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美少年に転生したら男にモテる件について  作者: しらた抹茶
教会生活編
28/79

8

 おばあちゃんから貰ったじゃがいもをサンタ担ぎで運び、土手を歩く。脇道には小さな花が咲いていて、二羽の蝶が蜜を吸いに羽ばたいていた。


 それをみたアンジュが蝶を捕まえようと追いかける。


 平和だなぁ。



 さっきの老夫婦といい、この村の人達は俺が何者か知らないらしく、こうして白昼堂々道を歩いていても村人達は農作業に没頭していて俺の事など気にも止めない。たまに俺の顔を見てびっくりする人も居たけど、あの疎外感を感じさせる冷たい視線を向けては来なかった。


 見掛ける村人は年寄りがほとんどで、若者の姿が少ない。


 日本の過疎化が進んだ田舎みたいだ。


 だから屋根の雨漏りなんつー仕事をフェルムットが引き受けたんだろうか。老人には無理だもんな。


 とは言え、ここでは奇異の目で見られないから俺にとっては居心地のいい所ではある。ここに来る前は、周りから身を刺す視線を浴びながら、教会でボッチ生活を送ることになると思っていたから嬉しい誤算だ。


 スギナはイタイ発言の多い厨二病だけど基本無害だし、子供達も素直ないい子だから、今のところ俺に不満は無い。ボーンとリディさんとは距離があるけどな。





「なぁ、トニー」


「なに?ニベウスお姉ちゃん」


「......お兄ちゃんな......?あのさ、リディとボーンとはどうやって仲良くなればいいと思う?」




 年下に!しかも十は離れてる子供に人間関係相談!!


 そうです俺はコミュ障です!!




「うーん、ボーンは強くて格好いい人に憧れてるから、スギナお兄ちゃんみたいに成ればすぐ仲良くなれるよ!」


「......そっか」




 折角アドバイスしてくれたのは良いけど。



 却下。



 あんな俺teeee系のテンションで厨二かますのは無理。絶対無理。




「リディはね、ごはんを褒めると喜ぶよ。この前ね、僕がおいしい!って言ったら笑ってくれたんだ!」


「へぇ!」




 それはいい情報だ。


 成るほど、料理を褒める、ね。


 今日の夕飯あたりを攻めてみるか。




「ありがとな、トニーのアドバイス参考になったぜ!」


「頑張ってね!」


「おう」




 トニー先生にリディの攻略法を教わり、夕飯のくだりをデモンストレーションする。




『リディさん、このスープとてもおいしいです』


『え…?あ、ありがとうございます…』


『リディさんは素敵なお嫁さんになれますね。このスープ、僕は毎朝飲みたいです......』


『やだ、ニベウス様ったら......』




 脳内で勝手にリディを落とし始めた俺。


 違う違う!そうじゃ無くて、もっとこう、アットホームな......人情的にと言うか......。

 仲良くなろうと計画する頭が勝手にピンクな展開に運ぼうとする。ぐぬぅ、恐るべしリディのパイ乙。あれは視覚の暴力やで。


 そんなアホな事を考えているうちに教会に戻った。さっきまでリディと(脳内)イチャイチャしてたせいで、顔を会わせづらい。絶対おっぱい見ちゃうよ。




「もう出ていって下さい!!」




 三人揃って教会の正門から入ろうとした時だった。


 リディの金切り声が扉を突っ切って俺達の耳に届く。ただ事では無いその声色に慌てて扉を開くと、礼拝堂の祭壇にムッキムキのゴツい男がどかりと座り、それを取り巻く柄の悪い男達が、礼拝堂のベンチにたむろっていた。

 ニヤニヤとリディの胸を舐めるように見詰める男達の歯は所々抜け、小肥りの男は厭らしい手つきでリディの身体を撫でている。


 その手をリディは何事もはたき落とすが、男はそれを面白そうに笑い何事も無かったかのようになで始めた。




「うぉおおおおお!!」




 祭壇に座っている大男に果敢に立ち向かっていたのはスギナとボーンだった。二人とも木刀を振り回して男に襲いかかるが、取り巻き達に阻まれて大男にまで届かない。



 何だコイツらは。




「また来てる!」


「ぼ、ぼくフェルムおじちゃん呼んでくるね!」




 二人ともこのゴロツキ達を知っているのか、トニーはフェルムットを呼びに来た道に戻って行った。


 その声に気付いたゴロツキ達が、一斉に俺達を見る。




「ヒュ〜!こりゃ上玉じゃねぇか!いつこんな別嬪さんがこんなド田舎に来たんだい?」


「野郎が来るまでのいい暇潰しになりそうだぜ......よう嬢ちゃん。もっと顔良く見せな」




 ざっと見て十人。


 そのうちの一人が俺に近づき、骨張って爪の伸びている指で俺の顎を持ち上げた。


 ドロリと濁った黒目がギラリと光り、長い舌で唇を舐めた男はへへへっ、と、薄気味悪い笑い声を上げる。




「こりゃあそこら辺の娘とは比べもんにならねぇ......。売ったら相当な値打ち物になるぜこりぁ」


「ああん?」




 だーれが娘だってぇこの節穴野郎......。



 思いっきりドスの効いた声で唸ってやったら男がキョトンと拍子抜けした顔をした。


 ざまぁ。


 つーか、何でこんな質の悪い奴らが集まってんだ?




「ニベウスから離れろ!この悪党!!」




 ゴロツキ相手に打ち合いをしていたスギナが俺と男の間に割り込み木刀で威嚇をした。


 その姿に周りの男達はゲラゲラ笑う。




「おうおう良い見世物じゃねぇか!お姫様を守る王子様か?」


「この悪党!だってよ!俺達悪党らしいぜぇ〜?嬉しいこった!!」


「ギャハハハハ!!」




 スギナを嘲笑い、男達は俺を庇うスギナをよってたかって払いのけると、俺の腕を掴み自分達がたむろっていたベンチに引きずり込んだ。


 くそっ!全然振り払えないぞ!!




「ニベウスに触るな!」


「触るな!」




 スギナの真似をして、大男と向き合っていたボーンも俺を囲う男達に木刀を振り下ろした。


 しかし、その木刀は男達の馴れた手つきで受け止められてしまう。




かしらぁ、めんどくせぇからコイツらヤっちゃいてぇんですけど」




 スギナの木刀を掴んだ痩せっぽっちの男が、面倒くさそうに舌打ちをして祭壇に座る大男に呼び掛けた。




「駄目だ」




 大男は、その姿に似つかわしい低く、腹の底に響く威圧感たっぷりの声で一言呟いた。




「ここの連中には奴に勝つまで手は出さねぇ......その約束だ」




 筋肉隆々の大男は、頭頂部にだけ髪を伸ばし、ラーメ〇マンのような三つ編みにしている。グリーンの瞳で痩せっぽっちの男をギロリと睨み付けると、ゆっくりと口を開いた。




「怪我させねぇ程度に遊んでやれ。それ以上ヤりやがったら俺が許さねぇぞ」




 大男の威圧に押された痩せっぽっちの男がビクリと肩を震わせた。




「へ、へぇ......。分かりやした......」




 こいつが一番の下っぱなのか、痩せっぽっちの男と頭を鶏冠みたいにしたゴロツキがスギナとボーンに立ちふさがり、適当に相手をし始めた。


 二人とも、猫がじゃれついてるみたいな感じであしらわれてるんだけど......。


 怪我させるなって上から指示されてたけど、大丈夫かな......。

 はらはらしながら二人を見ていると、強引にベンチに座らされ男達にべたべたと触られた。まるで品定めするかのようにじろじろと見られ不快である。




「近くで見ても別嬪だなぁ…...、肌もスベスベだ」


「やっぱり女は美人に限るぜ......おい姉ちゃん。オレのここ擦ってくれ......さっきから痛くてよぉ」




 おもむろに俺の手を掴んたはげ頭のおっさん。リディの身体を触っていた男が、ある部位を触らせようとそこに俺の手を移動させた。



 それは、ズボンにテントを張ったチ〇コだった。




 ふぅーーー......。



 俺が女みたいに涙目になって嫌がる姿を期待しているのだろう。


 男達はニヤニヤと笑みを浮かべて観察している。


 俺の手を掴んだ男は「早くしろよぉ」と涎を垂らして凄んできた。


 その男に、俺は。




「―――フンッ!!」




 男のそれを、思いっきり握りつぶした。




「ぎゃあああああああっ!!!!」




 男は絶叫すると泡を吹いて床に倒れた。


 周りの男達は慌てて股間を抑え一斉に身を引く。


 俺はゆっくりと、その場に立ち上がった。




「なんだぁおっさん。自慢気にしてたみてーだが随分短小じゃねぇの?もしかして包茎か?剥いてから出直して来い」




 はんっ!


 人を見かけで判断してバカにすっからそうなるんだよ。ざまぁ見ろ。


 ゴロツキ達は俺が男と気付いたらしく、慌てて立ち上がると「てめぇふざけんな!」と口々に文句を良い放ち、俺の胸ぐらを掴んで来た。


 やっべ、やり過ぎた。


 とたんにビビる俺。




「いい加減にして下さい!!!」




 礼拝堂に、リディの怒鳴り声が響いた。


 ピタリと、皆の動きが止まる。




「ここは、母なるネフェリーナ様に祈りを捧げる神聖な場所です!あなた方のような野蛮な人間が汚していい場所ではないのです!!」




 今すぐ!出ていって下さい!!!!




 渾身の力で叫んだリディの顔は真っ赤に染まり、息も荒く目にも涙が貯まっていた。


 その気迫に、男達も一瞬気を取られている。


 しかし、力の無い女性の姿に男達はすぐに調子を取り戻した。




「ひでぇ神官さんだなぁ......俺達はぐれもんのお祈りはネフェリーナ様は要らねぇってのかい?」




 モヒカンの男がわざとらしく悲しそうな声色で語るが、リディはそれに毅然とした態度を崩さずに答えた。




「真心の籠った祈りを捧げるのに身分は関係ありません。ですが、ネフェリーナ様に敬意を払わず、あろう事か神聖な祭壇に腰を下ろし、色町の真似事など......恥を知りなさい!」




 凛とした彼女の声が礼拝堂に響く。


 それを面白くなそうに、祭壇に座った大男が舌打ちをした。




「ギャーギャーうるせぇ女だ。これは俺とあの野郎との約束なんだ。関係ねぇ奴が首突っ込むんじゃねぇ」


「そもそも!その約束と言うのがおかしいのです!何故―――」








「おーう。おまたせー」








 話について行けずボケッと突っ立っていると、気の抜けたやる気の無い声がリディの言葉を遮った。

 教会の玄関。


 横にトニーをつれたフェルムットが、雨漏り修理をしていた格好のまま煙草を吹かして立っていた。


 フェルムットの姿を見た大男はニヤリと口元を歪めると、ドシンと音を立てて祭壇から降りてフェルムットに歩み寄る。




「待って居たぞ」


「あっそ......」


「今日こそ、勝つのは俺だ!!」




 え?ちょ?どういう事!?


 ムッキムキの男がムッキムキの腕を振り上げ、フェルムット目掛けて筋肉の塊のような拳を振り下ろした。


 危ない!逃げろフェルムット!!




「懲りねぇなぁ。オメーも」




 その拳をのんびり眺めながら、フェルムットは煙草の煙を吐き出した。

 


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