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花宝石の箱庭  作者: 琴花翠音
第一章 神の力を求めて
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兄弟の策

「えぇえケルトダメだよっ、危ないって…!」


 自信満々に意気込んでいるケルトの後ろから、おどおどとした少年が止めに入った。ケルトの一つ年下の弟で、ファニーたちの同級生でもあるセシルだった。彼は兄に比べてひどく消極的で気弱だった。兄の自信ある行動に尊敬しつつ慎重な判断ができるものの、なかなか自分を出すことが得意ではないのがセシルという少年なのだ。この任務の重大性も理解しているうえで、兄の無茶な行動は止めねば、という意識が働いているものと見える。

 弟にそう言われて一度止まると、ケルトはセシルの頭から足もとまでをじっと見て何かを考える仕草を見せた。その行動に首を傾げるセシルだったが、突然ケルトは彼の腕を引いた。


「よし、セシル、一緒に行こうか!」

「えええぇええぇえ!?」

「大丈夫、泣いてるだけでいいから」

「いや訳がわからないって…ちょっ…ケルト! 止まってってばああぁあぁあああ…!」


 セシルが全力で拒否するも、ケルトは彼の腕を掴んだまま隠れていた壁からずんずんと進み出てしまった。引き摺られるようにして連れていかれたセシルは既に涙目だ。それを確認すると、なんとケルトまで大泣きを始めたのだ。


「うわぁああああぁあ! ここどこー? 帰りたいよーー!!」

「っ!? そんなのっ、僕だって…わぁああぁあぁああああん」

「なんだ!? こっちから子供の泣き声が!」


 一人は演技の涙、もう一人は本音の涙…彼らそれぞれの性格を知っているメンバーからしてみれば、なんとも複雑な光景だった。そして案の定、奥の空間で監視に徹していたであろうエデンの団員が二人の泣き声に気付き、こちらへ向かってくる足音が聞こえた。ケルトとセシル以外のメンバーは、いっそう息を潜め、二人がどう動くかタイミングを見計らう。近づいてきたのは、二人の男性だった。


「なんだお前たち!? どこから入ってきた!?」

「ごめんなさいぃいい…ひっく…ぼくたちも、どうやって来たのか…っわからなくって…」

「迷い込んだってことか…?」

「いや、ちょっと待て、エデン(ここ)のあの頑丈なセキュリティをどうやったらこんな子供が突破できるんだよ!」

「確かにそうだな…でも、案外子供って何をするかわからないもんだぞ? 知らず知らずのうちに入り込んでいたっておかしくないんじゃないか?」

「そ、そういうもんか…?」

(…ケルト、あの子軽い傀儡術も使ったのね…)


 様子を見ていたセラヴィは感心していた。この短時間の間でケルトは、監視の一人に『子供はそういうもんだ』と思いこませたのだ。そうすることで、不自然な点も紛らわせてしまったのだ。ケルトの術にかかっている監視員の説得で、もう一人の誘導も出来てしまった。


「はぁ…じゃあ、君らついてきて。出口まで案内するから」

「ほ、本当…?」

「あぁ、泣かなくて大丈夫だから。さぁ、こっちだ」


 そう言って、監視員の二人は疑うことも無く、兄弟たちをセラヴィたちがいる方向へ連れてくる。その足音の距離を聞き、今か今かと待っているセラヴィ。他のメンバーも緊張した面持ちでこらえていた。

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