12話:選べなかった答え-前編-
駆けつけてきたオーランとカルレット。そして、騎士団。
私は生きてる。
助かった。
けれど……。
心の整理がつかない。
「リズウェルさん、一旦あちらへ」
カルレットに案内され、木陰へと向かう。
何を言われるのだろうか、そう考えると、少し萎縮してしまう。
木陰の下に着いた時、カルレットの肩が震えていることに気づく。
「……なんで」
その声は、とても小さくて、聞き取るのがやっとだった。
カルレットは、大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出す。
そして、私を見てから、言い始めた。
「まずは、よく生き残りましたね。ですが、いくつか問題があることも、わかりますか?」
その問いに、私は後のことは何も考えていなかった、と思う。
ただ追いかけて、戦って、人が死んで。
男の気まぐれで、生かされただけなのかもしれない。
「もし、あなたの判断が間違い、その結果、彼女が殺されていたらどうでしょう?」
また、冷たくて、悲しい目をしていた。
きっと、カルレットなりの考えがあってなのは分かる。
でも、助けたい気持ちに従っただけなのに……。
「それも含めての覚悟……と、言われることが多いです。
相手を制し、奪い、背負うこと。
それだけではありません」
物事の結果を、自分が手を下していなくても、誰かの責任になると、心の奥に突き刺さる。
「その覚悟がないなら……」
そこまで言いかけて、カルレットは言葉を止め、視線が逸れる。
「……いいえ。違いますね」
私を見て、続けた。
「あなたがどうするかは、あなたが決めることです」
それでも、と続ける声は、少しだけ重い。
「その選択で、誰かが、死ぬ可能性があることだけは、忘れないでください」
そう言い終えると、どこかを見つめていた。
そんな私たちを見ていたのか、オーランがカルレットを呼ぶ。
離れていくカルレットを見送り、私は木陰に座る。
改めて、剣を見る。
「ごめんなさい……」
折れてしまった剣は、自分の甘さなのだろうか。意思の弱さだったのだろうか。
それでも、ラナリアを助けたことは、結果として残っている。
「カルレットさんの考えがわからない……」
2人に言わず、走り出してしまったことは、ダメだったと思う。
でも、本質は違うと感じる。
カルレットが言っていることと、本当に伝えたいことは、少し違う気がした。
そんなことを考えていると、オーランが隣に立つ。
「あいつも後悔してることがあるんだ。でも、それを言えないんだよ」
前にも言っていた。色々とあると。
「剣、折れちまったな」
「父の形見です」
自分の弱さの結果だと、受け入れたいのに。
「悔しい……」
何を選べばよかったのか、わからなかった。
「剣は残念だけどな、それでも、娘が生きてくれてる方が、嬉しいと思うぜ?」
まだ、チャンスはあるはずだと、言ってくれた。
「順番に話すぞ。
まずは、今回のことについて、話そうか」
オーランは、隣に座り、言う。
「自由時間だと、お前を外してすまなかった。巻き込む可能性があったからな」
結果で言えば、自分から踏み込んでしまった。謝るべきは私だと思う。
それを伝える前に、オーランは続ける。
「あの男の目星は付いてる。でも、嬢ちゃんに今、話すべきじゃないから、ここは伏せる。
調査隊についてだが、横領が絡んでる可能性がある。だから狙われたんだ」
そう言うと、オーランはラナリアを見る。
「真っ先に逃げ出したやつらは、グレーだ。
黒とは言わねぇ。けど、白とも言えねぇ」
私は耳を疑い、言葉も出なくなっていた。
助けようと思った相手が、犯罪を犯していた可能性。
「じゃあ、私は何のために……?」
「あの桃色の姉ちゃんは、これから事情を聞く」
信じたくない気持ちでラナリアを見る。
そこには、泣き崩れる姿があった。
微かに聞こえる泣き声。
「違うっ……よ!」
それは演技には見えず、騎士団に拘束されている調査隊に向かって、何かを言っているように見える。
「あの様子じゃ、黒には見えないけどな。でも、だからって嘘とも言えないんだ」
最後に告げられたのは、死者6名。重軽傷者3名。生存者および拘束6名という事実だった。
そして、私は、何を選べばよかったのか、まだわからなかった。




