第067話 最強の助っ人
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注文をやっとの思いで終わらせると、談笑タイムに移る。
とは言っても、普段しているような内容とあまり変わり映えはしない。
それでも、面白い話を聞いてるかのように接してくれるのは有り難いな。
「今度発売されるゲームだけど、一緒に買いに行こうよ。初回限定がすごい豪華だからさ。」
「初回限定版とか今まで買った事ないな。とりあえず、値段が落ち着くまで待つ派なんだよ。」
「えぇー!それだと自分がプレイする前にネタバレとか踏んじゃわない?」
「仮にネタバレ踏んでも見なかったことにするのが、コツだったりする。」
「お待たせいたしましたー!」
会話の途切れたタイミングを見計らって、店員が注文した商品を届ける。
注文したのはありきたりではあるが、その店の特徴が大きく表れるオムライス。
それと愛情たっぷりのメロメロメロンソーダという物だ。
後者に関してはただのダジャレじゃないかと思うのだけど、学生が考えているのだから仕方あるまい。
味の美味しさに変化はないようだしな。
「それでは、ご一緒にもえもえきゅーん!」
「「もえもえきゅーん」」
店員に半ば強制的にやらされた。
恥ずかしさもあったが、やってみると意外に楽しかったりする。
「うーん!味も完璧だね!」
「店とかで出されても怒らないレベルだな。フワフワでトロトロ。口の中でもチキンライスと混ざり合ってハーモニーが生み出される。」
ケーキを食べた後なので、胃袋にオムライスが入るかどうか不安だったけど、すんなりと一皿完食してしまった。
残すのは勿体無いので良かったは良かったけど、食べ過ぎな気もして罪悪感が残る。
「ごちそうさまでした。」
食べ終わるまでにそれ程時間は掛からなかった。
最後にメイドの生徒と写真撮影をしてから、店を出る。
ちなみに最後の写真撮影は有料となっていて、店員のゴリ押しで勧められるのでまず逃げられない。
他の三年生のクラスは見ていないが、ここのクラスが恐らく一番商売上手だろうな。
「楽しかったー!」
どうやら凛はかなり満足してくれたようだ。
時計を見ると時間的にもかなり経過しているようだし、解散するにはちょうど良いか。
「凛のおかげでかなり楽しい時間が過ごせた。ありがとうな。」
「いやいや、お礼を言うのはウチの方だよ。色んなワガママに付き合ってもらったんだからさ。」
「来年の藍連祭と一緒に回れると良いな。」
「うん!楽しみにしてる!じゃあ、一旦解散って事で。劇の方も一緒に頑張ろうね!」
大きく手を振りながら見送ってくれる凛。
藍連祭を楽しむ事が十分に出来たので、次は仕事に戻る事にしよう。
携帯を眺めてみたが、華からのメッセージは届いていない。
つまり、まだ見つける事は出来ていないと言う事だ。
いつ爆発するか分からない物が校内にあると知っていたので、正直気が気でなかった。
いち早く見つける為に走り出した。
思い付く場所や人気の少ない場所など、隠せそうな場所は大体見たがやはり簡単には見つからない。
もう見ていない場所と言えば、あそこしかない。
階段を全力で駆け上がり屋上を目指す。
一段一段がこんなにも長く遠く感じるのは、焦りがあるからだろう。
後少しで屋上に辿り着く。
そんな中で、一人の少年が行く手を阻む。
「お前が最初に来たのか。誰でも思い付く場所に置いたからもっと早く来ると思っていたけど、誰も来なくて退屈していた所だ。」
階段に太々しく座っている天竹の姿がそこにあった。
わざわざここに天竹がいるということはこの先にあると思ってまず間違いない。
通してくれと言った所で果たして簡単に通してくれるだろうか。
ここは二年も三年も使っていない最上階。
人通りは全くなく、多少の揉め事があっても誰も気付かない。
あっちの都合が良い場所選びだったと言う訳だ。
「お前には怪我をしてもらって帰らせる必要がある。恨みがある訳じゃないが、悪く思うなよ。」
「悪く思うなってのは無理があるだろ。今から俺を殴るつもりなんだからよ。」
「ごちゃごちゃとうるせぇーな!」
ある程度の距離は離していたはずなのに、踏み込みの速さと腕の長さであっという間に俺の顔面にまで拳が届く。
もしも、俺に類い稀なる運動神経が備わっていたなら華麗に避けて反撃に出ていたのに。
拳は無情にも顔面を捉えた後、全力で振り切られた。
最近は殴られることも少なくなって来たなと思っていたのに、こんな所で派手に殴られる事になるとは。
痛みでこの場から逃げ出したい気分だけど、この先にあるものを早く回収しないといけない。
無闇に突っ込んでも勝てないと分かっているので、どうする事もできない状態だ。
睨み合いを続けていても埒が開かないと思ったのか、天竹が再度仕掛けてくる。
痛いだけなら、何度だって耐えてやるよ。
俺はそう意気込んで腹に全力で力を入れる。
しかし、天竹の拳はいつまで経ってもこちらへ届かない。
何が起こったのか確認する為に恐る恐る前を向くと、思わぬ助っ人がそこには立っていた。
「藍連祭の邪魔をする不届者は君か?それにこんなコソコソと隠れて暴力を振るうとは、ギルティ。それなりの対応をさせてもらおう。」
ワイシャツの袖を捲り、少しでも動きやすいようにする。
音無がどれほど喧嘩に慣れているのか知らないが、恐らく強いと言う事だけは間違いない。
「お前、ただ者じゃねーな。こっちから殴り掛かる隙が一切無い。」
「武術の心得は大方身につけているからな。君みたいな輩は、傷付けずに無力化することが可能さ。」
「随分と好き勝手行ってくれるな。俺は喧嘩だけが取り柄なんだよ。」
「ストゥーピッド。全くもって自慢出来るようなものじゃないね。佐倉くん、君は屋上に用があるんだろ?僕に構わず行ってくれ。」
二人の間に入った所で邪魔になるのは目に見えている。
それなら音無に甘えて、この先を目指すのが最善だ。
「勝手に俺の許可なく、通ろうとしてんじゃねーよ!」
音無の登場に苛立っているのか、先程よりも荒々しい一撃を繰り広げられた。
しかし、振り返らずに屋上を目指す。
音無が入れば、絶対なんとかなるからな。
「おっと。後ろから殴り掛かるのは、タブー。やめておいた方が良い。」
重そうな拳を軽々と掴む音無。
しかし、彼から暴力を振るうことを決してしない。
無力化すると行っていたが、天竹はいくつもの修羅場を潜り抜けて来た猛者。
冷静に顔を目掛けてフックを繰り出す。
ただ、音無の実力は天竹を遥かに凌駕していた。
確実に当てる為に踏み込んできた勢いをそのまま利用して、綺麗な背負い投げを披露する。
地面に激しく打ち付けられる音が響く。
痛みを感じている暇もなく、腕を後ろで拘束される。
どれだけ暴れようとも音無の力が強くて、拘束を解けない。
「残念だ。君の秘めたる才能がこんな事に使われるなんて。それが分からない時点で君はルーザー。」
「気持ち悪い英語ばっかり使いやがって。」
「弱い奴ほど何とやらってね。」
言い訳をこれ以上しても格好がつかないので黙る事しか出来ない天竹。
彼にとって大きな誤算が、最も最悪な形で影響してしまった。
両者睨み合う沈黙の空間は、警備員に引き渡されるまで続く。
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