静けさ前の慌ただしさ
それは朝というには遅く、昼というには早かった。
「お邪魔します。」
「あら、いらっしゃい。」
私のウチで、勉強会だ。
「いつも学校で白夜さんにお世話になってます。芹那と申します。」
「ご丁寧にありがとう。白夜のお友達??」
「はい、今日は勉強会に誘っていただきました。」
「そう、ちょっと待ってね。ひゃく~、お客さんよ。」
トタトタ、音がする。
「(なんというか、足音もつっきーらしさを感じる……。)」
「芹那さん、いらっしゃい。」
今は午前11時。
お母さんには前もって説明をしておいた、期末試験10日前。
「上がって、私の部屋に行こう。」
「うん。お邪魔します。」
「うんうん。」
ドア越しに聞こえていたが、芹那さんは挨拶をしっかりするんだなぁ、と考えていた。
明るい性格、礼儀正しさ。
相反するものではない……、か。
知っている人の知らないところ、そういったものもあるのだろう。
「(というよりは……、私が人づきあいが苦手なだけか……。)」
部屋の前のドアを開けた。
「あ~、涼しい。」
「外、暑かったでしょ。冷房、きかせてたんだ。」
「ありがとう、つっきー。今日は暑すぎて、溶けそう~。」
「ちょっと、待ってて。飲み物とってくるね。」
「お構いなく~。」
芹那さんの人と壁を感じさせない、けれど、要所は抑えるところを見習いたいな。
そう、母には挨拶をし、私には友達として接してくれる。
そういう自然なところに芹那さんらしさを感じる。
「ひゃく、お昼は1時くらいでいいのね??」
「うん。ありがとう、お母さん。」
勉強会をすると伝えたら、お昼を用意してくれると言ってくれた。
麦茶をお盆に乗せて、おしぼりも持っていく。
階段を上り、ドアの前に立つ。
一呼吸、一呼吸。
……さて。
「おまたせ。」
芹那さんは両腕を後ろに、椅子にもたれるような姿勢だった。
「体、冷えてもよくないから、これ、使って。」
「ありがとう。」
おしぼりで汗を拭いている。
体の冷えは危険だ。
「飲み物、机に置いとくね。」
「ありがと~。」
クスリ。
笑ってしまう。
「??、どうしたの、つっきー……。」
「ううん、さっきから、芹那さん、ありがとうばかりいうから、つい。」
笑みがこぼれてしまった。
「ああ、うん。ここまで用意してもらっちゃあね……。」
まだ暑さにあてられているようだ。
「だから、勉強も頑張ろうかな。」
「頼むよ、つっきー。」
芹那さんは片目をつぶったまま微笑んでいた。
「じゃあ、数学から。」