14話:選べなかった答え-後編-
クエスの言葉で、2人が近づいてくる。
「どうしたの?」
カルレットの問いに、クエスは答えようとはしなかった。
それを見て、カルレットはクエスを連れて、治療所の入り口へと向かう。
そんな2人を見送りながら、ラナリアが近づいてくる。
「……傷口見せて」
そう言い、観察をするラナリア。少しだけ考えるように、指先を動かしている。
「この力に自覚はある?」
この力とは?、そう考えていると、ラナリアは続ける。
「詳しいことは、機会があれば話すけど……できれば、その力は使わないで」
入り口へ向かった2人の方を警戒しながら言う。
それよりも、さっきまで落ち込んでいたとは思えない雰囲気に、違和感を感じる。
「ラナリアさん……?」
その呼びかけで、我に返ったように、ラナリアは答える。
「ごめんね。職業病みたいなものだから……。それと現実逃避だよ」
再び、表情は暗くなっていく。
私はどうしても、ラナリアが悪人には見えない。
それ以上に、調査隊を襲った男のほうが気になってしまう。
そんなことを考えていると、戻ってきたカルレットとクエスは、静かに私の方を見ていた。
カルレットは何か言いたそうにしながら、何も言わない。
言葉を探しているのか、悩んでいるのか、それはわからない。
「カルレットさん、あの男のことを教えてください」
何も言ってこないなら、と聞く。
少しの無言のあと、口を開くカルレット。
「……名前はリオネス。元騎士団員です」
「彼が狙うのは――何かしらの悪事に加担した可能性がある人になります」
調査隊の横領。資金の流れた先が、悪かったのだろう。そう思った。
「死亡が確認された調査隊員は、限りなく黒だと、判断されたのです」
死人に口なし。殺された人が、本当に黒だったのかは、拘束された調査隊員から聞けばわかることだ。
でも、疑問が残る。
あれだけ強かったのに、ラナリアは殺されず、生きていることに。
私を見逃しても、殺すことは可能だったと思うから。
「じゃあ、ラナリアさんが殺されなかった理由は、黒じゃない可能性があるってことですか?」
きっと返ってくる言葉はわかってる。それでも……。
「可能性で決められる話じゃないことはわかってますよね?」
思った通りの言葉だけど、私には十分だった。
だから、私は選ぶ。
「私がラナリアさんを信じる理由になるだけです」
その言葉に、ラナリアの目には、涙が浮かぶ。
「……ありがとう」
そう言うラナリアの目には、少しだけ光が灯っていた。
少しの沈黙が続いた後、口を開いたのはカルレットだった。
「そろそろ騎士団へ行きましょうか」
そう言い、ラナリアの後ろに立つ。
治療所を出る時だった。
「……他言無用でお願いします」
カルレットが、クエスに言ったのが聞こえた。
さっきの2人の反応の答えがわからないことに、不快感を覚えながら、騎士団の詰め所へと向かう。
詰め所に入ると、拘束された調査隊員がいた。
「そいつも共犯だ!」
「なぁ!隊長と出来てたもんな!」
ラナリアを見るなり、叫び出す。
巻き添えにするかのように、感じるそれは、醜く、私の選択の間違いだったのだと、思わされた。
「虚偽の証言はやめなさい!」
その光景に、声を荒げたのは、カルレットだった。
「……その程度の言葉で、責任から逃げられると思わないでください」
その声は、いつもより低く、鋭かった。
冷静に、確実性を求める人だと思っていただけに、驚きが隠せなかった。
だから、カルレットの言葉が、私の中に響いた。
「こちらへ来てください」
そう言われ、奥の部屋へと案内される。
「カルレットさん、ありがとう」
私は告げる。その言葉に、少しだけ反応を見せる。
「気分がいいものではないですからね」
そう言うと、ラナリアを椅子に座らせる。
「事情聴取の資料をもらってきますので、ゆっくりしていてください」
部屋から出ていくのを見送る。
カルレットが出ていったのを確認し、ラナリアが口を開く。
「……きつい人に見えて、優しい人だね」
ラナリアの一言に、思わず小さく笑ってしまう。
でも、その奥にあるものを、私はまだ知らない。
ラナリアが抱えているものも。
カルレットさんが飲み込んできたものも。
それでも――私は、選んだんだ。




