表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なぜか水に好かれてしまいました  作者: にいるず


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/80

22 今日はお弁当を持っていきました

その夜敦子は、夢を見た。


自分が、なぜか着物を着て、滝の前にいる。


すると滝の中から竜が現れた。そして人型になった。

夢の中の自分は、それに少しも驚くことはなく、反対にその人を見たとたんうれしい気持ちになった。

そして自分は、滝のそばにある大きな岩に腰かけようとしたとき、水に映る自分の姿を見た。


あれっ、誰この人? 私じゃない!


そう思ったとき、目が覚めた。


はっとして、飛び起きる。

どう見てもここは、自分のいつもの部屋だ。着ているものは、パジャマだと確認する。


この前聞いた昔話のせいで、こんな変な夢を見たのだろうか。


ただ夢から覚めるとき、声を聞いた気がした。


『 あつぅ____ 』


時計を見れば朝の5時過ぎ。

また眠ろうかと思ったが、結局眠れなかった。




早めに起きて、軽く洗濯をした。

時間があったので、作り置きのものを詰めて弁当を持っていくことにした。


玉山さんの前を通ったが、ドアは開かなかった。


( もういないのかな? 帰るときまた連絡してくれるといっていたけど。 )


昨日玉山は、自分の部屋に帰るとき、また連絡するといってくれた。

しかもごちそうしてもらったお礼に、今度は食事に行こうといってくれた。


その言葉だけで、いつもなら気の重い週初めが、少し気持ちが軽くなる気がする。

ひょんきんな自分に、なんだかおかしくなった。


思わず一人くすっと笑ってしまってから、ここは、電車の中だと気が付いた。


慌ててあたりを見渡すが、皆スマホを見たりしていて、敦子に気が付いた様子はなかった。


今度は、今朝見た夢の事を思い出した。


( そういえば、あの人玉山さんに似てた気がするな。 )


夢の中に出てきた人は、なんだか顔がかすんでいてよく覚えていないが、玉山さんに似ていた気がする。

それとあの夢の中で聞こえた声も、似ているような気がしなくもない。


たぶん昨日夕食まで一緒に食べたせいに違いないが、夢の中に出てくるほど、意識してしまっている自分が少し恥ずかしくなった。





会社に行くと、やはりというべきか三連休の後で、いつもより忙しかった。


お昼になり、いつものように、皆で食べに出ようという話になった。


しかし敦子が、今日弁当を持ってきてると聞くと、いつも一緒に食べる同僚達は、近くで買ってくるから待っててといったので、敦子は休憩室で待つことにした。


敦子が、一人待っていると、名前を呼ばれた。


営業の笹川さんだった。


「 滝村さん、ここにいたのか。悪いけど、この書類またやっておいてくれる? 」


「 あっ、はい。いいですよ。 」


いつものように敦子が言うと、笹川は、敦子の前にあるお弁当箱を見た。


「 滝村さん、今日はお弁当? 」


「 そうです。 」


「 自分で作ったんだよね。 」


「 残り物を詰めただけですけどね。 」


「 へえ~、でも一人暮らしだよね。 」


「 ええ、自炊しないとお金かかるので。 」


「 今度、僕のも作ってよ。 」


いつの間に来たのか、急に笹川が耳元で言ったので、敦子は思わずのけぞってしまった。


「 笹川さんなら、作りたいって人が、大勢いますよ。 」


笹川は、敦子ののけぞった姿にくっくっと笑い、敦子の話を無視していった。


「 三連休は、帰省してたの? 」


「 はい、そうです。 」


笹川は、書類机の上置いておくね~と書類を手に振って、休憩室を出ていこうとした。


しかし出口でまた足を止め、振り返っていった。


「 いつも悪いね。今度なんかおごるよ。 」


なんだか笹川にいいように言われた敦子は、半分疲れてスマホを見ることにした。


( 笹川さん、そういえばよく帰省したこと知っていたなあ。 )


ちょっと不思議に思った敦子だった。




しばらくして、休憩が少なくなっちゃうとどたどたしながら、同僚の大橋奈美と近藤結衣が帰ってきた。


三人でいつものように食事していると、ふと同僚の大橋奈美が言った。


「 さっきあの『 エレベーターの貴公子』見たのよね~、 ねえ~結衣ちゃん。 」


「 そうそう下に行くエレベーターで一緒になったのよ。やっぱりかっこよかった~。 」


「 どうしたの? あっちゃん大丈夫? 」


急に敦子が、むせたので、奈美と結衣の二人がびっくりした。


「 ごめん、むせっちゃた。 」


敦子は、慌てて水筒のお茶を飲んだ。


「 それにしても今日『 エレベーターの貴公子 』と一緒にいた女の人もすごい綺麗だったよね。 」


「 そうそう美男美女で、お似合いのカップルって感じ。 」


「 どうしたの、あっちゃん。まだのどがいたいの? なんだか顔色が悪いみたい。 」


「 何でもないよ、ありがとう。 」


「 そういえばあっちゃん、実家で休息できた? 」


「 うん。 」


敦子は、先ほどの玉山の話で、なんだか食欲がなくなるのを感じた。


「 あっちゃん? 帰省して疲れてる? 気を付けてね。 」


元気のなくなった敦子に二人が、心配して声をかけてくれた。


「 そういえば、週末にあっちゃん誘ったでしょ。坂口さんにあとで聞いたんだけど、あれ、笹川さんが、あっちゃんにいつもお世話になってるから、お礼したかったんだって。また行こうね。笹川さんのおごりらしいから。 」


今までなら、心が浮き立った話も、今日はなんだか心が沈んだままだった敦子だった。




お昼も終わり、席に着くと、午後も仕事がたんまりとあり、敦子は半ばやけくそになって仕事をした。




その姿を見ていた、上司が言った。


「 滝村さん、今日は仕事に精を出しているね。なんだか鬼気迫る勢いだよ。でももう少し肩の力抜いてやってくれていいからね。 」 



 

今日は、デパ地下にでもよって、おいしいデザートでも買って帰ろうと思った敦子だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ