚を焼いて食った時は結構雑に処理したからな。
今回は冷凍するので痛まないようにちゃんとやっておきたい。
河童が持って来た魚は30センチぐらいで全体的に黄色味がかったドット柄なのでイワナだろうか。
魚の模様をドット柄って言う奴は自分でも珍しいと思うが。
よし、予習を完了したのでやっていくか。
まずはイワナの目と目の間を包丁で刺して絞めたら塩を振ってヌメリを取り、流水で洗い流す。
次に肛門から腹を開いて内臓を取り、エラ蓋の下まで包丁を入れてエラを毟り取る。
後は腹の中を洗い流して血の塊が全部無くなったら完了と。
「うわぁ。めんどくせぇ」
『自分からやると言ったのだから文句を言うな』
「はいはい。何匹か食うか?」
『三匹頂こう』
「それじゃあ下処理は焼きながらやるか」
『うむ』
俺も一匹食う事にして四匹下処理を終えたところで串を打って囲炉裏で焼く。
時々回してくれる様に座敷童達に頼んでおくと、全ての下処理が終わったイワナがカチンコチンに凍る頃には香ばしくて旨そうな匂いをさせていた。
適当に処理した時にも十分旨かったが、今回の方が臭みが無くて断然旨いな。
『そう言えば漬物は作らんのか?』
「今日はもう疲れたからよくね?」
『お主、寺を出てから怠け過ぎだぞ。
あやかし任せで酒を飲んでばかりではないか』
「Namzonで注文したりダンボール開けたり山の上り下りはしてるぜ?」
『上り下りは我の背に乗っているのだからダンボールを開ける以外は殆んど動いていないだろうが。
少しは働け自宅警備坊主』
中々辛辣な事を言ってくれるぜ。
化け狐がおかんみたいにうるさいので、もう一度台所に立ってキュウリの漬物を作っていく。
とは言っても大して調味料も無いので輪切りにしたキュウリをビニール袋に入れて顆粒出汁と塩と砂糖を入れて放置するだけだ。
「ふぅ。大変な作業だったぜ」
『その程度でやってやった感を出すな』
一応“苦労して作りました感”だけでも出した方が後で旨く感じそうな気がするだろ?
「文句言うなら食わせねぇぞ」
『む。すまん。我にも食わせろ』
謝ったので許す。
雑に作った浅漬けだったが素材が旨過ぎて化け狐も大満足の出来だった。
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