信じてた
(水質はまだ伸びしろはあるけど改善方向…か。)
岩山に流れる川の水を掬い、確かめる。この山の環境は確かに変化している。
蒸都から原界へと戻り、保護された海陸は、自分が降りてきたこの山について徹底的に調べ上げた。歴史を調べ、過去の地層を検証し、導き出した答え。
蒸都はこの岩山から地下に掛けて広がる巨大な空洞に作られた地下都市だ。蒸都から出る排気は、こちらで有毒なガスとして認識され、人は近寄ることは少ない。蒸都は密かに人々の目を忍んであの機械と蒸気の街を発展させていたようだ。
原界と蒸都には決定的な違いがあった。
空気だ。
蒸都の人間にとって原界の空気はキレイすぎるらしい。あの日の最後の記憶にいる燈夜も、長い時間耐えられなかった。
あの日した、約束。不可能にも近い約束が叶う日を、海陸は待つだけに留めなかった。
外側から、蒸都の環境を変えようとしたのだ。岩山の地下深くの蒸都が、機能停止していないことを信じて。人々の手も借り緑を植え、蒸都に届くであろう水源の質を徐々に改善させていった。水が変われば土も変化する。大地の変化は大気も変える。大気が変わり、人々がきれいな空気に耐えうる身体になればいつかは__ただそれだけを願っていた。
山としての結果は出てきている。蒸都は…
何もわからない状況。不安を覚えなかったことはない。このまま、信じて良いものなのか、と。
__蒸都の底力を信じろ!!
あの日の燈夜の声だけが、海陸を引き止めた。信じさせた。
彼は今日もここへ来た。まるで隠されるように岩山の奥の奥にある昇降機。見事に入口は紛れており、まず他の人間は知らない。海陸自身も探し出すのにとても苦労をした。
知識を得てこの昇降機を使う、という手段は考えなかった。それは、蒸都を信じていないことになるから。
自分の信念がブレそうになると海陸はここへやって確認する。
必ずまた会うのだという、自身のした約束と、昇降機の冷たい金属越しに微かに伝わる振動から感じる蒸都の息吹を。
今日もこうしてそっと昇降機の外壁に触れる。遠くに感じる小さな小さな振動。
蒸都はまだ生きている。それだけで胸をなで下ろした。
__…
(……?)
手に、いつもと違う振動を感じた。今まで感じたことの無い振動だ。
遠くから伝わる小さな振動は、時間を掛けて近付いてきているように感じる。
心臓が、うるさい。
振動はやがて音を伴い感じ始めた。
服の上から首に掛けた小さな鍵を握りしめ、昇降機から一歩、二歩、離れる。全体を見渡す為だ。
覚えのある音がして、昇降機が昇ってきた。格子状の扉の中にはマスクも何もしていない人間の姿が見える。
「…っ_…」
何年離れていても。
記憶は褪せなかった。
年月を経て変化していても、確信出来た。
カラカラと乾いた音を立てて開いた扉。
「驚いた…もっと探す覚悟してたのに、まさかこんなすぐ会うなんて…な。」
変わらない話し声。
少し拍子抜けしたような顔で昇降機から原界に下り立った。
「信じてたから。“約束”。」
「…破らなかった、だろ?」
歯車が、再び噛み合った。
もわもわと思い浮かんだ場面にキャラや世界観を当てはめ、お題をいくつか入れ込み、
こだわりのない所はあみだくじで決めて物語を作る、という遊びをしておりまして。
そんな形で生まれたこの物語ですが、ひとまずゴールまで辿り着いたので投稿してみました。
拙い文章ではありますが、お読みくださりありがとうございました。
◆書き始め
→だいぶ変わりましたが、一応 ep40 あたり。
◆想定外BEST3
1:単なる嫌なヤツ枠だったはずの嶺亜が、自由にはばたく
2:普通の街だったはずの蒸都が、充電式都市と化す
3:ミロク → アンドロイド的な存在のはずが、とても素直な子に
◆あみだくじ要素
主人公性別:男 or 女
名前表記:カタカナ or 漢字
◆頂いていたお題からチョイス
『約束』
『スチームパンク』
『管理』
『脱走』
◆未消化お題
『猫』『革命』『神』『墓守』『愛』『転生』『双子』『祝福』『境界線』『妖怪』『潜入』『旅立ち』
ちゃんと形になるかは不明ですが……
お題をくださった皆様。気長に、そして期待せずお待ちください。
ちなみにこの遊び、地味にまだ続いているのでお題の追加もひっそり歓迎しております。
それではひとまずCoreはこれにて閉幕です。ありがとうございましたm(_ _)m




