幕間:善と悪の境界
俺が騎士団へ入団したのは、18歳の時だった。
何十人もの騎士志望が受ける試験。それを乗り越えた、数名だけがなれる。
だからこそ、才能として認められる。それくらい、大事なものだ。
こうして、意気揚々としていたが、騎士団は甘くなかった。
各々の信念のもと、生き残ってきた者たちは、それだけの実力がある。
俺の自信は、一瞬で砕かれた。
きっと、俺は焦っていたのかもしれない。
強いと思い込んできた自分が、そこにはない。
剣で勝つのではなく、生き残る選択の中で、最適解を選ぶこと。
生存本能とも言えるものが、俺には足りなかった。
生きるために斬る。それがなければ、正義へと繋がらない。
それができない。
解決策なんて浮かばず、月日だけが過ぎる。
何が間違っているのか、わからなかった。
でも、結果は出せず、それを揶揄い、見下してくる人たちがいた。
人々を守る立場なのに、人を下に見ることは許されるのだろうか。
そう思った時、俺は、敵だと認識した。
それからだった。容赦なく、叩き伏せることを覚えた。
自分が求めるものへ、自分が信じるものへ、迷う必要はないと知った。
入団して半年が経ち、それは、俺自身の自信へと繋がっていった。
ある日、訓練を終え、帰っている時だった。
酒に溺れ、暴れている男たちがいた。複数人で、1人の男を囲い、暴力を振るう。
周囲の人たちは、見て見ぬフリをしている。
「こんなやつらでも、守るべき民なのだろうか」
「守る価値があるのかがわからない」
そう思ってしまった。
捕まえたとしても、数日ほど、牢の中で過ごすだけだろう。
それを、問題としない人間だ。意味はあるのだろうか?
それよりも、暴力を受ける人を、助けないといけない。そう思い、止めに入る。
「騎士団かよ、めんどくせぇ」
そう言い、立ち去ろうとする、酔っ払い。
なぜ、勝手に話を終わらせるのだろうか。理解ができない。
「処罰は受けてもらうぞ」
そう伝え、肩を掴み、引き止めた時だった。
それを合図にしたかのように、振り向く男の手には、ナイフが握られていた。
定まらない手で、握られたナイフは、ただ、後先を考えてはいないのだろう。
そんな相手を、制圧することは、簡単だった。
「離せ!ぶっ殺すぞ!」
再び、暴れ出す男に合わせるように、他の男たちは、先ほどの男を人質に捕る。
「暴力を見せびらかせば、何もできないとでも思っているのだろうか」
そう思いながら、捕らえた男の腕に、力を込める。
「善と悪ならば、悪であるこいつらに、手加減する必要はあるのだろうか」
ミシミシと、軋む音を立てながら、男の悲鳴は声を失っていく。
「そこまでだ!」
どこからか聞こえてきた声。周りを見ると、同僚たち、騎士団に囲まれていた。
暴漢を捕らえることに成功し、騒動は治る。
これでよかったのか、悩んでも、答えは出なかった。
いや……最初から、答えなどなかったのかもしれない。




