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悪徳領主ルドルフの華麗なる日常 作者:増田 匠見(旧master1415)
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悪徳領主と豚の餌

まだまだ、ルドルフが活躍(笑)していきます。
「ル、ルドルフ殿、お待ち下さい。どうか、どうかお力をお貸し下さい。」

 席を立ち上がろうとした私に、すがり付くような声がかけられる。

 声の主は、何とかという地の領主で、名は何と言っただろうか?

 ……相手は、貴族の末席に名を連ねているとは言え、規模の小さい田舎貴族。

 その地を治めるために便宜上、貴族を名乗っている家畜へいみんに毛の生えた程度の者など、覚える価値もない。

「縁がなかったようだな。他家を当たってくれ」

 そう冷たく突き放し、そのまま部屋を去ろうとする。

「そこを何とか。今年はどこもかしこも不作で、最早ファーゼスト家以外に頼る所などないのです。どうか、どうかお力をお貸し下さいませ。」

 だが、相手も行く手を遮るようにして、食い下がってくる。

 それもそのはず、彼は自領が不作のため、ここでなんらかの支援をもぎ取らねば、かちくを餓えさせる無能のレッテルを貼られるのだ。
 だが、わざわざ私を利用しようとする所が気に入らない。
 田舎貴族風情が、自身の分を弁えず、私に話しを持ってくるなど、厚顔無恥も甚だしい。

「ふん、それで何故私の家なのだ?私の領地が荒れ地ばかりなのは、知っているだろうに。モロー伯爵の所にでも頼むのだな。」

 だいたい、この辺りを取りまとめているのはモロー伯爵だ。
 あそこは、代々続く由緒正しい家柄で、家格に相応し財力に加え、豊かな穀倉地帯もあり、蓄えもある。
 泣きつくなら、まずはそこだろう。

「モロー伯爵には、もう相談を致しました。が、足元を見られ高額な料金を吹っ掛けられました。その額何と金貨二百枚!私のような小さい家にそんな資金はごさいません!」

 ふん、その程度の額も払えないのか。
 有事に備えて普段から蓄えを怠るとは、やはりこの田舎貴族は無能だな。

「そうか、それは気の毒に」

「それでは!?」

 一瞬、田舎貴族が喜びの声を上げる。

 ……こいつは何を言っているのだ?
 私が貴様に手を貸して、何のメリットがあるというのだ。
 何の利益にもならない事に、私が手を貸す訳がないだろう。

「……どうぞ、お引き取りを」

 そう言ってにべもなく返す。

「なっ!貴殿は、私の領民に餓えて死ねと言うのか!?」

 田舎貴族がなにやら喚き始めたようだ。

 何様のつもりだろうか?
 貴族とは、自身の領地を治めてこその、貴き血であろう。
 自身の無能を棚に上げ、あまつさえ責任転嫁をするとは。
 やはり、所詮は田舎者と言うことか。

「その責任は、貴様が負うべきだろう?」

「ぐっ……」

 そう言って、田舎貴族の口を塞ぐ。

「そもそも、食べさせる事ができないなら、他所にでも売り払えば良かろう」

「なっ!?我らが守るべき民を、家畜の様に売り払えと!?いくら辺境伯とは言え、言って良いことと悪い事があるぞ」

 はぁ?何を言っているのだ、確かに家畜へいみんは大事な収入源だ。
 野犬にでも襲われたならば、守ってやることも吝かではない。
 だが、家畜へいみんを食わすために、我らが倒れてしまっては本末転倒だ。
 家畜へいみんが飼えないなら、出荷するなり潰すなりして数を調整することぐらい、当たり前の対処法だろう。

「全く、あれも嫌だこれも嫌だと駄々ばかりこねて、貴族の端くれとして恥ずかしくないのか?」

 金は無い、代わりに差し出すものも無い、おまけに身を切るのも嫌だと。
 自身の領地の事ぐらい、自分で責任を持って貰いたい物だ。
 ただ喚くだけなら、家畜にだってできる。

「さっきから聞いておれば……」

「ふん、貴様の領地の事だ。責任は貴様が持つべき物だろ」

「…………」

 そこまで言ってようやく口を閉ざしたようだ。

 所詮は田舎貴族、家畜と同様の事しかできないのなら、貴族を名乗らず、ブヒブヒ鳴いていればいいのに。
 わざわざ我が領にまでやって来てブヒブヒ泣き喚くとは、迷惑な奴だ。

 そういえば豚の餌ならば、大量に備蓄があったな。

 家畜へいみんが豚の餌を貪るのか…………これはいいな。
 ……いや、むしろ妙案ではないか?
 フハハハハ傑作ではないか!
 そうだ、豚は大人しく豚の餌でも食っていればいいのだ!!

「そうだ、いい案を思い付いた。ドクイモなら我が領にもたくさんある。それで餓えを凌いでは如何か?」

「ドクイモだと?」

 ドクイモとは、主に家畜の食糧として用いられる芋類の事で、特に辺境の地で良く見られる。
 非常に繁殖力が強く、痩せた土地でも育つため、ファーゼストでも大量に収穫することができるのだが、毒性を持っており、食べれば腹痛を起こす場合もあるため、専ら飼料として使われているのだ。

「食べられない物でもないだろう?」

 勿論、必ず腹痛になるというものでもないし、大量に食べ過ぎなければ、問題もない。
 餓えはある程度、凌げるはずだ。
 ただ、豚の餌を食べる・・・・・・・という事自体に、目を瞑ればだが……

「ぐぬぬ……」

「冬を越せない家畜は、潰すしかなかろう。潰すかどうか、貴様の好きにするがいい。」

 迷っている所に、そう投げ掛ける。
 私としては、このまま帰ってもらうのも、豚の餌を食わせるのもどちらでもいい。
 どちらにせよ、この無礼な田舎貴族が帰ってくれるなら、万々歳だ。

「…………それ以外に方法は無いか。ルドルフ殿、お願いできますかな?」

 やや間を置いて、田舎貴族はそう答る。
 その顔は、苦虫を噛み潰したようだった。

「ドクイモは、我が領でも処分に困っていたところだ。格安で譲ろう。……ヨーゼフ、後は任せる。」

「はっ、お任せ下さいませ。それでは別室にてご案内をさせて頂きます。どうぞこちらへ。」

 今まで側に控えていたヨーゼフは、そう言って、田舎貴族を伴って部屋から出て行った。

 やれやれ、ようやく帰ったか。
 全く、あれで王国貴族の末席を名乗るなど、一体いつからこの王国は豚小屋になったのだ?
 せめて人間の言葉を理解できるようになってから、貴族にんげんを名乗るべきだろう。

 ……まぁいい、あの芋は本当に繁殖力が強く、処分するのに困っていたところだ。
 あれを金に変えることが出来ただけでも、良しとしよう。

 それにしても、家畜へいみんに豚の餌を食わせるという発想はなかったな。
 フハハハハ、奴らにはお似合いの食糧だ。
 家畜へいみんが、豚の餌を貪る様は、さぞ滑稽であろう。

 さぁ女神様、あなたの忠実なる僕が、これから新たな供物をお捧げ致します。

 豚どもが涙を流しながら餌を貪る様を、存分にお楽しみ下さいませ!!

 クックックッ、フハハハハ、アーハッハッハッハ!
らんらん、今日のご飯はお芋だ!
(´・ω・`)おほーっ
+注意+
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