第三章: 無色の火花
窓から差し込む午後の陽射しが、塵の粒子を小さな、ものぐさな星のように踊らせていた。
ヴィルヘルムは鍛冶場が休みで、つまり彼は私が豆の鞘むきをしている間、裁縫の手伝いをしていることになっていた。
実際には、手伝ってなんていなかった。でも、気にはならなかった。
彼の存在は温かく確かなもので、寄り掛かれる安定感だった。
彼がそばにいると、世界の囁きは遠く感じられた。
その時、ノックが聞こえた。
「ヴィルヘルム! そこにいるのか、それともついに鍛冶場がお前を像にしちまったのか?」
ロリックの声が、明るくからかうようにドアを伝って響いた。
私の心臓は、いつものように、裏切り者のように高鳴った。
ヴィルヘルムがドアを開けると、ロリックが扉いっぱいに立っていた。
背が高く、自信に満ち、陽の光が待ち構えていたかのように彼の周りに集まっている。
「エルズベット」
彼は気軽な笑顔で私に挨拶した。
「兄貴を怠けさせておくんじゃないぞ。休みの日だって、怠惰の言い訳にはならねえ」
「彼は……手伝ってるの」
どういうわけか、言葉は落ち着いて出てきた。
ヴィルヘルムは笑った。
「俺は搾取されてるんだ! 茶ぐらい貰わないと」
彼は暖炉へ歩いていった。冷えた薬缶が置いてある。
「Ignis ardeat Lumonius Einshigel(汝、燃えよ、ルモニウス・エインシゲル)」
そう呟いた瞬間、彼の額に小さなオレンジ色のルーンが輝いた。
明るく、意図的で、生気に満ちて。
指先から火花が跳ね、薪は瞬時に燃え立った。
何度も見た光景なのに、今回はその光景が私を捉えた。
――輝くルーン。魂が確かにそこにある証。
「ロリック?」
思わず口にしていた。
彼は振り返り、片眉を上げた。
「ん?」
「テストを受けた時……光が現れる前に、うまくいくって分かってた?」
ヴィルヘルムは鼻で笑った。
「当たり前だろ。みんな光は出るんだから……」
「みんなじゃない」
私は囁いた。
部屋は静かになった。
ロリックの気軽な笑顔が消え、より優しく、より真剣なものになった。
「怖かったよ」
彼は私の前にしゃがみ込み、目線を合わせてくれた。
「母さんが出生時の輝きの話はもちろんしてくれた。何十ものテストも見てきた。でも、あの円に立った瞬間……自分だけが例外なんじゃないかって怖かったんだ」
「でも、あなたは例外じゃなかった」
私の言葉は質問のように震えた。
「ああ」
ロリックは一息置き、遠くに視線をさまよわせた。
「俺の出生時の光は強かったって言われてた。母さんは産婆の証文まで持ってるんだ、署名と捺印付きのやつを」
愛情の混じった微笑みが彼の唇を掠めたが、すぐに真剣さが戻った。
「でも、その瞬間は関係なかった。あれはただの話だ。自分でルーンを灯せるって証明しなきゃならなかった。自分の意志で光るまで……確信が持てなかったんだ」
小さな、はかない希望が胸に灯った。
「じゃあ……出生時の光は……例外なく、みんなに起こるの?」
ロリックはその問いの本当の意味を悟った。
苦しげな、しかし誠実な表情で答えた。
「例外なく、だ」
彼は優しく続けた。
「赤ん坊が生まれた瞬間、最初の息をする前に……額が輝く。それぞれの色で、それぞれの刻印で。一瞬、小さな星みたいに光る。それから皮膚の下に消える」
私はそれを想像した。
空いっぱいの新生児たちが、一瞬だけ輝く光景を。
それは美しかった。
そして私が聞いた中で、最も残酷なことだった。
「一人も……ないの?」
私はほとんど聞こえない声で囁いた。
ロリックは目に無言の謝罪を浮かべ、首を振った。
「一人も。後に俺たちが使う魔法は……新しいことを学ぶんじゃない。あの最初の光を思い出すだけだ。呼び戻すだけなんだ」
“思い出す”。
その言葉は概念ではなく、宣告だった。
それは鉛のように胸に沈み、すべてを冷たく、暗く閉ざしていった。
そして、その日は私が望んだよりも早く訪れた。
石鹸と糊のきいたリネンの匂いが、家に満ちていた。
私の新しいチュニックは硬く、骨のように白く、首元を刺した。
「じっとしてて、エルズベット」
母は銀のリボンで私の髪を編みながら囁いた。
声は落ち着いているのに、指先は震えていた。
ドアの向こうでは、ヴィルヘルムがもう着替え終わっていた。
彼はそこに属する人間のように見えた。
そこへ父が現れた。
背が高く、扉いっぱいだ。
最高の服を着ていても、鍛冶場の煙の匂いがまだ少し残っていて、それが温かく、金属的で、安心できた。
父は魔法にもテストにも触れず、ただ荒くも優しい手を私の頭に置いた。
「何が起ころうと」
静かに言った。
「お前は我が子だ」
本来なら慰めになる言葉だった。
けれど、胸の痛みはひどくなるばかりだった。
私たちは外の陽光へ歩み出た。
村中が見ているように感じた。
笑顔は優しいのに、その目は好奇心に満ち、測るようだった。
「ハインリヒの娘さんだ」「今日がその日だね」
誰かの囁きが耳に入った。
私は父の背中だけを見つめた。
寺院の銀の尖塔が空に伸びている。
内部は香の匂いが濃く、味がするほどだった。
甘いミルラと松ヤニの香りが喉に張り付く。
大理石の床は薄い靴越しに冷たかった。
今日、私は八歳になる。今日、私はテストを受ける。
ヴィルヘルムは父の隣に立ち、火のルーンの成功は村で語り草だった。
母は私の襟を何度も直し落ち着かなかった。
「心を落ち着けて。集中するのよ、エルズベット」
私はうなずいた。手が震えていても。
高祭司の声が、ゆっくりとした雷のように響いた。
「かつて魔法の神が一人の人間の女性を愛した時、彼はその力をお前たちとその民に授けた――」
「彼は苦痛に投げ込まれ、天が哀悼の歌に動かされるまで囚われた。だが神は解放され、宣告を残した。『民が我が名を覚えている限り、魔法は流れ続けるであろう』」
「故に、我らは古の名を詠唱し、咒文を紡ぐ。故に、祭りを執り行い、忘れぬように。力は神聖な信頼であり、信仰はその泉である。『形成者』を忘れることは、与えられた光を失うことに他ならない」
「魔法の子らよ、進み出よ。神が授け給いし賜物を示せ」
一人また一人と、子供たちが進み出た。
バリンの息子リアム――深紅の炎。
セラの娘アーニャ――柔らかな緑の成長。
水、土、金属。
成功の度に囁きと拍手が起こる。
そして――
「ハインリヒの娘、エルズベット」
足が水のようになりながら、私は円へ歩いた。
広すぎ、空きすぎて感じられた。
視線が皮膚を刺す。
中心で止まり、母に教わったように顎を上げた。
高祭司が優しくうなずく。
「言葉を唱えなさい、子供よ。汝が光を現すがよい」
私は息を吸い、はっきり唱えた。
「Lux venia, Einshigel(光来たれ、エインシゲル)」
すると――何かが起きた。
無ではない。何かが。
かすかな光が額で揺らめいた。
微かすぎて、私の気のせいかと思うほどだった。
だが祭司の顔が変わった。目がわずかに見開かれた。
「もう一度。はっきり唱えなさい」
「Lux venia, Einshigel!」
今度は分かった。額で優しい温かみが花開くように広がった。
光は再び現れ、今度は誰の目にも見える強さだった。
だが――
それは違っていた。
色がなかった。
白金でもない。七色のどれでもない。
透明――
水越しの景色のように。
夏の道の陽炎のように。
陽光を受けたガラスの縁のように。
ざわめきが広がった。
拍手ではない。不安の波だった。
祭司が近寄り、額を凝視する。
「こ、これは……何色だ?」
「分からない……」
「影じゃない。影には深みがある。これは……無色だ」
両親を見る勇気を振り絞った。
母の顔は、脆く誇り高そうな何かに凍りついていた。
目は私を見ているのに、慰めではなかった。
父は……私を見られなかった。
うつむき、その周囲には空洞のような空虚さがあった。
そして私は理解した。
――私は恥を家に持ち帰ったのだ。
母の手が父の手を探し、強く結ばれた。
世界に対して結束するように。
だが私はその結束の側ではなく、守られる対象だった。
「さあ、エルズベット」
すべてが終わった後、母が言った。
声は澄んでいて、冷静で、温かみを失っていた。
父は石のように沈黙して歩いた。
私たちは空洞を抱えた、誇り高い家族のまま寺院を後にした。
背後では次の子への拍手が湧き上がり、私が台無しにした瞬間を埋めようとしていた。
言葉は家までついてきた。
『火花が欠如している』
その夜、私はベッドに丸まり、顔を枕に埋めた。
荒い布に涙がしみた。
ドアの外では声が聞こえた。
低く、心配そうに。
「……仕立て屋はどう? 徒弟として……とか?」
母の声は震えていた。
「あの子、手先が器用よ、ハインリヒ」
父の返事は鉄のように重い吐息だった。
「持参金もない。魔法もない。誰が引き取るというんだ。俺たちがいなくなったら、誰があの子を守る?」
“いなくなる”。
その言葉で私は空洞になった。
眠りに落ちた時、胸は灼けるほど熱く、枕は濡れていた。
私は光の森に立っていた。
木々は輝き、葉はガラスでできていた。
空気は力に満ち、ブンブンと震えている。
人影が歩み出た。
背が高く、輝き、金色がかった緑の光で織られていた。
「エルズベット」
その声は風と水と鈴の音のようだった。
どこか懐かしい響きがあった。
「あなたは誰? 私が失敗したから来たの?」
彼は悲しげに微笑んだ。
「器が空っぽだからって失敗じゃない、小さな火花よ。それは満たされるのを待つ約束だ」
「お前の物語は、寺院で奴らがお前のために書いたものじゃない。もっと古い。それは……」
光が砕け散った。
私は息を呑んで目を覚ました。
部屋は灰色で、ありふれた現実に戻っていた。
夢は消えていた。
震えながら横たわり、夜明けが窓から忍び込んでくるのを見つめた。
「ただの夢だった」
私は囁いた。
静寂の中で、彼の言葉だけがこだました。
――『満たされるのを待つ約束』
そして今、村人たちは自分の目で見てしまった。
エルズベットが“無色”であるという事実を。
彼らはこれから、彼女をどう見るのか。
どう扱うのか。
さらに――あの“謎の存在”がエルズベットの前に姿を現した。
彼は、彼女に何を求めているのか。
次回も同じ場所、同じ時間で。
どうぞお楽しみに。
読んでくださって、ありがとうございます。




