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10ー3 婚約破棄

 10ー3 婚約破棄


 翌日の舞踏会にあたしは、叔父さんにエスコートされていった。

 グリエ君は、真っ赤なドレスを着たあたしを見て無言で微笑んだ。

 「やっぱり、そうなるんだ」

 感情のこもらない声で呟くグリエ君にあたしは、つきん、と胸が痛んだ。

 叔父さんは、グリエ君に頭を下げる。

 「グリノア様・・チカは、あなたにやれません。ですが、私は、あなたの味方です。あなたのために盾となりましょう。だから」

 叔父さんは、強い眼差しでグリエ君を見つめて告げた。

 「チカは、返してもらいます」

 「いいでしょう」

 グリエ君が頷いた。

 「チカとの婚約は、破棄させていただきます」

 「グリエ君・・」

 グリエ君、いや、グリノア様は、あたしを少し寂しげに見つめる。

 「一部の貴族から公爵令嬢とではなく聖女と婚約するべきだという声が上がっていたんです」

 「聖女と?」

 あたしは、グリエ君の背後に立っていた青いドレス姿のマリカさんに気付いた。

 「ごめんなさい、チカ様」

 マリカさんが頭を垂れる。

 あたしは。

 2人に向かって頭を振った。

 まさか、そういうことになっていたなんて。

 あたしは、ちょっと驚いたけど、ホッとしてもいた。

 こうして無事に婚約破棄されたあたしは、叔父さんと見つめあった。

 叔父さんの赤い瞳が宝石のようにきらきらと輝いている。

 「踊っていただけますか?レディ」

 叔父さんが恭しくあたしに紳士の礼をとる。

 あたしも淑女の礼をとった。

 「喜んで」

 そうしてあたしは、叔父さんと舞踏会のダンスを踊った。

 あたしがグリノア王太子殿下から婚約破棄されたことと、グリノア王太子殿下が聖女であるマリカさんと婚約したということは、すぐに会場内の人々に広まった。

 でも。

 あたしと叔父さんは、臆することなく顔を上げて2人でダンスを踊った。

 曲が終わってもあたしたちは、お互いの手をとり見つめあっていた。

 「婚約破棄おめでとう、というべきかしら?」

 振り向くとそこにはミランダ先生が立っていた。

 ミランダ先生があたしたちに『西の魔女』からの封書を差し出す。

 叔父さんが受け取るとミランダ先生がにっと笑った。

 「これからいろいろ大変だと思うけれど、同情はしないわ」

 あたしと叔父さんは、繋いでいた手を握りしめる。

 「もちろんです」

 叔父さんがミランダ先生に頷いた。

 「この償いは、必ず」

 「償い?」

 ミランダ先生がふっと口許を緩ませた。

 「勘違いしないで。婚約破棄されたのはチカの方。あくまでグリノア王太子殿下があなたを捨てて聖女を選んだのだから。あなた方が償いをする必要なんてないわ」

 舞踏会の途中であたしと叔父さんは、会場から去った。

 家に帰る途中の馬車の中で『西の魔女』の手紙を開ける。

 そこには、あたしを信頼できる人のもとに養女にだすようにという助言が

書かれていた。

 「養女?」

 あたしは、眉をひそめた。

 叔父さんの家から出ていかないといけないの?

 叔父さんは、手紙を最後まで読むとあたしを見つめて告げた。

 「チカは、今まで通り僕のもとで暮らしていいらしい。ただ、チカの姓が変わるだけだ」

 「どういうこと?」

 あたしが聞くと叔父さんが説明してくれた。

 『西の魔女』の友人のもとにあたしは、養女に入るのだけど、別に今までと同じように叔父さんのもとで暮らしてもいいらしい。

 「婚約者としてチカは、僕の屋敷で花嫁修行をするらしいよ」

 叔父さんの言葉にあたしは、かぁっと頬が熱を持つのを感じた。

 

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