表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一家全員、処刑確定!? 悪役令嬢の妹のはずでした   作者: うり北 うりこ@8/1ざまされコミカライズ①発売


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/41

前進と暗雲②


 月日が流れ、秋がきた。

 もうすぐ農作物の収穫の時期だ。


 新しく植えた雨に強い麦たちは、飢饉対策に協力してくれている各領地で順調に育っている。

 昨年から始めた麦の備蓄は、湿気で駄目になってしまったりと領地によって進捗は様々だが、少しずつ前に進んでいた。


「予定通りなら、そろそろアリウムとヒロインが出会うはず……」


 けれど、その気配がまるでない。

 私が色々と変えてしまった影響だろうか。

 ……もし飢饉が起きなければ、強行して対策を行なってきたアリウムはどうなるのだろう。

 いや、起きないに越したことはないのだから、そんなことを思っては駄目だ。


 そう思うのに、心のどこかで予定通り飢饉が起きてほしいと願っている。

 だって、そうしないとアリウムは今回の施策の責任を問われてしまう。


 私が言い出して、私が振り回したのに、しわ寄せはアリウムに行くのだ。


「飢饉が起きなかった時の、貯蔵物の流用を考えないと……」


 どうしたって貯蔵した食料は品質が落ちる。

 それを安価で流通させれば、市場の作物の価値に影響を与えてしまう。

 だからといって、貯えを循環させないわけにもいかない。


「まだまだ考えないといけないことばっかりだ……」


 小さくため息をこぼしながら、王城へと向かう馬車に乗り込んだ。



 ***



 王城に着くと、サイナス様が待っていた。

 王城(ここ)で飢饉対策の話し合いをする時は、サイナス様が護衛を担当してくれるのだ。


「いつもすみません」

「気にするな」


 ふっと小さく笑いながら、サイナス様は執務室の扉に手をかける。


「ミルベラ嬢のおかげで、アリウム殿下はずいぶんと人間らしくなった」

「え?」


 どういうことですか? と聞く前に、扉が開かれてしまう。


「ミルベラ、待ってたよ。サイナスもご苦労さま」


 アリウムの労いの言葉にサイナス様は一つ頷くと、扉の前に立つ。


「じゃ、さっそく始めようか」


 アリウムやカルナ様、キール様と飢饉対策についての報告書類を見つつ、飢饉の兆候がないか、読み込んでいく。


 今のところ、変わったことはなし……かな。

 とは言っても、現地に行ったわけでもなければ、地方の報告書の中には、一月前に作成されたものもある。

 情報が届くまでに時間がかかりすぎる……。


「やはり備蓄方法が課題か」

「そうだね。商会ごとにこんなにも差が出るなんてね……」


 アリウムの言葉に、カルナ様は眉間にシワを寄せ頷く。


「どうにかして、領地ごとの差を無くさないとですね」


 備蓄方法を秘匿としている商会も多く、備蓄が成功した商会ほどその傾向が強い。

 情報は時に金銭よりも価値が高い。

 他の商会に教えてほしいと頼んだところで、答えは目に見えている。


「……難しい問題ですね」


 何だろう。進んでいるはずなのに、停滞している感じがする。

 これ以上、上手くいかないように、なっているみたいな……。


 根拠もない不安だ。

 そんなことを考えるより打開策を探さないと……。


 ──コンコンコン。


 この時間に誰かが来るなんて、珍しい。

 開かれていく扉に視線を移せば、見覚えのある……けれど初対面の女性が立っていた。


「──っ」


 な、何で!?

 いや、時期的に出会ってるので間違いない。


 動けないでいれば、アリウムが扉に向かって一歩踏み出した。

 その表情に驚きはない。


 そうか。既に出会っていたのか……。


「ラディア嬢、何のご用で?」

「私もこちらに加わるよう、陛下の命により参りました」


 落ち着いた、温度のない声。

 小さいけれど、その声は直接脳に語りかけるように鮮明だ。


「お引き取りください。父には、俺から不要だと伝えておきましょう」


 アリウムは笑顔で言い放つ。


「それは、こちらでの総意でしょうか?」


 心を見透かすような瞳に、心臓がドクリと跳ねる。


「何故、加わるようにと命が出たのか、確認した方がいいんじゃない?」

「その必要はないよ。理由は分かっているから」

「あ、そうなの?」


 その言葉にカルナ様をチラリと見れば、小さく首を振られる。


「国王陛下は、私とアリウム殿下の婚姻を望んでおられます。仲を深めさせたいのでしょう」


 淡々と、他人事のように話すラディアに、アリウムは冷たい視線を向けた。


「その話は既に断っている。口にする必要はない」

「私は、ただ事実を申しただけでございます。ここへも、言われたから来たのです。受け入れるも、拒絶するも、私の知るところではございません」


 温度のない声だ。

 小説での聖女ラディアは、優しく、人の痛みに自身の胸も痛める人だった。

 けれど、目の前のラディアは、感情を一切捨てた、まるで人形のよう。


「ならば、拒絶されたと──」

「ちょっと、落ち着きなよ。王命で来るしかなかったんだろうしさ。えっと、ラディアちゃん……であってるよね? あなたは、ここで何をするよう陛下に言われたのかな?」


 アリウムを止め、カルナ様が明るい口調で話す。


「ただ、そばにいるようにと申しておりました。私の夢見の力は、私と親しければ親しいほど、より鮮明に見るのです。稀に例外もございますが」

「……夢見の力?」

「はい」


 カルナ様の目が見開かれる。


「ラディア嬢は、夢見の聖女だ」


 そう言いながら、アリウムは再び書類に視線を落とした。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ