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魔獣災害

 魔力豊かな紅玉星において、人々の生活を脅かすものは、大地漂白、及び、魔獣災害である。特に後者は、人の居住可能な地域を劇的に減少させるだけでなく、人命を奪い、更に魔力・自然資源も間接的に奪われてしまうことから、その対策は、文明崩壊以来、あらゆる時代の資料で急務とされてきたが、それを解決できた国家は存在しなかった。多くの国家は、魔獣災害によって失われた土地をただ手放し、時間経過と共に魔獣が減少するまで放置する、というのが多くの国家・文明で行われてきた、魔獣災害に対する対処法であった。

 世界政府においても、この魔獣災害は喫緊の課題であった。特に革命期の発端が、大地漂白と魔獣災害による失地であったことを踏まえると、我々は人々の期待に応える必要があった。しかし一方で、国家組織の解体に伴い、地方の防衛・警察組織も運営できなくなり、従って世界政府の中央府からの指示が無ければ、軍事・防衛軍を動員することが不可能になった。素早い対処が必要な魔獣災害においては、僅かな指示の遅れでさえも致命的な状況を生み出しかねない。

 そこで、世界政府は魔獣防衛組織を各地に配置し、これらの魔獣災害に対応させようと試みた。世界政府体制初期はこの方策でも問題なかったが、しかし魔獣災害は、世界政府が土地回復を進めていくにつれ、その規模を拡大させていった。これに対し世界政府は、魔工宗匠発案の狩人連合を結成、試験を通じて民間人に狩人資格を与えることで、報酬と引き換えに、小規模の魔獣災害や、魔獣の発生への対応を進めた。また大規模魔獣災害にも、防衛組織と狩人連合共同で対処することで、その被害を最小限に留めることに成功した。魔獣災害は、その規模に基づいて甲級、乙級、丙級、丁級、戊級と定め、乙級以上の大規模災害には、討伐義務を課された特別資格の魔工たちが、率先して対応に当たった。

 しかし九四〇六年、ヌズ列島のヤイヴィヴィムにて、最大級の甲級魔獣災害が突如発生した。この魔獣の群れは、ヤイヴィヴィム近海の海溝における魔力溜まりより発生しており、またヤイヴィヴィムの沿岸部の鬱蒼とした防風林も相まって、その発見と対応が著しく遅れてしまう。結果、現地の防衛組織より報告が上がった時には、既に居住区に多くの魔獣が流入、特別資格狩人が辿り着いた頃には、多くの人々が犠牲となっていた。狩猟資格の解禁から、僅か一年後に起きた、この災害に、世界政府はその対応の甘さを大いに反省することとなった。


 これを教訓に、世界政府は洞穴や深海、高山といった、人跡未踏の地で発生する魔獣災害にもいち早く対応できるよう、魔工宗匠の開発した、紅玉星全土の魔力流図観測衛星を採用した。一日中不休で世界政府の職員が交代でこの衛星映像を観測し、こうした奥地での魔力溜まりにも、即座に対応することが可能となった。

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