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僕が死んだ夜、猫は「ごあん」と鳴いた ~銀色の相棒と異世界を歩く~  作者: 浮島太郎
下僕、モフモフ三匹を連れて王都へ行く

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第33話 村長さんが導き手で、僕は“特異点”らしい

白銀の謁見の間は、息をするのもためらわれるほど静謐だった。

天井から降り注ぐ光が揺らめき、床に刻まれた紋章の上で淡く循環している。

僕たちが進むたび、光の粒が足元でふわりと舞い上がった。


玉座の前で立ち止まると、

その奥に座る人物がゆっくりと顔を上げた。


――国王陛下。


白い衣をまとい、長い銀髪を背に流し、その瞳は森の奥の泉のように澄んでいた。


その瞬間、僕は息を呑んだ。

エルフェリアさんと瓜二つだった。

気品と静かな威厳が、姿の輪郭を柔らかく縁取っていた。

女王は微笑み、穏やかな声で言った。


「よく来てくれました。タロウ殿、そして聖獣様たち。あなた方の働きに、国として深い感謝を捧げます」


その声は、祈りそのもののように澄んでいた。

女王は立ち上がり、ゆっくりと階段を降りてきた。

その歩みは、風が形を持ったように静かで美しい。


そして、僕の隣に立つエルフェリアさんの前で足を止めた。

二人の視線が重なる。

その瞬間、謁見の間の空気がわずかに震えた。


女王は、柔らかい目で微笑んだ。

「……帰ってきたのですね、エルフェリア」


エルフェリアさんは、ほんの一瞬だけ目を伏せた。

その仕草は、普段の彼女からは想像できないほど繊細だった。

「はい、お姉さま。長い旅でしたが……ようやく戻りました」


お姉さま――僕は思わず息を呑んだ。


女王は続けた。

「この者たちを守り、導いたのですね。あなたらしいわ。

 森の祈りを受け継ぐ者として、誇りに思います」


エルフェリアさんは静かに頷いた。

その横顔は、いつもの優しさに加えて、王族としての気高さがはっきりと浮かび上がっていた。


僕はようやく理解した。

――エルフェリアさんは、ただの村長ではなかった。

王都ハイランドの女王の妹。この国の“もうひとりの森を治める女王”だったのだ。


女王が手をかざすと、謁見の間の光が一斉に揺らめいた。

床の紋章が淡く輝き、天井から降り注ぐ光が水のように流れ始める。


「四つの魂が揃った今、王族の祈りは新たな段階へ進みます」


女王は続けた。

「あなた方がもたらした奇跡は、この国の運命を変えるでしょう。

 そして――エルフェリア。あなたが選んだ旅路もまた、正しかったのです」


エルフェリアさんは静かに頭を垂れた。

その姿は、村で見せる優しい微笑みと、王族としての気高さがひとつに溶け合ったようだった。


謁見の間に満ちる光が、ゆっくりと色を変えた。

白から銀へ、銀から淡い緑へ――まるで森の奥で風が巡るように。


女王は玉座の前に立ち、僕たちを見渡した。

その瞳は、エルフェリアさんと同じ、深い森の泉のような色だった。


「四つの魂が揃った今、ようやく“祈りの循環”が満ちました」


祈りの循環――聞き慣れない言葉に、胸がわずかにざわつく。


女王は続けた。

「この国の魔法は、自然の恩寵を受けて成り立っています。

 しかし、恩寵はただ与えられるものではありません。

魂と自然とが互いに響き合うことで初めて、大いなる力は“形”を持つのです」


「聖獣、精霊獣、瘴気を浄化された獣――そして、あなた」


女王の視線が僕に向けられた。

「偶然ではありません。あなたが死を越えてこの世界へ来た瞬間から、すでに“呼ばれて”いたのです」


呼ばれていた――その言葉が胸の奥に深く沈んだ。


「瘴気は、ただの災厄ではありません。この世界の根を蝕む“古い影”です。

それを浄化できるのは、四つの魂が揃ったときだけ」


女王は静かに手をかざした。

床の紋章が淡く輝き、光が水のように流れ始める。


「あなた方は、瘴気に対抗する“新たな循環の核”なのです」


女王は階段を降り、僕の目の前に立った。

その距離は、手を伸ばせば触れられるほど近い。


エルフェリアさん――彼女の妹が、静かに見守っている。


「タロウ殿。あなたには、この世界で果たすべき役割があります」


胸が強く脈打った。


「あなたは、四つの魂の中心――」


女王は続けた。

「あなたは死を越え、魂の形を変え、再び生を得ました。

 その変化は、瘴気の影響を受けない“特異点”となっています」


ギンが僕の足に寄り添い、ゲンが肩の上で小さく鳴き、ポンタが胸の上で丸くなる。


「三匹はあなたを中心に力を循環させています。あなたがいることで、彼らの力は本来以上に安定し、瘴気を浄化する力が増幅されるのです」


女王は、まるで祈りを捧げるように手を胸に当てた。


「タロウ殿。あなたは、この世界の浄化に力をお貸しください」


その言葉は、重く、しかし不思議なほど自然に胸へ落ちた。


「あなたが歩む道は、決して楽ではありません。

 けれど――あなたの魂は、もう一度生きることを選んだ。

 それは、この世界があなたを必要としたからです」


女王は微笑んだ。

その微笑みは、エルフェリアさんと同じ、

優しくて、強くて、どこか寂しさを含んだものだった。


「どうか、この世界を――そして、あなたの大切な者たちを守ってください」


僕は、胸の上で眠るポンタの重みを感じながら、ゆっくりと頷いた。

「……やります。僕にできることなら、全部やります」


その瞬間、謁見の間の光がふわりと揺れた。

まるで、四つの魂が同時に応えたように。


 【王都にて国王に拝謁する:達成度一〇〇%】

  【イベント達成】

   女王陛下との謁見を完了しました。

   報酬を付与します。

  【報酬】

   銀霜猫王ギン:神獣位階が上昇しました。

   新規権能候補:浄化の光

   備考:本人の機嫌により発動率が変動します。

  【連動報酬】

   銀霜猫王の下僕一:肉体年齢が五歳若返りました。

   現在の肉体年齢:二十六歳相当。


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