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55 フォークとスプーンはやっぱりです

 結局晩御飯は敦子の部屋で食べることになり、敦子が持ってきたフライパンと鍋は玉山が持って敦子の部屋に行った。

 敦子はいつものように、料理を温めて玉山に出した。


 「ごめん。皿の事すっかり忘れちゃって」


 「いいですよ。それより冷めないうちにどうぞ」


 玉山がひどく申し訳なさそうにしているので、敦子は玉山に早く食べるように促した。

 ふたりで食事をとる。もう何回目だろうか。

 敦子はおいしそうに食べている玉山の綺麗な所作をぼ~と見ながら、自分も箸を動かした。

 玉山はあらかた食べてしまい、敦子を見た。

 敦子のお皿の中の料理がまだ少ししか減っていない。


 「どうしたの?」


 「えっ~」


 敦子がどこか心あらずで食事をしているので、玉山は気になったのだろう。

 敦子に聞いてきた。

 敦子は玉山にじ~と見られているのを感じて、慌ててご飯を食べ始めた。

 急いでご飯を食べてしまってから、待っててくれた玉山にいった。


 「あっすみません。さっきは考え事をしていて」

 

 そういったとたん玉山の顔に眉間のしわができた。


 「違うんです。変なことじゃなくって。もう何回ぐらいこうやって一緒にご飯食べたのかなって考えていて」


 「そうなんだ~」


 玉山がほっとしたように言い、眉間のしわも消えてやわらかい表情に戻った。


 「そういえば何回ぐらいだろうね。こうやって一緒に食べるのが当たり前のように感じてるぐらいだからね」


 「そうですね~」


 敦子はこうやって何気ない会話ができるようになったのもいつごろからだろうなんて考えて笑えてきた。


 「今度は、なに笑ってるの?」


 すかさず玉山が聞いてきた。


 「こうやって竜也さんと過ごす時間も悪くないなあと思って」


 敦子がふざけて言うと、玉山もちょっと耳を赤らめていってきた。


 「僕はあっちゃんとご飯食べたり一緒にいるのが楽しいよ」


 玉山はそういうとプイと視線をそらしてしまったが、敦子は敦子でそんなことを言われるとは思ってもいなかったので、玉山より顔が赤くなってしまった。

 玉山がいなかったらクッションを抱えて身もだえていたかもしれない。

 お互い余計なことを言ってしまったので、しばらく無言の状態が続いていたが、敦子が気分を変えるように言った。


 「じゃあ私、食器片づけてしまいますので、竜也さんは先に部屋に戻って、ケーキを食べる準備をしておいてください」


 「いや、僕も片づけるよ」


 玉山は頑として聞かなかったので、結局いつものようにふたりで片づけた。

 片付けが終わっていざ玉山の部屋に行こうとしたとき、敦子が念のため聞いてみた。


 「ケーキをのせるお皿やスプーンやフォークありますよね」


 「あっそうだ。あったかなあ」


 玉山は視線を上に向けてしばらく考えていたが、満面の笑みで自信満々に言ってきた。


 「お皿は、大小そろってないけど、フォークやスプーンならある。コンビニでもらったやつだけど」


 敦子はつい苦笑いになった。

 まああの様子じゃあ料理を作ってないのはすぐわかったが、コンビニ御用達だったとは。


 「じゃあ紙皿を持っていきますね」


 敦子は先ほど買ったカップを箱から取り出し洗った。あと急いで棚から紙皿を出し一緒に玉山の部屋に持っていくことにした。

 ふたりで玉山の部屋に行くと、玉山は素早い動きでコーヒーメーカーに豆を入れるなど流れるように作業をして買ったばかりのカップにコーヒーを淹れていた。

 いつもコーヒーはきちんと淹れているのだろう。

 そういえば豆にもこだわって先ほど買っていた気がすると納得した敦子だった。

 玉山は冷蔵庫からケーキの箱を出した。

 敦子がケーキを皿にのせていく。

 先ほど玉山が冷蔵庫からケーキの箱を出すときに、冷蔵庫の中がちらっと見えた。

 見事なほど何も入っていなかった。

 入っていたのはミネラルウォーターやビール缶など飲み物ばかりだった。


 ふたりでコーヒーとケーキをコンビニのフォークで食べる。

 コーヒーは淹れているときからいい香りがしていたが、いざ飲んでみると、さすが玉山が選び抜いた豆だけあっておいしかった。

 おまけに買ったカップは持ちやすくてコーヒーもよりおいしく感じた。

 敦子はいつもブラックなのでよかったのだが、もし砂糖やミルクがほしいといってもきっとこの家にはないに違いないと、あまりに何もないキッチンと冷蔵庫を見て思った。

 そんなことを考えて、にやけていたことがばれたのか、玉山にまたもや聞かれてしまった。


 「なんかまた変なこと考えてない?」


 「竜也さんもブラックですよね。私もブラックです」


 そうすまして答えた敦子に?マークの顔をした玉山がいた。

 ケーキをおいしく食べ終えた敦子は、昨日からずっと聞いてみたかったことを聞いてみた。


 「昨日箱根の神社で、私の目が光ったの見ましたよね。私も...竜也さんの目が光ったの見たんです」


 玉山はそう敦子から言われて、すごく驚くかと思いきやそう驚いた様子はなかった。


 「..うん見たよ。あっちゃんの目桜色できれいだった。やっぱり僕の目も光っていたのか..」


 玉山は何やら考える様子で言った。


 「自分の目が光ってるって言われて驚かないんですか?」


 「うん、昨日のあっちゃんの驚いた様子でなんとなくわかったから。あの時には、僕もあっちゃんの目見て驚いたけどね。実は見たことあるんだ、自分の目が光ったのを」


 「えっ___!」


 自分の目が光るのを見たことがある?見たことがあるのか。

 敦子は驚きのあまり大声を出してしまったが、玉山が敦子の大声に驚いて目玉が飛び出さんばかりに目を見開いている姿を見て、自分で声を出しておいて笑えてしまった。


 「すっ、すみません。大きな声を出しちゃって。鏡で見たんですか」


 「信じてもらえないかもしれないけど、夢で。自分ていうのかな、自分にそっくりな顔をした人の目が光ってた。水に映った姿を見たんだ」


 「竜、竜也さんもですか?私も竜也さん似の人がよく夢に出てくるんです。その人の目が金色に光ってました。あとその人..」


 はじめ食いつき気味にいったが、途中まで行ってしまってから敦子は急に言えなくなってしまった。

 さすがに本人を前にして、その人?人間じゃないみたいですなんて。

 なんて言おうか頭の中であれこれ考えていると玉山がぽつんと言った。


 「僕似の人って人間じゃなかっただろう?」 


 今度は敦子が目玉が飛び出るかというぐらいに目を見開いて玉山を見ることとなった。

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