第二章: 円環と線の地図
冬の厳しさが、ようやく少しだけ緩みはじめた頃、私はようやくベッドから出た。
熱は弱った体を残していたが、外の空気は鋭く澄んでいて、それを吸いたいと思った。
母が食料の買い出しが必要だと言うので、二人で市場へ向かった。
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何週間も家に閉じこもっていたせいか、通りはどこかよそよそしく感じられた。
屋根にはまだ雪が張り付いていたが、市場は色と息づかいで脈打ち、炒り栗のジュウジュウという音や、声を取り戻した隣人たちの賑やかな会話が聞こえてきた。
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そこら中に、旗が掲げられていた。
旗は窓や井戸の柱から垂れ下がり、その布地が風に笑い声のようにひるがえっている。
青い我が町の紋章や、赤と白のギルドの旗など、見覚えのあるものもあったが、一つ、太陽の光を浴びて私の足を止めさせた旗があった。
金色にきらめき、三つの紋章が刺繍されている。
中央に大きな一つ、その脇に小さな二つ。
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私は母の袖を引っ張った。「あの旗たち、見たことないよ」
母はリンゴの雪を払いながら、考え込むように言った。「大戦の勝利記念日よ。
真ん中の紋章はレガーナ家。
小さい方はレオクシオン家、敗れた側よ。
三つ目はルワリン家のもの。
彼らは剣を鞘に収めたままだった」
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私はもう一度見上げた。
金色の布が揺れ、一瞬、小さな紋章が大きな紋章から引き剥がされようとしているように見えた。
「みんな祝ってるんだ」私は言った。「負けた側の人たちまで?」
「彼らは戦争を祝っているんじゃない」母はかすかに呟くと、リンゴを買い物籠に滑り込ませた。「終わったことを祝っているのよ」
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風が強まり、布地は炎のように揺れてきらめいた。
私はショールをしっかりと引き寄せ、私たちは露店に向かい食料品を買い、それから家に戻り、母は昼食の支度をした。
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翌日、母と私は鍛冶場へ行った。
二人が話している間、私は炉の方へと流れるように近づいた。
ヴィルヘルムが働いていた。
槌が上げ下ろしされ、息遣いのように規則的だ。
私はしゃがみ込み、火花を見つめた…
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…すると、世界が震えた。
轟音。
そして炎。
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それは音ではなく、圧力として始まった。
暴力的な「バン」という衝撃が肺の空気を殴り抜き、私を壁に投げ飛ばした。
頭蓋が石にぶつかり割れる音がした。
そして、荒々しく生き物のような熱気が、私の息を引き裂いた。
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まぶしい光の向こう、ヴィルヘルムは膝をつき、すでに燃えていた。
彼の悲鳴が一度、鋭く響き、轟音に消えた。
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母が呪文を叫んだ、かすかにしか聞こえなかった…「エニンシガル… アクオス… エト・ヴェロ… エクスティンゲル・イグネム…」…風が鍛冶場を唸り通り抜け、火を消すどころか煽り立てる中、彼女の声は割れていた。
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父は濡れた獣皮を投げたが、それは地面に届く前に灰と化した。
彼の見境のない戦いだった。
彼は死んでしまう。
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世界は炎と騒音と恐慌に満ちていた。
そして、それらすべてを切り裂くように、新しい声が私の心に滑り込んだ。
神の落ち着いたバリトンではなく、もっと軽く、ほとんど旋律のようで、何か古いものを感じさせる声だった。
Gペンを使え。
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だれなの?! 私は煙にむせながら問い返した。
ペンがこんな状況で何の役に立つっていうの?!
「お前の技を信じろ」その声は、木の葉を渡る風のささやきのように答えた。「それを使うんだ」
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声は揺るがなかった。
私は必死で目を閉じ、無理に思い出そうとした。
冷たいプラスチックの感触が指の間に似た感覚を呼び起こす。
親拇指が置かれたわずかな溝。
息のように私にまとわりつくインクの香り。
何も起きない。
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「ちっ!」 私は歯を食いしばった。
ヴィルヘルムの悲鳴が再び空気を切り裂いた。
私は爪が手のひらに食い込むまで拳を握りしめた。
私はペンを想像しただけじゃない、召喚したんだ。
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かすかな光。
閃光。
重み。
それが現れた。
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私はそれをつかんだ。
私の手は、本能からではなく、締切に追われた年月で刻まれた習慣、筋肉の記憶から動いた。
私の中の何かが解き放たれた、恐慌、祈り、記憶。
そして気がつくと、私は膝をつき、手にGペンを持っていた。
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考えることはしなかった。
描いた。
円の中に円。
線が交差し、織りなし、正しいと感じられる形を成していく。
上の方に小さな曲線、波かもしれない。
そしてそれを固定するため、下にもう一つの円。
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それは言葉ではなかった。
呪文でもなかった。
本能だった。
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線は柔らかな青い光を帯び始めた、水を通した月光のように。
冷たい風が一陣、床から迸り、水が現実に湧き出で、光る模様から渦を巻き、炎の上に洗い流した。
鍛冶場はシューッと音を立てて静かになった。
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ヴィルヘルムはまだ燃えていた。
私はもう一度、より速く、より雑に描いた。
今度は、癒しの円環について知っているもの、無数のページに描いてきた線を走り書きした。
輝きが強まり、彼の方へ漂い、光となって彼の体を包んだ。
彼の皮膚が修復され、息遣いが安定した。
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それからGペンは消えた。
残ったのは煙の匂いだけだった。
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その後訪れた沈黙は、物理的な存在のように、湿った灰と焼けた石の匂いとともに濃厚に重くのしかかった。
それは炎の轟音よりもずっと響いていた。
ヴィルヘルムは地面に横たわり、胸は安定した、ありえないリズムで上下していた。
彼の皮膚は、煤で汚れている以外は、無傷で、傷一つなかった。
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最初に動いたのは母だった。
彼女のはためく手は驚いた小鳥のように彼の体の上を動いたが、触れる勇気はなかった。
彼女の魔法、彼女の存在そのものの空気が、失敗した。
私の走り書きは、失敗しなかった。
彼女の目が、ついに私と見つめ合ったとき、そこにはかつて見たことのない恐怖が広がっていた。
炎への恐怖ではなく、私への恐怖だった。
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「エルズベス」 私の名前は、彼女の唇の上で息も絶え絶えの疑問となった。「いったい何をしたの?」
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私が答えを形作る前に、父がそこにいた。
彼はヴィルヘルムを一瞥さえしなかった。
彼の視線は烙印のように、私を焼き焦がした。
彼の顔の煤には、汗が流れた清い線ができていた。
彼の恐怖は母のものとは別物だった―当惑ではなく、むき出しで、凍りつくように明確だった。
それは、娘の足元に裂け目が開いたのを今まさに見た男の恐怖だった。
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「お前、何をしたんだ?」 彼は嗄れた喉からかきむしるように囁いた。
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私は自分の手を見下ろした。
小さく、きれいで、まったく普通の手。
Gペンの記憶は、もうすでに薄れつつあった、夢から覚めた時のようなものだ。
「円だったの」 私はぼそりと説明した、その説明は愚かで不十分に感じられた。「それに…波。
それが…正しいと感じたから」
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「ハインリヒ」 母が口を挟んだ、彼女の声には一片の力強さが戻りかけていたが、それでもまだ震えていた。「あの水は…あの治癒は…それらは別々の適性よ。
相反するもの。
無から両方を呼び出すだなんて…難しいとか、珍しいとかじゃない。
あり得ないことなの」
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「あり得ないことぐらい分かっている!」 父の声は低く、切迫した軋み音だった、足元の氷が割れるように。「それが問題なんだ」
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彼は私たちの間の距離を詰め、跪いた。
彼の大きく、硬い手が私の肩を掴んだ。
彼の目は訴えかけていた。
「私の言うことを聞け。
全員だ。
誰にも。
このことを誰にも聞かせるな。
分かったか?」
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「でも彼女が助けてくれた…」 ヴィルヘルムが声を絞り出すように言いかけた。
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父の頭が彼の方へ素早く向いた。「黙れ!」
その怒鳴り声は空洞のようになった鍛冶場に響き渡った。
彼は目に見える努力で自分を制し、声を慌てた囁きに落とした。
「お前は『無色』と呼ばれ、我々はその恥と共に生きている。
人々は囁く。
我々を憐れむ。
だが、これが?」
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彼は私を見返し、彼が恐れる未来が彼の目に書き込まれているのを私は見た。
「もしも、無色の娘が石から水を呼び出し、致命的な火傷を手のひら一振りで治した、と聞き及べば、奴らはお前を呪われたとは呼ばない。
囁きはしない。
『魔女』だの『悪魔』だのと喚き立てるだろう。
『恐怖は人を残酷にする、エルズベス。
奴らは、お前が追い出されるか…火あぶりにされるまで、決して休まない』」
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彼の握る手は強すぎたが、私は引き離さなかった。
「これは我々の秘密でなければならない。
この部屋で消え去るんだ」
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彼はヴィルヘルムを見つめ、その表情は理解を乞うていた。
「ヴィルヘルム。
約束してくれなければ。
一言もだ。
友人にも、祭司たちにも。
お前は何も見ていない」
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青ざめ、震え上がったヴィルヘルムは、うなずくことしかできなかった。「約束します」
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私は膝を胸に抱えた。
オゾンと創造の匂いは消え、煙の辛辣な現実に取って代わられていた。
私はついに驚くべきことを成し遂げた。
そして父の恐怖は、悪意からではなく、そんな奇跡を受け入れる余地がこの世にないことを知っている愛から、その周りに檻を築いたのだった。
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その夜、私はベッドの端に座り、月光の中で自分の手を見つめた。
小さい。
きれい。
無力だ。
世界を焼き、救ったあの芸術家の道具の痕跡はない。
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私は目を閉じた。
さあ、Gペン。
お願い…
何もない。
ただ沈黙。
ただ私だけ。
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疲労が私を深みに引きずり込むとき、私はそれに抗わなかった。
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後になって、マットレスが私の脇で沈んだ。
私は眠ったふりをした。
ヴィルヘルムの囁きが闇を撫でた。
「どうやってやったのか分からないけど」 彼は優しく言った。「ありがとう、エルズベス」
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彼は私の額にキスをした、愛と罪悪感の封印として、そして去った。
その温もりは長く残った。
安らぎでも、魔法でもない。
ただ、真実として。
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噂は毒のように、ドアの下から、窓枠の隙間から染み込んできた。
私は市場で、露店の間で囁かれているのを耳にした。
呪われている。
不自然だ。
炎は彼女を追っている。
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村人たちの視線は、かつては憐れみに満ちていたが、今では疑念と恐怖で鋭くなっていた。
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その夜、夕食のずっと後、ドアがきしっと開いた。
父が立ちはだかった。
一片の月光に輪郭が浮かび上がっている。
彼は廃墟のようで、チュニックの肩が裂け、目の周りに暗いアザが広がり、拳は割れて生々しかった。
鋭く酸っぱいエールの匂いが、煙のように彼にまとわりついていた。
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私の心は沈まなかった。
ひび割れた。「父さん!」 私はベッドから慌てて起き上がり叫んだ。
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彼は私を静めようとはしなかった。
彼の足は力を失い、崩れ落ちて膝をつき、私の高さまで身をかがめた。
彼の血の滴る手が、恐ろしいほどの優しさで私の顔を包んだ。
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彼の息が詰まった。
「奴らが…お前のことを、言いやがった、我が星よ」
彼は酔いと、それよりも重い何かで濁った声でろれつの回らない口調で言った。
「ヘムロックのじいさんが、お前は災いだと言いやがった。
お前が…(いなくなれば)よかったのに、と」
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彼は最後まで言えなかった。
涙が汚れを一つ切り裂いた。
そしてもう一つ。
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彼は私をぎゅっと抱き寄せ、激しい嗚咽の力で震えた。
「俺は奴に、その言葉を撤回しろと言った。
言わせたんだ」
彼の囁きは私の髪に絡みついた。
「お前は呪いなんかじゃない。
お前は俺の娘だ。
俺のエルズスだ。
ただお前を守りたかっただけなんだ」
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そして私はついに理解した。
距離、食いしばった顎、警告、それらは拒絶ではなかった。
それは鎧をまとった愛で、私に刃を研ぐ世界へ向かって手当たり次戦っているのだった。
彼は冷たくなかった。
壊れていたのだ。
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翌朝、父は沈黙し、重たい目をしていた、自らの失態の恥と二日酔いの脈打つ痛みが戦っている。
母は彼に空っぽの家の静寂が必要だという、二人の間で通じ合った静かな理解のもと、私を外へ、市場へと追いやった。
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市場で、私は磨かれた川石の露店のそばにたたずんだ。
それらの滑らかな表面は、静かで単純な魔法のようだった。
日常は嘘だったが、慰めになる嘘だった。
背中に太陽の温もりを感じた。
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光が薄れた。
一人の老人が、影のように細身で、私の隣に立っていた。
彼の顔は、もう誰も訪れない場所への地図のように、皺だらけだった。
しかし彼の、澄んだ、灰色の、冴えすぎて醒めた目は、私を見つけ、離さなかった。
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彼が口を開いたとき、その声は崩れ落ちる紙のようだった。
「サヤカ」
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それは質問ではなかった。
断定だった。
失われたと思っていた錠が回る音だった。
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私の血液は血管の中で氷に変わった。
息が凍りついた。
どうやって? その疑問は私の心の中で喚きたてたが、私の声は消えていた。
私は麻痺し、その鋭い灰色の視線に閉じ込められた。
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「あなたはだれ?」 私はようやく震える声で囁いた。
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「エルズベス! さあ、坊や、もう用は済んだわよ!」
母の声、明るく普通の声が、奇妙な静止状態を切り裂いた。
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呪文は解けた。
私は一瞬、ほんの人間の鼓動一つ分、彼女の呼ぶ声に本能的に振り向いた。
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私が慌てて振り返ったとき、私の心臓は肋骨に対して慌ただしいリズムを必死に打っていた、彼は消えていた。
光の戯れに過ぎなかったかのように、移り変わる人混みの中へ消え去った。
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しかしその名前は空中に残り、もはや私だけのものではない秘密となった。
私の周りの世界、市場、騒音、光―すべてが鋭く、軸を傾けたように感じられた。
何もかもが、あるがままに見えるものではなかった。
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そして火事以来初めて、その感覚はまったくの恐怖だけではなかった。
小さく、危険な希望の火花が、かすかに灯った。
誰かが知っていた。
次の章では…
エルズベスの前世の名を知る謎の老人、その正体は…!?
鍛冶場の事件を受け、村人たちの反応はどうなるのか…!
続きは来週、同じ時間に。お楽しみに!




