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思考の反芻

家に帰ってから、諸々のことを終わらせた。

授業の予習、夕飯、お風呂……。

普段の生活は大切よね。

お風呂上がりの体から熱が抜けていく感じは嫌いじゃない。

寒いのは苦手だけれども。


「お母さん、お風呂あがったよー。」

「うん、ありがとう。」


最近、私は気づいたことがある。

私のお母さんは、相槌を打った後に、感謝を贈る。

それがたとえ、些細なことでも。

私も見習うべきだろうか。

生まれてからもう15年は経っている。

小学生くらいから数えても、10年は経っている。

どうして今になって、このことに気付いたのかはわからない。

いや、違うか。

どうして今まで気づかなかったのか、よね。


お風呂上がりで火照った体を、冷やしたい。

お風呂上りにはこれよね。

無糖のソーダ。

清涼感もあって、夏にはもってこいだ。

体の疲弊から、歯は入浴前に磨いて正解だった。


「お母さん、もう部屋に行くね。」

「はい。おやすみなさい。」

「うん。おやすみなさい。」


寝間着に着替えると肩の凝りも楽になった。

自分の布団に入ると、体の熱が少しだけ奪われる。

心地よい。

眠気も少し起こってきたかもしれない。


さて、寄り道した後に、家で用事は先に済ませた。

今日は、学校のこと……、霧崎くんのことについて考えよう。

自室の時計を横になったまま見ると、8時だった。

いつもなら、今から予習を始めている時間だ。

用事や体調で7時や9時になることもあるんだけれどね。

布団に入って、横になり、目をつぶる。

そう、今日はもうこのまま寝ても大丈夫なのだ。


少し口角が上がる。


今日は……、芹那さんと寄り道することができた。

誘ってくれてうれしかった。

それに、一緒に食べたクレープもおいしかった。

ふふっ、私の語彙力ではこれくらいしか思いつかないのかもしれない。

それでも、うれしかった。

思い出すだけで、体の脈が少し、速くなったのが分かった。

これからも、今日のような思い出ができるといいな。


でも、その前が……。

そう、一緒に寄り道する前。

振り返ったときにすでに彼はいなかった。

やはり、何かがおかしい。

今迄は、何か私の見間違いや幻覚と言う可能性も疑っていた。

でも、今日の出来事でそれはないと思う。

だから、今後は彼、霧崎くんが何かしていると考えようかしら。

それにしても、どんなことをしたのかしら。

確か、最初は……。

そう、野球部の流れ弾を防いだ。

私に当たるはずのボールを止めてくれたのよ。

次は、しんだかった時か。

確か、そっちは聞き取れた。


『エルホ……ラング……。』


びっくりするくらい、体調がよくなった。

その次は、確か、速めに学校に行った時だった。

裏庭で彼を見つけた。

教室に戻ると、時間はほとんど進んでいなかったのよね。


これで全部かな。

何と言うか、彼が不思議と言うか。

不思議なことが彼に関わっているというか。

不思議なことだ。


そして、霧崎くんが何をしたのかを聞いた答えが……。


『昨日はおまじないだ……効いたみたいでよかった。』


おまじない……、ね。

明らかに彼は『何か』をしている。

私はそれが何かを知りたい。


今迄のことを思い出して、私は一つのことに気付いた。

そう、彼の動機である。

正確にはわからないが、野球部のボールを止めた時、体調を良くしてくれた時、時間がたっていなかったとき……。


私を守ってくれている。


そう、だから、悪い人ではないと思う。

少なくとも、不思議な力で誰かを不幸にするような人では……。






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