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この世界、締切よりマシだと思ったのに  作者: アンドリュー・チェン


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18/22

第十七章: 調和、支配ではなく.

夜明け前に練習室に着き、待った。妖精王が到着した時には、私は既に中央に立っていた。手にはGペン。顔は、希望と呼べるかもしれない何かで輝いていた。


**「答えが見つかった気がします」**


私は言った。


彼は眉を上げたが、何も言わず、ただ壁際の定位置に移動した。


私は目を閉じた。あの象徴を思う。完璧な円。互いに曲線を描いて抱き合う、二つの涙滴型。それぞれが、他方の種を内包している。光の中の闇。闇の中の光。分離しておらず、融合もしておらず、永遠の、動的な釣り合いの中で保たれている。


陰陽。


子供の頃から、そこら中で見てきた。哲学の教科書に。カフェの壁に。古いアニメのオープニングに。今まで、それが本当は何を意味するのか、理解したことはなかった。あるはずのないこの世界に立ち、私を引き裂こうとする魔法を手にしながら、今、初めて。


私はひざまずき、描き始めた。


Gペンが、見慣れた模様をなぞる。外側の輪。元素のダイヤルの七つの位置。数ヶ月の練習で覚えた内側の幾何学模様。だが、今回は、中心に達した時、手が止まった。


そして、私は、新しいものを描いた。


**螺旋**。


確立された刻印と刻印の間の隙間を縫うように織り込まれた、螺旋。学んできた七つの元素のどれでもない。それらの**間**にある空間に属する形。繋がれているものではなく、繋がりそのもののための象徴。


図が閉じた瞬間、感じた。


外側のダイヤルは、回転しなかった。完全に静止したままだった。そんなことは、今まで一度もなかった。それまでのどの瞬間も、元素に手を伸ばせば、輪は回転し、選んだ刻印を忠実な時計の針のように第七の座まで運んできた。だが、今、外側の輪は、その場を譲らなかった。


動いたのは、**内側の輪**だった。


**反時計回りに。**


息が止まった。ペンが、手の中で震える。だが、持ちこたえた。自分自身を静止させ、内側の輪が、自然な方向に逆らってゆっくりと回転するのを見つめた。学んできた全てのことに反して、巻き戻るように。


(戦うな。起こるに任せろ)


ドアの向こう側から、互いに手を伸ばし合う二つの手を思う。一方が他方を追いかけるのではなく。両方が動く。両方が選ぶ。


内側の輪は、その新しい位置に落ち着いた。


そして、その静けさの中で、輪が再構成されたその状態で、私は、光と闇に同時に手を伸ばした。


私は、それらを保った。分離して。等しく。それぞれが認められ、それぞれに空間が与えられた。これまでの試行の、あの必死のジャグリング行為ではない。頼りにしてきた、あの必死の抑圧ではない。私は、ただ、それら両方を存在させた。螺旋が刻印の間に存在するように。内側の輪が今、外側とは独立して動くように。


光が、右手に。闇が、左手に。


それでも、まだ抵抗はあった。器の中で感じる。張りつめた震え。歌うべきか、弾けるべきか、決めかねている、はじかれた弦のように。だが、それは、もう混沌ではなかった。それは、**緊張**だった。動的な均衡。適切な距離に保たれた二つの磁石のように。互いを感じるには十分近く、激突するには十分遠い。


目を開けた。


球体が、そこにあった。光と闇。私の前で浮遊している。淡い銀色と深い灰色。ゆっくりと、互いの周りを回っている。まるで、私の刻印の二つの輪が回転したように。それらは、安定してはいなかった。その危うさを、感じ取ることができた。均衡を維持するために必要な、絶え間ない静かな努力。だが、それらは、戦ってはいなかった。


初めて、それらは**共存**した。


私は、可能な限り長く、その状態を保った。数秒が、時間のように感じられた。そして、そっと、注意深く、手放した。球体は、溶けた。私は、よろめいた。同じくらい疲れ果て、同じくらい有頂天になっていた。膝が、崩れ落ちそうだった。


妖精王が、私を凝視していた。この時ばかりは、その表情は注意深く制御されてはいなかった。彼の星屑を散りばめた瞳に、今まで見たことのないものがあった。


**驚嘆**。


**「……どうやって?」**


彼は尋ねた。


私は微笑んだ。弱々しく、だが心からの笑顔だった。


**「私のいた世界には、概念がありました。陰陽。戦わない、相反するもの。釣り合うんです。光は、闇があってこそ、意味を持つ。闇は、光があってこそ、見える。彼らは敵じゃない。……**伴走者**なんです」**


彼は、長い間黙っていた。そして、ゆっくりと、うなずいた。


**「君は、答えを見つけた」**


彼は静かに言った。


**「私が与えたからではなく、君が見ようとする意志を持ったからだ。自分自身の全ての部分に、両方の人生に、両方の世界に、手を伸ばす意志を持ったからだ」**


彼は前に進み、初めて、私の肩に手を置いた。その感触は軽く、ほとんど知覚できないほどだった。だが、その重みは、私の全身に響いた。


**「元素は、まだ抵抗する。均衡は、危うい。先には多くの作業が待っている。おそらく、何年もだ。だが、君は今日、本質的な何かを証明した、エルスベス。**道は存在する**と。**成し遂げられる**と」**


自分の手を見下ろす。光と闇を共に保った手。ほとんど私を破壊するところだったが、今は、前進する道を示してくれた手。


**「釣り合い」**


私は囁いた。


**「力じゃない。抑圧じゃない。**釣り合い**」**


**「そうだ」**


彼の声は、誇りと呼べるかもしれない何かで、温かかった。


**「そして、君は今、何を修練すべきかを知った。元素への支配ではなく、元素間の調和を」**


彼は私の肩から手を離し、一歩下がった。


**「今日は休め。この先の道は険しいが、君なら、乗り越えられる」**


私はうなずいた。


だが、練習室を去り、尖塔のありえない廊下を通って自分の小さな部屋へ歩きながら、一つの思いが、静かに心の中を漂っていた。静かな空気の中の、ろうそくの炎のように。


(……私なら、できる。力があるからじゃない。特別だからじゃない。学びたい、挑戦したい、釣り合いを取りたいと、**思っているからだ**)


それは、自信ではなかった。正確には違う。それよりもっと静かで、もっと確かなものだった。疑いの暗い土に植えられた、信念の種。光に向かって伸び始めている。


---


小さな部屋の静寂は、生きているかのようだった。柔らかく、見守るように。その夜、眠れなかった。


寝台に横たわり、部屋の水晶の天井を見つめる。光が、ありえない幾何学模様の中で屈折するのを眺める。手はまだ、光と闇を共に保ったかすかな痺れを感じている。その記憶が、目の裏で再生される。止められないループのように。


やった。本当に、やったんだ。


その思いは、勝利感で満たすべきだった。誇り。安堵。だがその代わりに、私は……奇妙な感じがした。不安定な。まるで山を登ったら、その先にもっと高く、もっと険しい別の峰が見えたかのように。


一年以上に渡り、「光と闇の釣り合い」が私の目標だった。私の執着。あらゆる練習、あらゆる失敗、あらゆる苛立つ時間を定義づけたもの。そして今、それを成し遂げた。目標は、達成された。


なのに、なぜ、終わりではなく、何かの始まりに立っているように感じるんだ?


起き上がり、Gペンを呼び寄せる。今は、瞬時に現れる。ためらいも、想像も必要ない。ただ、思うこと。存在すること。私は、陰陽の象徴を宙に描く――光が半分を、闇がもう半分を形成し、あの完璧で、動的な緊張の中で、互いに曲線を描いて抱き合う。


それらは、保たれた。危うく、脆く、だが、保たれている。


(これは、まだ始まりに過ぎない)と気づく。(妖精王は、先には何年もの作業があると言った。今回の突破は、頂上じゃない。**ベースキャンプ**だ)


その思いは、気が遠くなるもののはずだった。だが、その代わりに、何かが自分の中で落ち着いた。抱えていることすら気づいていなかった、落ち着かない不安が。


失敗するのが怖かった。だが、成功するのも、怖かった――もしこの問題を解いてしまえば、もう目指すものが何もなくなるのが怖かった。もう終わりだ。完成だ。成長する場所がなくなる。


だが、私は終わってはいなかった。私はただ……「釣り合い」が本当は何を意味するのか、理解し**始めた**ところだった。


象徴を溶かし、再び横になる。ヴィルヘルムの短剣が、脇で見慣れた重みを感じさせる。ロリクの川の石が、胸元で暖かい。


(……私なら、できる)と思った。サヤカの、彼女を殺したあの必死の自信じゃない。傲慢さじゃない。もっと静かで、もっと弾力のある何かで。


(学べる。成長できる。挑戦できる)


そして、今夜は、それで十分だった。


その思いを抱いて眠りに落ちた。そして、夢を見た。反時計回りに回る螺旋を。互いを蝕まずに踊る光と闇を。終わりなく伸びる道を。


それは、私を怖がらせなかった。


思い出せる限りで、初めて。それは、私を全く怖がらせなかった。


---


ドアに、チャイムが鳴った。ノックじゃない。柔らかく、音楽的な音。それは、一つのことだけを意味していた。妖精王が私に会いたいと。


私は起き上がり、尖塔の曲がりくねった水晶の回廊を進んだ。この異界は、もうとっくに、私の感覚を圧倒することはなかった。空中庭園も、逆さに流れる川も、純粋な概念の漂う存在たちも、今では見慣れたものだ。ほとんど普通。ほとんど故郷。


妖精王の書斎は、尖塔の頂上付近にある球形の部屋だった。壁には異界の景色が映し出され、彼の機嫌によって移り変わる。今日は、静かな森林の風景。見たことのない木々。黄昏色の空。ちょうど現れ始めた星々。彼は中央に立ち、待っていた。


**「エルスベス」**


彼の声は、穏やかだった。だが、その中の何かが、私を立ち止まらせた。重み。目的。


**「お呼びですか?」**


**「そうだ」**


彼は手をかざし、水晶の床から椅子が形作られた。私は座る。彼は立ったままだ。その宇宙的な姿は、その光を内側に折り畳み、より集中し、より強度を増している。


**「昨日、君は注目に値するものを成し遂げた。相反する元素を釣り合わせる方法を見つけた。歴史上、複数属性の使い手全てを悩ませてきた離れ業だ」**


私は、称賛に居心地の悪さを感じて、うつむいた。


**「まだ脆いです。一分も保てませんでした」**


**「脆いことと、不可能であることは同じではない。脆いものは強化できる。不可能なものはできない」**


彼は間を置き、それを浸透させた。


**「君は、次の段階への準備ができている」**


心臓が早鐘を打った。


**「次の段階?」**


妖精王は手を差し伸べ、私たちの間の空気がきらめいた。映像が形作られる。いつもの図や幻影ではない。もっと古く感じられる何か。建物。あるいは、その廃墟。薄い石とねじれた木々の風景に、半分沈み込んでいる。その建築は見慣れないものだった。大地の上に据え付けられるというより、大地そのものから生えているかのように見える曲線と尖塔。


**「これは、アタリントゥスの図書館だ」**


彼は言った。


**「最初の半神に因んで名付けられた。エニンシガルとカッソニアの息子。魔法祭を創始し、記憶を力に結び付け、魔法的権威の本質を、彼の前後を通じて誰よりも深く理解した者」**


私は、その映像を凝視した。アタリントゥス。断片から、魔法の母と堕ちたエニンシガルの物語から、その名を覚えていた。最初の半神。理解した者。


**「その図書館の中に、魔道書がある」**


妖精王は続けた。


**「計り知れない力を持つ、古代の書だ。失われて久しい知識が含まれている――技、理論、理解。生きる魔術師の誰も持たないものだ。私は、それが君の能力を次の水準に引き上げると信じている」**


**「では、なぜ今まで、それを取りに行かなかったのですか?」**


問いは、止められずに滑り出た。


**「誰か、きっと誰か、強力な魔術師か、この異界の存在が、行って手に入れられたはずでは?」**


妖精王の目が、私の目と合った。そして、その中に何かがちらつくのを見た。私の質問への苛立ちではなく、もっと深い認識。


**「魔道書は、封印されている。従来の意味での鍵や防護結界ではない。もっと根源的なものによってだ。それは、カッソニア自身によって書かれた。特定の目的のために。魔法の本質を、内側から外側まで理解できる者のために。元素を流すだけではなく、**源そのもの**を内包する者のために」**


息が止まった。


**「……私」**


**「私は、他者を送り込んだことがある」**


妖精王の声は、今まで聞いたことのない重みを帯びていた。


**「最も最近では、かつての創造者を。君の前にいた者を」**


息を呑んだ。蝕まれた創造者。堕ちた者。


**「彼が、手に入れたんですか?」**


私は尋ねた。


**「手に入れた。魔道書は、彼を認識した。私がそうなることを知っていたように。創造の火花を宿す、別の魂を」** 妖精王の目は遠くを見つめ、記憶を辿っていた。**「しばらくの間、彼は賢明にそれを使った。その中の知識は、彼の成長を助けた。魔法と現実の深い機構の理解を助けた」**


**「でも?」**


**「だが、抑制なき力は、ゆっくりと作用する毒だ。彼が堕ちた時、魔王の軍に加わり、その才能を破壊に向けた時、魔道書はそれを知った。魔法には意識がある、エルスベス。私たちが理解するような思考ではない。だが、**認識**はある。**目的**が」**


彼は手をかざし、映像が現れた。魔道書。古く、力強く。光に溶け、廃墟の図書館で再び形作られた。


**「それは、正当な場所に戻った。待っている。カッソニアは、その存在そのものに、その保護を組み込んだ。創造の目的に忠実であり続ける者にのみ仕える。もしその目的が裏切られれば……」**


彼は、言葉を宙に漂わせた。


**「去る」**


私は、静かに言い終えた。


**「元の場所に戻る。そして、次の創造者を待つ」** 彼の目が、私の目を見つめた。**「君を」**


その重みが、肩にのしかかった。魔道書を手に入れるだけじゃない。それを保持するに値することを、証明すること。


**「もし、失敗したら?」**


問いは、止められずに漏れた。


**「もし、あの人のように、堕ちてしまったら?」**


**「その時は、魔道書は再び戻る。そして、私たちは別の者を探す」** 彼の声は優しかったが、確かだった。**「だが、私は一年以上、君を見てきた、エルスベス。君が力に苦しむのを見てきた。しかし、同時に、**謙虚さ**に。**疑い**に。**自分を見失うことへの恐怖**に。それらの苦闘は、弱さではない――それらは、**安全装置**だ。かつての創造者は、決して疑わなかった。決して問わなかった。決して、己の力を恐れなかった」**


彼は、私の肩に手を置いた。


**「その恐れのなさは、力のように感じられた。だが、それは彼の蝕の、最初の兆候だった。君の恐怖――君の絶え間ない問い――こそが、君を救うだろう」**


彼の声の中の信頼は、静かだった。だが、それは、どんな大げさな宣言よりも、強く私を打った。


---


**「誰か、一緒に行ってくれるんですか?」**


私は尋ねた。


妖精王の姿が変化し、それを聞く前に背後に存在を感じた。柔らかな足音。慎重で、意図的な。私は振り返った。


部屋の入り口に立つ存在は、明らかに妖精界の者だった。だが、これまで出会ったどの存在とも違っていた。


彼女は、背が高かった。人間型としては、というだけじゃない。不可能なほどに。そのプロポーションは引き伸ばされており、何世紀もの時の流れに伸ばされたことを示唆していた。肌は、静かな水に映る月光のような、かすかな輝きを放っている。髪は、銀色の滝のように流れ落ち、見えない流れで動いていた。まるで、別の次元からの風に揺られているかのように。


しかし、私を捉えたのは、その目だった。淡い青色。空気が薄くなり呼吸が困難になる高度の、あの空の色。それらは、**古の**目だった。**計る**目だった。一万年の歴史をカタログ化し、そのほとんどを物足りなく思ってきた者の目。


**「彼女は、キャルウィン」**


妖精王が言った。その口調には、敬意、おそらくは服従の念さえ含まれているようだった。


**「尖塔で最も古い文書館の管理者だ。彼女はアタリントゥスの図書館への道を歩んだことがあり、その危険と歴史を知っている。それ以上に……」** 彼は間を置いた。**「……彼女は、カッソニアを知っている。魔法の母がこの世を去る前に、彼女と語り合った」**


息が止まった。


**「知ってるんですか? 最初に魔法を操った人間の女性を?」**


キャルウィンは、首をかしげた。完全なお辞儀ではなく、事実の承認のようなものだ。


**「私は、その頃は若かった。ようやく二世紀を生きたばかりだった。彼女は知識を求めて我々の領域にやって来た。君が今そうであるように。私は、彼女が我々の文書館を探索するのを助けた」**


その古の目が、肌が粟立つほどの強度で、私を研究した。


**「君は、ある点で、彼女を思い出させる。彼女もまた、疑いを鎧のように纏っていた。全てを問いただした。何も信じなかった。自分の才能さえも」**


**「それは……良いことですか?」**


私は、不確かに尋ねた。


**「それは、彼女を生かし続けた」**


キャルウィンは、簡潔に言った。


**「そして、正気に。かつての創造者は、確信を剣のように振るった。それは彼によく仕えた。それがそうでなくなるまでは」**


彼女は、妖精王を見た。


**「この者を、私が導こう。そして、我々が探すものを振るう気質があるかどうか、正直に報告しよう」**


**「それ以外は、期待していない」**


妖精王が言った。


キャルウィンの視線が、私に戻った。


**「創造者」**


その言葉は、形式的だった。ほとんど儀式的に。


**「ただのエルスベスで」**


私は、反射的に言った。その称号に、居心地の悪さを感じて。


何かが、その淡い目の中でちらついた。微笑みとは言えないが、柔らかさ。認識。


**「君の望み通りに、エルスベス」**


彼女は、私の名前を注意深く発音した。まるで味わうかのように。


**「出発は夜明けだ。旅の装いを。ここから図書館までの領域は……寛容ではない」**


**「何を、覚悟すれば?」**


**「覚悟しろ。君の知る全てが、試されることを。魔法。決意。創造することの意味についての、君の理解。全てが」**


彼女は扉の方へ向き、そして止まった。


**「そして、覚悟しろ。私は君を甘やかさない。もし君が失敗すれば、それを報告する。もし君が成功すれば、私はその証人となる。私は君の友ではない。**案内人**だ」**


**「それでいいです」**


私は、その古の目を見つめて言った。


**「友は要りません。必要なのは、本当のことを言ってくれる人です」**


今度は、キャルウィンは、微笑んだ。小さく、短く、だが、心から。


**「ならば、我々は十分に上手くやっていけるだろう」**


彼女は扉をくぐり、消えた。後に残したのは、古い羊皮紙と、星明かりのかすかな香りだけ。


私は、妖精王を見た。


**「……強烈な方ですね」**


**「彼女は、我が領域で最も古い存在の一人だ。彼女は、帝国の興亡を見てきた。魔法が十数回の変遷を経て進化するのを。神々の死と、新たな世界の誕生を、カタログ化してきた。彼女は、愚か者には我慢ならない。言葉を無駄にしない。そして、その任務に失敗しない」**


彼は、私の目を見た。


**「もし彼女が君を導くことに同意したなら、それは彼女が、君はその努力に値すると信じているということだ。それは、小さなことではない」**


私は、唾を飲み込んだ。その支持の重みを感じて。


**「今夜は休め」**


彼は言った。


**「明日、君の本当の試練が始まる」**


**「ありがとうございます」**


私は言った。私をここに連れてきた、ありえない状況に対して。


妖精王はうなずき、謁見は終わった。


---


私は、ぼんやりとしたまま、自分の部屋へと歩いて戻った。頭の中は、古代の図書館、封印された魔道書、選ばれた者の重みのイメージでぐるぐる回っている。見慣れた廊下を通り過ぎながら、ふと自問しているのに気づいた。


*なぜ、私なんだ? なぜ、もっと経験豊富で、もっと強力で、もっとふさわしい誰かじゃないんだ?*


だが、疑いのどこか奥底で、もっと静かな声が答えた。


*他には、誰もできなかったからだ。そして、もしかしたら、それだけで十分なのかもしれない。*


---


その夜、僅かな持ち物をまとめた。ヴィルヘルムの短剣。その刃は、まだ完璧だ。ロリクのペンダント。肌に暖かい。母が縫ってくれた、繕いのある外套。そして、魂の中には、光と闇の、脆く、新しく生まれた釣り合い。試される時を待っている。


夜明けは、思ったより早く来た。だが、私は準備ができていた。あるいは、十分に。


そうでなければならなかった。


---


歩くにつれ、領域は変化した。


妖精王の領域の、ありえない美しさには慣れていた。空中庭園。逆さに流れる川。私の目がまだ完全には処理できない次元を通り抜けて折り畳まれる構造物。しかし、キャルウィンが私を尖塔から連れ出し、より深い場所へと導くにつれ、風景は、もっと奇妙なものへと移り変わった。より静かに。より古く。

封印された魔道書。

そして、それ以上に危険な何か。


次回、第18話.


来週も、同じ時間に。

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