魔殊人形の性能
クラッシーが得意げに発表したそれは、そっくりというよりも、"エレンそのもの"だった。肌や髪の質感も見事に再現された、リアルすぎるコピー。これを作り上げた彼女の腕は相当のものであるという事実が、早々と突きつけられた。そして彼女は続ける。
「これはまだ試作段階だから、うまく作動してくれるかわからないんだけど…コピーを作った本人の意思次第で、行動をコントロールできるはずよ。エレンちゃん、なにか指示を"想像"してみて」
「えっ…じゃあとりあえず簡単なもので…」
そう言ってエレンは少し考えた後、「セーラのもとまで歩いて」と、自分の少し後方にいたセーラを見やりながら想像した。すると、もう一人のエレンは、滑らかな動作でセーラのもとまで歩いて行った。
「えっ!? 私!?」
「あ、ごめんねセーラ。ちょうどいい距離かな、と思って…」
「ううん、それはいいんだけど…それにしてもすごいですね、これ…」
セーラだけでなく、周りの誰もがすっかり感心していた。機械的なぎこちなさは全くなく、どこからどう見ても、ひとりの人間でしかなかった。
「…これだけの出来だ。相手を惑わせるには十分だろうね」
「大丈夫ですかねぇ…わたしとしてはもっと時間が欲しかったところなんだけど…」
「今はこれで大丈夫だろう。ほんの少しでも時間稼ぎができればいいんだ」
「そっか! じゃあ、わたしはそろそろ戻らないと、彼に勘付かれちゃうのでこれで!」
「あぁ、忙しいのにすまないな、クラッシー」
「いいっていいって!…あ! ごめん、もう一つ忘れてた!」
なにかを思い出したクラッシーは、今度はアールのもとへ駆け寄る。
「? なんでしょうか…?」
「これもまだ試作なんだけど…わたしの勘だと、これがすぐに役立つであろうと思うのがアールくんなんだよねぇ…ちょっと、大花盤を貸してもらえるかな?」
「え、はぁ…」
訝しげにアールは大花盤を展開する。それと同時に、クラッシーは空中にキーボードのようなものを展開し、慣れた手つきでそれを叩きだした。すると、本来の大花盤には必ずあったハンドルが、みるみるうちに消えてしまった。否、クラッシーがわざと消してしまったのだ。
「操縦するにも使っていた部分を消してしまってどうするんです」
「まあまあ落ち着いて。これも改良すべきと思ってね。これからは、大花盤に乗っても手が自由になるから、空中での作業にも強くなるわよ~! とりあえず、これで乗ってみてもらえる?」
「はぁ…」
クラッシーの言う通り、ハンドルの無い状態の大花盤に乗るアール。大花盤の中央に立ったその一瞬、足もとが光ったかと思うと、すぐにおさまった。周りで見ていた面々は不思議そうな表情をしていたが、アールがすぐに察した。




