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白い腹を上に見せ、だらんと手足を伸ばすカエルの死んだ目と視線ががっちり合ってしまった俺は、悲鳴を上げた直後に気絶した。
何度も潜水を繰り返し、長い坂道を往復して身体的に疲労していた俺にとって、串刺しカエルは精神的に大きなショックで止めになった。
あんなんいきなり見せられたら誰でもビビるだろ......。こっちはコンクリートジャングルで育った(そこそこ)都会っ子なんやで。野良犬すら見たことないお。
メンタル豆腐の俺が気が付いたのはその日の夜。
夕飯の支度が終わった頃だった。
「おお!気が付いたか!!」
目を覚ました場所は二段ベッドの下段。
つまり教会での俺の自室だ。
起き上がってベッドから出ると、ベッドの上段からスギナがひょっこりと顔を出した。
「何でお前ここに居んの?」
「おかしな質問だな!ここは俺の部屋だからだ!」
......へ?スギナの部屋?
確かに、この部屋は初日から誰かが使った痕跡が残りすぎる位残ってはいたけど。
もしかして、元々スギナが使ってた部屋に俺が入って来たって事でおk?
「そんなに驚かなくてもいいだろ。てっきり気付いていると思っていたのだがな」
まぁ、この自己主張の激しいサンドバックの人形を視たときから相部屋であることは察していたけど......。
そうかぁスギナが同室かぁ......。
普段からフルスロットルで厨二かまされるのキッツいなぁ......。
「ともあれ、ニベウスも我々の仲間になったんだ。これからよろしくな!」
「......そうだな、こっちこそよろしく」
悲観するのはよそう。
痛い発言が多いけど、スギナは悪い奴じゃなさそうだしな。
やっとまともな挨拶を済ませた俺に、スギナは俺が倒れた後の話しをてくれた。
あの後、カエルを串刺しウラドした坊主頭はリディにこってり絞られたらしく、一日中元気が無かったらしい。
エグい代物だったが、あいつなりに俺へのプレゼントを用意したのに怒られるのは面白く無かっただろうな。
夕飯後、罪悪感を感じた俺は坊主に謝ろうと近付いてみたものの、そっぽを向いて逃げられてしまった。
仲良くなれるチャンスを棒にふってしまったらしい。
せっかくのプレゼントに悲鳴を上げるような奴、嫌いになるよな。可哀想な事したかも。
部屋に戻ると、同室のスギナが珍しく塩らしい態度で肩を叩き。
「健闘を祈る」
と、告げて二段ベッドの上段に上がって行った。
健闘を祈るって、どうすりゃいいのよ。
翌日、俺はまた空き地に連れてこられた。
どうやらこいつらは俺をどうしても遊び仲間に加えたいらしい。
「遅れたが、今日は隊員の紹介をしたいと思う。本当は昨日やろうと思っていたのだが仕方がない!不測の事態は軍隊には付き物だ!」
小学校低学年以下引き連れて軍隊とか言うな恥ずかしい。いくら厨二病とはいえこれは酷い。
頭ん中小二で止まってるんじゃなかろうか。
でも、自己紹介してくれるのは助かるな。スギナとアンジュ以外覚えて無かったし。
「俺はボーン!七歳!プリヒュ教会専属守護部隊副隊長だ!副隊長と呼べ新人!!」
坊主頭のボーンはスギナの真似をして名一杯大きな態度で胸を張った。
まだ七歳か。
スギナを慕っているボーンは見たとこ何でもかんでもスギナの真似をする。
そのまま厨二になってしまいそうで心配だ......。今のうちに軌道修正してやりたい。
「僕はトニー。六歳です......、えっと、本を読むのが好きです。これからよろしくお願いします」
眼鏡童子が学級会みたいな自己紹介をして思わずほんわかする。
こんな感じで恥ずかしそうに自己紹介する奴いたなー。
「アンジュです!もうすぐ五歳になります!将来の夢は、王子様のお嫁さんになることです!!」
王子様の!お嫁さん!
幼稚園の短冊にそんな願い事書く子いたわー!!
俺を妖精の王子と思い込んでいるあたり、アンジュはメルヘンな女の子のようだ。
「そして俺が!プリヒュ教会専属守護部隊隊長にしてシーマ国最強の魔術剣士、スギナだ!!」
最強(自称)魔術剣士ね。
......魔術を使えるとは言っていないって奴ですね分かります。
「では新人、お前も自己紹介をしろ!」
「あ、はい」
皆一昨日リディかフェルムットに聞いて知ってるじゃんよ。
多分やらせたいだけだろうけど。
付き合うけどさ。
「ニベウス・マーシュマロウです。しばらくの間よろしく」
嬉しそうに拍手するアンジュとトニーに対し、ふんっ!と顔を背けるボーン。
溝は簡単に埋まりそうに無い。
「よし!お互い名を名乗りあったな!ならば早速、守護部隊としての訓練を開始する!!」
訓練って、何すんだ?まぁただの遊びだろうけど。
遊んでやるのはやぶさかでは無いんだけどね。馴れてるし。
しかし、彼らの遊び方は奇妙だった。
「これより!魔術発動の訓練に入る!!」
「はっ!」
スギナの号令に元気に答えるボーン。
すかさず二人は昨日のように手を前に突き出して雄叫びをあげた。
「うおぉぉぉぉぉぉーー!!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!」
またそれか。一体何がしたいんだ?
二人の行動を白い目で見ていた俺の横で、アンジュが二人に寄り添い一緒に手を前に出した。
「お兄ちゃん達。おっきな声出さ無くても大丈夫だよ。こうやるの!」
アンジュが「えいっ!」と声を出した瞬間。
ボコッと地面が隆起した。
......え?今のアンジュがやったのか?
「アンジュ......もしかして魔力もってる?」
「うん!」
マジか......。
「魔術が使えるように為るためにアンジュに使い方を教わってるんだよ。二人は一度も使えた事は無いけど......」
「トニーは使えるのか?」
「ううん。僕魔力無いから......」
後ろに控えていたトニーが首を横に降った。
あれに参加しないトニーは、自分には魔術が使え無いのを理解しているんだろう。
魔力が無ければ魔術は使え無い。
一を十に出来ても、0を一には出来ない。
それを分かって何もしないトニーの方が、無闇に叫んで魔術を使おうとするスギナよりよっぽど大人に見える。
でもこの子、まだ俺を女だと思ってんだよな。
のほほんとトニーと並んで二人を眺めていると、唐突にスギナが俺に顔を向けた。
「おい!何をサボっているニベウス!お前も訓練に参加しろ!」
「はっ!隊長!嫌であります!」
いきなり飛び火すんじゃねぇ。
一応軍隊のノリで拒否ってみたけど効果はいかに。
「新人のくせに隊長に逆らうな!夕食抜きの罰を与えるぞ!」
スギナと一緒に魔術を使おうと奮闘していたボーンがプンプン丸になった。
夕食抜きか。そこそこキツイな。
「何故嫌がる!魔術の特訓は基本だぞ!」
「いや、俺魔力無いから」
「諦めるな!諦めたら何も始まらない!!」
諦めたら、そこで試合終了ですよ?
俺の脳裏にホワイトデビルがよぎる。
安〇先生......、魔術が......使いたいんです。
「ニベウスは黒魔術と戦って生き延びた戦士だ!きっと使える!!」
それお前の妄想だろうが。
しかし、俺がちょっと特殊なのは確かだ。
身体の中に魔力が滞っていて呪いになってるなら、今なら俺は、魔力持ちって事にならないか?
これってちょっと、もしかするんじゃね?
「分かった。やってみよう」
アンジュの横に立ち、手を前に突き出す。
「気持ちをぐるぐる〜って手にいっぱいにして、バンッてやるの!」
アンジュが言葉足らずに説明してくれるがさっぱり解らん。インスピレーションで行くしかない。
ドラ〇ンボールを思い出せ......。
こう、気を手に集中させて......
気を放つ!!
「はぁっ!!」
シーーーン
しかし!何も!起こらなかった!!
「恥ずかしい!!!」
何、はぁっ!!......とかいっちゃってんの俺。
完成に痛い奴。
この場から消え去りたい。そうだ、消えよう!!
「お、おいニベウス!何処へ行く!?」
羞恥に耐えきれなかった俺は、教会に逃げ込んだ。
真面目にやった分恥ずかしさは倍増。もうやんなっちゃう。乗せられた自分が許せない。このお馬鹿さんめ。
裏口からキッチンを抜けて礼拝堂を通り部屋に戻ろうとすると、丁度礼拝堂を掃除していたリディと遭遇した。
静かな礼拝堂に喧しく音を発ててドアを開けた為、ベンチを雑巾で拭いた姿勢のままのリディと目が合う。
「ニベウス様?どうか為さったのですか?」
「いえ、何も......」
めっちゃ慌てて出てきたからリディが不振人物を見るような目で俺を怪しそうに見た。
Mなら歓喜するだろが俺はノーマルだ。お姉さんに蔑まれて喜ぶ性癖は持っていない。
と言うか、多分だけどリディの俺に対する好感度は低い。
初日でおっぱいをガン見したのがいけなかったのか、あれからリディは俺と距離を置いてる。
物理的にも。
いつまで世話になるか分からないが、一緒に暮らす人とはなるべく平和的な関係でいたい。嫌われるのにも馴れてないし......。
さてはて、どうした物か。
そうだ!




