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美少年に転生したら男にモテる件について  作者: しらた抹茶
教会生活編
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27

 へいお待ち!


 と、大将の掛け声が聞こえて来そうなラーメンがやって目の前に置かれた。


 部屋を出てものの三分。カップラーメンが出来上がる間に奴は名店さながらの味噌ちゃーしゅー麺を持って来やがった。


 西洋のアンティークな丸テーブルに湯気を発てたラーメンどんぶりが我が物顔で鎮座している。実にシュールだ。

 いや、場の違和感はこの際どうでもいい。今の俺に一番重要なのは、このチャーシュー麺のクオリティである。


 艶々と輝くの麺が浮かぶは黄金色のスープに雪の如く振りかけられた背油。煮卵は勿論、メンマにネギ、どのタイミングで食べるのかよく分からない海苔の土定番トッピング。そして湯気から立ち上る味噌と豚骨の独特な香りが、空腹である俺の鼻腔をくすぐった。



 めっちゃ旨そう......!




「どえぞ、召し上がれ」


「......ぐっ......」




 笑顔で差し出す男の出前、がっつくのを一瞬躊躇ってしまう。


 しかし、しかしだ!


 こっちで生き返ってからずっと、西洋文化の料理しか口にしていなかった俺にとって、日本食は喉から手が出るほど欲していたと言っても過言じゃない。


 貴族生活の頃は気取ったコース料理で旨かったけど慣れない文化で正直疲れるし、教会の料理は旨いけど量が少なかった。



 こんな、がっつり腹が膨れそうな食い物事態久しぶりである。




「どうしたの? 食べないの?」


「うっ......く、食うよ!!」




 何故、どうやってこれほどの完璧なラーメンを作ったのか気になる点は幾つかある。

 でも、そんな疑問は後回しだ。


 視覚的にも嗅覚的にも、空きっ腹を誘惑してくる悪魔のラーメンに俺は屈服した。


 コイツに出された物を食うのは非常に癪だが、食べ物には罪は無い!!食材になった動物達の為にも残さず食べよう!!




「いただきます!!!」




 箸を手に取り、麺をすする。


 味噌のまろやかな味とニンニクの香りが鼻から抜けて、一気に食欲が爆発した。



 う、うめぇ!!!



 無我夢中でがっつき、具にもかぶりつく。教会の料理は味が薄く、量も少なかったから、このラーメンの濃い味が腹に染みる。


 一杯じゃ足りねぇ!もっとだ!おかわりを要求する!!







 ......と、思っていた時代が俺にもありました......。




「もう......無理......っ」




 あんなに腹が減っていたはずなのに、ラーメンどんぶりに麺を半分ほど残した俺は、口元を抑え吐き気を堪えていた。


 あれだけ美味しくていくらでも食えると思っていたのに、今や俺の胃袋は悲鳴をあげている。



 なんでや......なんでこんな気持ち悪いんや......。まさか、この男......ラーメンに毒を......?




「き、貴様......謀ったな......」




 ゆ、許さねぇ......!食い物に毒を仕込むだなんて卑怯な真似しやがって!俺がどれだけ腹を空かしていたと思ってやがる!!




「変な物は何も入れてないけど......んー、体質の問題かな?もしかして皐月......数日間食べ物を口にしてなかったりする?」


「............」




 そう言えば......。


 リディさんに二日間眠ってたって、聞かされてたっけ?




「......諸事情で二日間何も食べて無かった......」




 それを聞いた男は、顔をしかめて頭を抱えた。


 なんやの......それがどんな問題が......。




「二日間絶食状態でいきなりあんなヘビーなの食べたら、そりゃ胃もびっくりするよ......。知ってたら出さなかったのに」


「え? え? じゃあこれは......」


「勿論下げるよ。ごめんね皐月、お粥にしとくんだった」




 まだ半分も残っている味噌ちゃーしゅー麺が男の手によって取り上げられた。


 も、勿体ない!食えないけど、食べ物を粗末にするなと教育された身として、あれだけ残ったラーメンが廃棄されるのは胸が痛むと言うか......。


 何とも言えない表情でラーメンを見つめていると、男ともばっちし目が合った。




「駄目だよ。具合悪くなってるのにこんなの食べちゃ......。横になってて、お水持ってくるから」


「......あ」


「直ぐにヒーリングしてあげるから待っててね......大丈夫、皐月は何も心配しなくていいんだよ」


「......は」




 言うだけ言って、男はラーメンを持って部屋を出ていった。


 俺のラーメンが......。


 名残惜しく戸を眺めるが、気分が悪いのに変わりはない。大人しくベッドに横たわると、男が戻って来て俺の横にそっと腰をおろした。



 手をゆっくりと近付け、俺の前髪を優しくはらう。

 こそばゆさと、馴れ馴れしく触れられるのが嫌で首を降った。そんな俺の態度に、男は困ったように笑う。




「動かないで......ヒーリングするから」




 声色は相変わらず優しげなままだ。



 頭に置かれた手のひらから温かい光が灯り、気分の悪さがスッと消えていく。




「はい、出来たよ」


「......」


「お水、持ってきたけど飲める?」


「......ん」




 ここに来てからずっと生意気な態度しかとってないはずなのに、コイツは怒りもしなければ諌めようともせず、それどころかこうして俺の身を案じて献身的に介護もしてくれる。



 この男は、本当に何者で、俺に何をしたいんだろう?


 疑問は深まるばかりで、受け取った水を飲み干しながら男の様子を横目で盗み見る。


 聞きたい事は色々あるのだけれど、果たしてこの男が素直に俺の疑問に答えてくれるとは思えなかった。何者か、についても濁すだけで明確に正体を明かしてはくれない。



 俺はコイツに心を開くつもりは毛頭無いし、いつまでも一緒にいる気もない。



 それでも、何故こんなにも俺に優しくするのか、それだけは知りたいと言うか......薄気味悪いから理由をはっきりさせたいという気持ちが俺にはあった。


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