第083話 求めていたのは夢だったのか
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部費争奪部活動対抗戦の情報が解禁された次の日の学校は、意外にも静かだった。
それぞれが牽制し合っているような空気が漂っている。
この学校は、イベント事にいつだって全力を尽くす。
今回のイベントだってどの部活も賞金を目指して、ありとあらゆる努力を重ねるはずだ。
校長だって部活動を盛んにさせたい気持ちで始めたはずなのに、まさかこんな事になるとは思っても見なかっただろう。
しかし、安心して欲しい。
ギスギスとした空気が流れるのは、イベントが始まる期間までの話。
終われば学校は元通りになっているだろう。
「おはよー陽太。」
「なんか昨日より元気ないな。どうしたんだ?」
「単純に疲れたんだよ。朝練があるからね今。」
「陸上部って朝練してか?サッカー部とバスケ部はしてるの知ってたけど。」
「陽太も知ってるだろ。部活動対抗戦があるの。それの為にやる気になってるから陸上部も朝練があるのさ。しかも、強制参加ときたから困ったよ。」
「その感じだと他の運動系の部活も朝練してそうだな。」
だから、疲れた感じのクラスメイトが教室に入ってくるのか。
まだ遅刻になるような時間じゃないから何事かと思っていた所だった。
これは運動部が有利な対決を文化系が勝ち取るのは相当難しいだろうな。
「おはよう陽太、翼ちゃん!」
ここにも朝練の犠牲者が。
と思ったが、コイツはほぼ毎日朝練があるんだったな。
いつものようにケロッとした表情で挨拶を交わした来た。
「聞いたか陽太?なんとな!」
「部活動対抗戦の事だろ?聞いてるよ俺らも。というより、今その話していたところだ。」
「そうかそうか。俺はお前の部活をライバル視されてもらってるからな。せいぜい、負けないよう頑張ってくれたまえ。」
「なんで、上から目線なんだよ。てか、お前勘違いしてないか?こっちにはな、優秀な先輩達と尖りに尖った能力を持つ一年生達がいるんだからな。」
「陽太どんな能力なんだ?」
「良くぞ聞いてくれたな。俺は、ちょっと耳が良い。」
「それだけ?」
「あ、ちょっと打たれ強い。」
やめろ、その悲しい者を見る目は。
気付いてるっての俺でも。
最近、俺の周辺に現れる人達全員個性強すぎて、俺が薄まってるんじゃないかとか。
もしも、俺が漫画の主人公ならここから三日で打ち切りだぞ。
「その悲しい顔すんなよ陽太。お前にはお前の良さがあるから。」
「俺の良さってなんだよ。」
「・・・さぁ、先生そろそろ来るかも知れないから席に着こうかな。」
逃げるな卑怯者め!
俺が悲しい思いして終わったじゃねーかよ。
部活動対抗戦で絶対手加減してやんねーからな。
真が来るまでは、他の四人を頼りにしようと思っていたが、俺自身のやる気が上がってきた。
「陽太、ボクはどんな君でも受け入れるからね。」
「それはフォローになってないっての。」
「いやいや、ボクなら陽太の良いところなんて無限に語れるけど、ここは教室だから遠慮してるんだよ。」
学校で目立ちたくない俺の気持ちを尊重してくれているのか。
それともこの場を切り抜ける嘘か。
どちらにせよ、俺の事を思ってくれてのことだと信じたい。
俺の情緒がおかしくなる前に担任が入って来てくれて助かった。
今日のホームルームは、大人しく生徒が聴いてくれていたことを大変満足した担任の顔が、若干腹立つのも許してやろう。
放課後に部室に向かうと、どうやら相談者の方がいたみたいで、先輩達が対応していた。
誰なのだろうかと思って見てみると、泉田さんだった。
泉田さんの相談は前回終わったはずなのに、今日はなんの用件だ。
まさか、前回の件が失敗してイチャモンでも付けに来たか?
泉田さんはそんな人ではないか。
「そ、それでなんですけど。やっぱりプレゼントは渡しました。けど、こ、ここ告白は会ってしたいとお伝えしました。」
「会って告白?その子はどこに住んでるかとかの話をしたの?」
「あ、それはネットリテラシー的に問題があると思ったので、僕が駅を指定してそこで会うことに。もちろん、交通費も僕が出します。」
「それで、相談は何ですか?」
そこが気になる所。
告白する事も場所も決まっているなら、今日の相談内容はなんだ。
まさか、コーデとか見て欲しいなんて言わないだろうな。
いくら何でもやるとは言ってもそこまでの補助は出来ないぞ。
「それで遠くから見ておいて欲しいなって思いまして。」
「それはどうして?僕達は勿論泉田くんが言うのであれば、協力したいと思います。けれど、相手の気持ちは配慮されているとは。」
「うっ、それはそうですけど。」
「まぁ、しかし気持ちは分かるので、こちらから一年生三人を送りますのでそちらでご了承ください。」
えっ?俺達が行かないと行けないの?
人の告白を見守る為に?
絶対に嫌なのだけど、ここで嫌と言い出せる雰囲気ではない。
それに横にいる二人は嫌な顔一つしていない。
ここは経験だと思って割り切りるしかないな。
「それでいつの予定ですか?」
「・・・今日。」
「えっ?」
俺は思わず声を漏らしてしまった。
いきなりそんな事言われてもな。
行けと言われれば行けなくもないが、何故そんな大事な事を今言うんだ。
いや、昨日今日だから言うタイミングは今しか無かったか。
本人も申し訳なさそうな顔をしているで、許してやるしかない。
それに泉田さんも勇気を振り絞ってこの決断をしたのだろうからな。
そこの気持ちはこの部活に入った以上汲み取ってあげる必要がある。
「それで、どこの駅で待ち合わせなんですか?」
「木枯駅です。」
「いくならさっさと行きましょう。」
「ありがとうございます!待ち合わせの時間も近づいていたので助かります!」
なんでそんな大事な事を黙ってるんだこの人は。
そういう性格なのか。
俺達一年生は急いで駅へ向かう。
しかし、藍連高校の制服を着たままで木枯駅をうろつくのは相手にバレるリスクがあるよな。
「どうしよう。誰も来てないみたいだけど。」
「待ち合わせ場所には来てないな。相手の服装とか聞いておけば良かったか。」
「聞いてもどうせ無駄だって。見ただろあの感じ。突発的に決まった感じだし、相手との連携も取れてないと思うよきっと。」
「みたいだな。泉田さんがずっと携帯で触ってるみたいだし、返信が来てないんだろ。最悪、ブッチなんでこともあり得る。」
「約束したのに?わざわざそんな事するのか?」
「ネットでの交流ではよくある話ですよ。やっぱり顔を見せたくないとか、想像してた人と違ったとか。」
「どれも失礼な話だけどな。・・・!?待て、誰か泉田さんに近付いてるぞ。」
泉田さんに近付く人が一人。
でも、相手は男だ。
泉田さんの反応からして知り合いという感じはしない。
ということは、あれがまんじゅうなのか?
いや、でも性別は女だったはず。
となると、まんじゅうには既に彼氏がいて断る為に連れてきたのか?
いや、今はどっちでも良い。
そんな事よりも困惑している泉田さんをフォローする為に近くへ行くべきだ。
「待って、もう少し様子を見ようよ。」
凛に止められて、俺は出るタイミングを失った。
凛が何かを感じ取ったならそれを信じてみようと思う。
頼むから何事もなく終わってくれよ。
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