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まだプロローグ…………。
本編はいつ始まるのでしょうか…………?
幸いなことに私をきちんと友達だと思ってくれていた友人たちに囲まれて私の第二の人生は順調に始まった。
今まで家事に使っていた時間を密かに手を抜くだけでかなりの時間が確保できた時には、私はどれだけ完璧を目指していたのかと自分でも驚いてしまった。
その時間で初めてカラオケや映画に行ったり、ただ好きなことを話すだけの無駄かもしれないけど今まで知らなかったことがもったいないくらい楽しい時間を過ごしている。
「ねえねえ香奈枝ちゃん、今度の連休は何してるの?」
ちょっと過去を振り返り残念な気分になっていた私に話しかける声に、はっと意識が戻った。
「えっと、今はまだ決まってないけどそろそろ試験だからノートの見直しでもしとこうかなぁ」
「うわっ、やっぱり香奈枝は優等生だよね!
って、悪い意味じゃなくて本気でそう思ってるんだからね?」
いつも一緒にいる真由美ちゃんと由佳が感心したような顔で見てくるから少し居たたまれない気持ちになる。
勉強や運動を頑張ることがもう習慣ついてしまっているし、それはそのまま直す気もなかったから私は付き合いが良くなった今でも優等生の称号を与えられたままだ。
「わかってるって、まあ趣味らしい趣味がないから勉強が私の趣味みたいなものなんだよねぇ。
それでも連休使ってまでやらなくちゃいけないっていう訳でもないけどね」
「ふふ、香奈枝ちゃんらしいね!
じゃあ3人でお出かけにしても大丈夫かなぁ?」
にこにこと真由美ちゃんが両手を合わせて首を傾げながら聞いてくる。
うん、可愛い!
狙っているわけでもないのに可愛らしい仕草の真由美ちゃんに何だか癒されてしまった私と、何だか脱力したような由佳がそろって頷きを返す。
「わたしは大丈夫だよ」
「香奈枝には予定を聞いたのに私には聞かないってことは真由美は私のこと常に暇だと思ってるわけだ?
…………まあ、暇なんだけどさ」
「ええっ、そういうわけじゃないよ!?
由佳ちゃんが昨日『週末は連休なのに何にもすることねえ~!』って言ってたから3人で遊ぼうと思ったんだよお」
由佳のわざとらしい悲しげな表情にワタワタと慌てながら弁解する真由美ちゃんはやっぱり癒しだ。
「由佳、真由美ちゃんで遊ばないの!
じゃあ何か予定立ててパーッと遊んじゃおうか?」
「えっ、遊ばれてたの?」
「へへっ、香奈枝はノリが悪いなあ。
真由美ちゃんはこんなにノリノリに乗ってくれたっていうのに!」
「はいはい、ノリが悪くてごめんね!
で?どうしようっか?」
真由美ちゃんは乗ってたわけではないけど、あえてスルーさせて貰おう。
「あっ、うん。
あのね私の親戚で旅館をやってる叔母さんがいるんだけど、もう年だし跡継ぎもいないからって今年で旅館を閉めちゃうことにしたんだって。
それで親しい人達に今までのお礼ってことで格安の一泊3000円でお泊り・食事・温泉付きで開放してるの!
3連休だし2泊が無理でも1泊とかどうかなぁ?」
「真由美とこの叔母さんの旅館って、前に聞いたあの老舗旅館!?」
以前聞いた叔母さんの旅館は旅行雑誌にも常連のかなりレベルの高い旅館だったはずだ。
「そうそう、なんか色々事情はあるらしいんだけど一般の予約ももう殆ど断ってて、昔から付き合いのあるお客さんとかさっきも言ったけど親しい人にだけ宿泊できるようになってるんだ。
本当は卒業旅行に3人で行きたかったんだけどまだ1年と少しあるし、その頃には旅館なくなっちゃってるから今しかないんだ」
真由美ちゃんはその旅館の叔母さんが大好きでお祝いや何か行事の時なんかいつもそこに泊まりに行くと話していたから、なくなってしまうことは悲しいだろうな。
しかし、お泊りか。
ダメだとは言われないだろうけどお母さんに食事の用意なんかの手間をかけさせちゃうな。
…………まあ、いいか!
私がいなくても皆なんとかするでしょう!!
「私達までその料金でいいのかな?
まえに旅行誌で見たけど、結構高額だった気がしたんだけど」
「それは大丈夫!
私がいつも話してる2人の顔が見てみたいから誘ってみたらって叔母さんから言ってくれたんだもん」
「真由美が私達のことな~んてお話したのか気になるとこだけど、そういうことなら私は全然オッケーだよ!
どうせなら2泊で贅沢に行きたいな」
「うん、私も2泊で大丈夫だと思うよ」
「うふふ、じゃあ叔母さんに連絡しておくね?
『大好きなお友達2人とお邪魔します』って!」
うん、やっぱり真由美ちゃんは可愛い。
嬉しそうに笑う真由美ちゃんに、何としてでも許可をもぎ取る決意を新たにした私だった。
主人公の性格がだいぶ明るくなりました!
おっとりした真由美ちゃんと、さっぱりしてる由佳ちゃん。
しっかり者の主人公と合わせて周囲にはバランスがいいと思われている感じです^m^