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繋がりの断片  作者: 寡猫
2章:

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19/19

16話:剣を手放さなかった理由

 その日の夜。

 ラナリアの監視を兼ねて、私たちは宿屋で過ごすことになった。

 

 部屋割りは、ラナリアの監視と保護を兼ねて、カルレットと同室してもらうことになった。

 私は、護衛の都合でオーランさんと同じ部屋を使うことになり、荷物を移動させた。


「嬢ちゃん、不安なら廊下で寝るぞ」


 部屋に入った時、オーランが笑いながら言っていた。


「カルレットさんが決めたことですから、大丈夫です」


 私は、納得していた。

 けれど、胸の奥には、まだ悔しさが残っていた。

 

 それは、宿屋へ向かっている時だった。


「今後、今以上に危険な状況になることもあります」


 そう話し出したカルレットの目は、いつかの冷たい目をしていた。


「本来、リズウェルさんの同行は、中止にしないといけません」


 私はまだ、正式に騎士団へ入ったわけじゃない。

 わかっているのに、カルレットの言葉は鋭く続く。


「あなたは戦力として連れていくわけではありません」


 その言葉の続きを、聞きたくなかった。


「ティグレナ・ラグナールさんの推薦です」


 私の様子を見る様に、少しだけ言葉を止める。


「推薦がなければ、ここにいることすら許されていません」


 はっきりと言われてしまう。

 私に逃げる様に、仕向けているかのように感じる。


「……それでも、ここにいることを選んだのは、あなたです」


 選んだことを、認められたのだろうか。

 そう思った瞬間、胸の奥に何かが引っかかった。


 ――そして、ふと、あの時のことを思い出す。




 師匠であるティグレナが村に来たのは、父が死んだ翌年だった。

 理由は知らない。それでも、村を守る為に来たことだけはわかった。


「お前がメルザの子供か」


 目の前に立つ女性の存在感は大きく、担がれた大斧は、力を示しているように見えた。

 だから、お願いした。


「私に、剣を教えてください」


 短く頷くと、私に木剣を手渡してくれたのを覚えてる。


 素振りするだけでも、長く続けることはできず、手を止めた時に言われたことがある。


「辛いからって手を止めるくらいなら、剣を持つな」


 威圧とも取れる視線を向けられ、身体が動かなくなった。

 力抜けた瞬間、恐怖で涙が止まらなかった。


「お前が諦めたら、守れないものが生まれる――それが、自分の選択の意味だ」


 それでも、目を逸らさなかったことだけは覚えている。


 ――あの時も、同じことを言われた。

 だから、私は剣を手放さなかったんだ。




「嬢ちゃんよ。寝てもいいぞ」


 オーランは、剣を側に置き、椅子に座っている。

 それは、いつ、何が起こるかわからない状況に置かれていることを物語る。


 そんな状況だと認識し、寝ないほうがいいとは思う。

 でも、私が足を引っ張る状況だけは、作ってはいけない。

 

「眠れるかわからないですけど、先に休みますね」


「あぁ、おやすみ」


「おやすみなさい」


 それでも、考えることは止まらなくて、眠ることなんてできない。

 小さな物音1つさえ、気になってしまう。

 それでも、疲れからだろうか、少しずつ意識が薄れていくのを感じる。




 鳥の鳴き声が聞こえる。

 それを理解した時、一気に目が醒める。


「――!?」


 寝てしまったことに、焦りを感じながら、ベッドから起き上がる。


 静かな部屋の中に、オーランの姿はない。

 その静けさが、逆に不安を引き立てていた。

 それでも、何事もなく寝ていられたのは、そういうことだとは思うけども。


 ベッドから降り、部屋の入り口へと向かう。

 扉の前に立った時、扉の向こうから、会話が聞こえてくる。


「リズウェルさんは、ぐっすりですか?」


「あぁ、さすがに疲れてるんだろ――何も言ってやるなよ?」


「わかってますよ。彼女なりに、悩みながら前を見ていますから」


 ガチャ、と扉が開く。


「それでも、盗み聞くのは、ダメですけどね」


 扉の隙間から、笑顔で見てくるカルレットに、少しだけ恐怖を感じる。


 その後ろから、くすくすと笑い声が聞こえてくる。

 それは、ラナリアのもので、一番恐怖を感じているはずなのに、明るさが少しだけ見える。


 少しだけ、心に余裕を感じる。

 でも、その静けさがすぐに壊れることを、私はまだ知らなかった。

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