エピソード0:過去
友を失ってから、六年の月日が経つ。―――タンスの上に、置いてある
写真立てを見ると、あの笑顔が頭に浮かぶ。僕にとって、とても腹立たし
い最後の日になった。
今日は、友を失った場所へ花の束を供えに行く予定だった。あの場所に
行く度に、悔しい気持ちになる。梛良町の公園で、幼なじみの慶子と拓と
待ち合わせをしていた。待ち合わせ時刻は午前九時、現在時刻は午前七時
少しの焦りもない表情で本を読んでいた。
「もう、そろそろ出発するか?」
とつぶやいた。公園に向かう途中に花屋に立ち寄った。
「あいつが好きだった花ってなんだったかな。」
ふと写真に写っていた楓を思い出した。帽子にヒマワリのバッチがあった
のだ。ヒマワリを三本と適当に、花を選んだ。
自転車のかごに、花束を入れサドルにまたがった。八時四十五分、十五分
早くついたが、既に慶子と拓は公園のベンチに座っていた。とっさに、言
った。
「慶子、拓。早いなお前ら。」
「あ、亀が来た。」
と拓が言った。亀というのは、僕のあだ名だ。なぜかというと、マイペー
スだからだ。
「雨、降らなくてよかったね。」
慶子が、小さな声で言った。確かに晴れではないが、曇りの状態を保って
いる。空の色がちょっぴり悲しかった。あの日は、雨だった───。
二〇〇一年六月二十九日、午前十時三十五分、僕の携帯の着信音が鳴り
続いた。
プルルルッ プルルルッ。
「もしもし、蓮 グスッ 楓が死んだ グスッ。」
雨の音で聞き取りにくかった。
「場所は?」
「かえで町の第二交差点。」
「分かった。すぐ行く。」
と言って、傘を差さずに家を飛び出した。交差点までは、結構近い距離だ。
警察官が三人ほど見えた。




