第049話 学校行事は恋の予感
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「お疲れ様でーす。って、誰もいないな。」
「早く終わったからウチら一番乗りですよ。」
「残念ながら、アタシが一番だよ。」
ソファーに寝転がっていたようで全く見えなかったが、華が先に来ていたらしい。
あのソファーに寝転がるなんて、贅沢すぎるだろ。
学校の中では、保健室のベッドと同等以上の快適さだと予想されている。
「文化祭の話どうだった?」
「やっぱり気になる?アタシらの所は全くもって進まなかった。何するかだけしか決まってない。」
それだけ決まっていれば十分だ。
何せ、本番までは一ヶ月もあるんだからな。
明日で役決めまでして、ちょっとした準備に取り掛かれば大幅な遅れにはなるまい。
「何するの?」
「確かに浦島太郎だった気がするな。最初は子供っぽいって話になったんだけど、アレンジを加えるらしい。」
「アレンジがどこまでウケるかの勝負になりそうだな。」
「アタシは裏方になるから、関係ないんだけどね。」
「用意とか大変な奴になったら地獄だぞ。」
「あり得なくないからやめて。で、そっちは何を?」
まぁ、当然こっちが何になったのかも気になるよな。
俺達がどんな話し合いをして、どんな役割になり、どんな結末を迎えたのか事細かく説明した。
すると、華の一言目は意外なものだった。
「やるって決めたら頑張るんだよ。」
「うん!クラスのみんなには迷惑掛けないようにしないと。」
「それもあるけど、一番は凛の為。」
「ウチのため?」
「高校生活の中で文化祭は三回あるけど、一回一回が大事な思い出なんだから、悔いのないようにってこと。」
「ありがとう華ちゃん!お互い頑張ろうね!」
後は先輩達が来るまでの間、中学の文化祭はどうだったのかの話をした。
中学の時もやはり敵が多かったので、イベント事はサボっていたから話すことはなかったけど。
華は中学の文化祭も真面目に参加したらしい。
俺が意外だと反応すると、アタシもそう思うって笑って返してきた。
最後は凛の中学の話だ。
華は大体どんな中学時代を送って来たのか予想出来るが、凛はあまり想像出来ない。
友達が少なかったと彼女は話していたが、友達は少なくても十分に楽しい学校生活は過ごせる。
「中学生の時は、陽太さんと一緒でサボってましたね。唯一の友達だった子と一緒にゲームとかしてました。」
「友達とゲームしてただと。俺よりもレベルの高いサボりだな。」
「元気にしてるかなゆーちゃん。」
この感じを見ると、高校は別々の所を選んだらしい。
少し思い出して寂しくなったのか、表情は暗くなる。
でも、それも一瞬のことだ。
顔を上げれば、俺と華がいる。
友達だったゆーちゃんという子のことを忘れろとは言わないが、今は今の友達と学校生活を楽しめば良い。
「お疲れー。一年生はみんな揃ってるね。」
「遅くなってごめんなさい。クラスの話し合いが長引いてしまって。」
「謝るようなことじゃないですよ。三年生にとっては最後の文化祭。悔いの残らないようにして欲しいですから。」
「ありがとう!でも、安心して。文化祭とかのイベントはこの部活が忙しくなるタイミングでもあるから、出来る限り頑張るよ!」
イベントの度に忙しくなるのか。
少しは考えていたがやはりそうだとは。
学生にとって恋愛が一番発展しやすいのは恐らくイベント後だ。
何かと理由を付けてキッカケに出来るからな。
となると恋愛支援部を頼りにしてくる生徒も増える訳か。
一気に三、四人と来られても対応出来るかどうかは怪しい。
出来る限り内容を吟味して、ある程度は断る必要もあるかもな。
「そして、優秀な君達に久しぶりの相談者だ。」
「ご機嫌よう皆さん。知っている人もいるみたいですが、私の名前は鬼龍院雅。お見知り置きを。」
現れた相談者は最も場をかき乱す存在。
そして、華と会わせてはならなかったはずの相手だった。
名前を聞いても華は反応を示さない。
動揺すれば相手の思う壺だと思ったのかもな。
当事者である華本人が一番この相談者を追い出したいはずだ。
それなのに我慢している。
ならば、俺がどうこう言うことがあってはならないだろう。
「それで相談内容というのは?」
「えぇ、ちょっとした落とし物を。」
「あのー、もしかして勘違いされてしまいましたか?一応、学校にいる人の恋の悩みを解決へ導くという場所なので、便利屋とかではないんですよ。」
「あら、そうなんですか?それは困りました。大事な大事な物だったんですけどね。また自分で探してみる事にします。」
何が目的だったのか全く分からないが、それだけを言い残して去っていく。
狙いは俺達の反応を見て楽しむことか。
だったら、タチの悪い女だ。
二度と関わりたくないな。
「あらら、ちょっとした勘違いだったみたい。彼女がどうしてもって言うから連れて来たんだけどな。」
「塩巻いておきましょう、塩を。」
二度と来ないように邪気は祓っておく。
これで当分彼女と会うことはないと願いたい。
しかし、藍連高校の生徒である限り、いつどこで接触してくるのか分からない。
監視の目が常にあるような気分でいなければならないということだ。
俺が直接狙われているという訳でもないのに、考えただけで背筋が凍りつく。
「あのー今大丈夫か?」
開いたままの扉の先で、俺を見つめる一人の男子生徒。
何も知らない人からすれば、俺が扉前で奇怪な行動をしている不審者にしか見えないはずだ。
塩を撒く振りを止め、制服のシワを伸ばす。
そして、咳払いをして一言。
「ようこそ、恋愛支援部へ。」
「あ、それ僕のセリフだよー。」
糸井先輩が慌てて俺の隣へ来て、相談者を招く。
真面目な相談に来た相談者は、俺達のやりとりを見て少し不安そうだ。
久しぶりの部活だし、せっかくなら何か相談を受けたいのでこの人を逃す訳にはいかない。
どうしようかと迷っていると七瀬先輩が手招きをしている。
「お茶を用意したので、とりあえず座ってお話しでもしましょう。」
「良かった。七瀬さんがいるのか。」
「ムムッ、僕では不満みたいな言い方だね宮道くん。」
「学年でも上位を争う変人の栄ニだと心配だろ。」
「そんな僕と親友の君も中々に変人なのではないかな?」
「言ってくれるな。悲しくなって来ただろ。」
こんなコミカルな会話をしている糸井先輩は珍しい。
それほど打ち解け合った仲であることが伺えるな。
それなら親友という関係でありながら、わざわざ相談者として来たのはどういうことだろうか。
まさか、恋愛支援部の部長が糸井先輩だと知らなかったはずもないだろうし。
「今回は女子の意見が聞きたくて来た。」
「ってことは、僕と佐倉くんは力になれないかな?」
「限りなくな。ゼロとまでは言わないけど。」
「女子への相談?プレゼントとかですかね?」
星海がパッと思い付いたであろう、相談内容を口に出す。
女子でない俺でも真っ先にそれが思い付いた。
「俺は女子にモテたいんだ!この文化祭でスタートダッシュを決めて、せめてもこの最後の高校生活を彩りたいんだ!」
熱い声量で語られた相談にしては、まさに男子高校生の夢というどうしようもない内容だった。
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