疑いの目
「…足が固定された…」
「へっ?」
「そう! 気付いてくれた? 今まではハンドル握ってないと操縦できなかったけど、それじゃあ空中でなにもできないしね。ただ固定しただけじゃなくて、ちゃんと持ち主の動きに合わせられるようになってるから、かなり自由が利くはずだよ」
「…ありがとうございます」
「いーえ! 未だ試作段階で申し訳ないくらいだよ。…っと! わたしもそろそろ戻らなきゃ! ごめんね! また後で!」
クラッシーはそう言ってバタバタと走り去っていった。アールも大花盤から降りると、あることに気付いた。
「…この魔珠人形はどうやって解除するんだ…?」
「あ…」
道中何があるかわからない中、エレンが二人もいることが目撃されれば、魔珠人形を使った作戦もすべて水の泡になる。その場にいる全員が慌てて解除方法を探り、予定より数分遅れて出発した。
しばらく歩いていると、メリヴァが口を開いた。
「…このまま首謀者のもとへ突撃できるの?」
「っ? どうした? 突然…そのつもりじゃ…」
「ここまで"何も無さすぎる"のよ。もう向こうにガーデンが侵入しているって見抜かれているんじゃないの?ってこと」
「…確かに静かすぎる…エレンちゃんを攫っておいて、こちらが動かないなんて思うはずがないし…」
「罠…ってことか?」
「なっ…! 俺らは違うぞ!」
それぞれの見解に、マーベラやヘラスは必死に弁解しようと焦りを見せる。それに対しアールは落ち着いて諭す。
「安心しろ。何もお前たちを疑っているわけじゃない。"お前たちスパイ組も含めて"、奴らの手の上で転がされている、ってことだ」
「もっとダメじゃん!!」
「ならこの子はどうなのよ」
「えっ…?」
メリヴァはテムの方へ視線を向ける。突然の振りに、テムも困惑する。
「わ、私も違います! 皆さんを裏切って報告するなんて…! そんなことしていません!」
「ガーデンのスパイとして潜入しているわけでもないのに?」
「それは…っ」
「よせ、メリヴァ。彼女は違う。本心からグラッツに対抗したいと思ってる」
「!」
「アール…」
「すまない、最初俺も少し疑って心読術で読んじまった…今は疑ってないし、もう心も読まないから、安心してくれ」
「…やっぱアールには隠し事出来ねえわ…」
「それな…」
改めて、アールには敵わないと察したマーベラとヘラスは、軽く身震いをした。それをよそに、アールは速やかに先へ進もうとするが、エレンが慌てて引き止めた。
「エレン?」
「だっ…大丈夫なの…? さっきの話…この先、アールやみんなにも危険が及ぶ可能性があるってことでしょう?」
「大丈夫だから…さっさと決着をつけて帰る。それだけだよ」
「でも、私が…ここに連れてこられなければ…っ!」
不意に、アールはエレンを抱き寄せた。自分を責める彼女の言葉を遮り、淡く柔らかい金色の髪をなでながら宥める。
「エレン、自分を責めなくていい。お前のせいじゃないし、迷惑だとも思ってない。むしろ、ちゃんと守ってやれてない俺の方に責任がある」
「そんな…そんなことないっ…アールはっ」
「…お取込み中申し訳ないんだけど、さ…そろそろ動かないとマズいんだが…」
再びエレンの言葉が遮られ、今度はヘラスが恐る恐る入ってきた。そんな彼に対し、アールは一瞬、邪魔すんな、と言わんばかりに怪訝な表情を見せたが、エレンが咄嗟に顔を赤くしながら離れた。




