第023話 それぞれの遊び方
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四人で遊ぶ場所と言えば何処を思い浮かべるだろうか。
定番は、大勢で盛り上がることの出来るカラオケか?
趣味が合うのであれば映画を見に行くのも良いかもな。
食事をする前であるなら食べ歩きなんかも悪く無いだろう。
「きゃー!これ可愛いですよ!凛さんにピッタリ!こっちはクール系だし華さんかも!」
「ダメですよ梨乃ちゃん。大きな声出したら目立っちゃう。」
「けど、梨乃の服のセンス好きだな。毎回選んで貰いたいくらい。」
「えっ!全然選びます!てか、選びたいです!」
ファミレスを出た後、買い物をする為に藍連駅から二駅離れた白刻市へとやって来た。
白刻市は、藍連市にあるショッピングモールと肩を並べるショッピングモールが存在する。
そして、藍連市のショッピングモールはアクセスが車かバスぐらいしかないので、駅近くにある白刻市の方が学生には人気だ。
今は女性陣が服を見たいと言い出したので、小洒落た服屋に来ている。
服には無頓着な俺は、黙って彼女達が選び終えるのを待つしかない。
「お兄ちゃんー、これとこれどっちが私に似合うかな?」
服を自分の体に当てて意見を求めてくる。
一つは黒とベージュのワンピースで真ん中にベルトが付いている。
もう一つは、ブラウンのオフショル。
個人的には後者が似合っていてると思うが、知らん男に肩を見られることを考えると露出のなるべく少なく前者か。
これは決してシスコンとかではなく、梨乃が被害に遭わないようにと思ってのことだ。
まぁ、妹が可愛いのは認めてやるがな。
「お兄ちゃん、顔が怖いから二人に聞いてくるね。」
「露出は控えろよー。」
これだけ守ってくれるのなら、後は好きにしてくれ。
立っているのもしんどくなってきたので、近くにあったベンチに座る。
こういうのって買い物中は御法度だと聞くけど、気持ちが痛いほど良くわかるな。
三人が店を出て来たのは三十分くらいが経った後のことだった。
何を買ったのかと思って、全員の手を見たが誰一人として袋を持っていなかった。
「あれ?何も買わなかったのか?」
「今日は下調べって感じかな。服見た度に買ってればお金いくらあっても足りないよ。」
なるほど、一つ勉強になったな。
いつ何処で使うか分からない知識だけど。
服を見るのが終われば次は何処に行くのかが議題に上がる。
俺はパッと思いつくような場所がないので、携帯を触って考えている素振りだけ見せる。
「じゃあさ、アタシの趣味に付き合ってよ。」
「華さんの趣味。ウチ、すごく気になります。」
「私も私も!」
「意外とぬいぐるみ集めるとかだったりして。」
「違うけど、そうだったとしても笑うなよ?」
おっと、これ以上は踏み込んではいかないラインかもしれない。
眼力だけで心臓を抉られてしまいそうだ。
大人しく古東の案内に導かれるままに歩くと、ギターからピアノまでが所狭しと並べられた楽器屋に到着した。
つまり、この楽器のどれかを弾いているだろう。
多分ギターだと思うけど、オカリナとかフルートだったとしてたイメージと合わなくて笑ってしまいそうだ。
「最近、ギターをちょっと練習してるんだ。お金が貯まれば自分でギターとか買ってみたいな。」
「今は誰かのお下がりを使ってるのか?」
「兄貴のお下がりをね。もうかなり古くなってるけど。」
「物を大切にするのは良いことですよ。一度で良いので演奏聴いてみたいですね。」
「それならゲームのBGMとか練習しておかないと。」
「うわぁ!本当ですかおすすめが沢山あるのでリストにして送っておきますね!」
そのリストがどれだけの行数になるのだろうか。
好きなものが多すぎるて一番を絞れないのはオタクあるあるだからな。
挙げればキリが無いはずだ。
店の人の許可を得て軽く触ってみる古東。
それを俺達で眺める。
演奏中なので声に出して褒めないが、古東とギターの組み合わせは絵になるな。
一通り触り終えると満足そうにギターを眺めている。
俺達は他の人の迷惑にならないくらいの拍手で称賛する。
「みんなはどの楽器に興味あるの?アタシばっかりだと申し訳ないしさ。」
一旦、散り散りになって店内を散策することに。
俺はその場に残って古東からギターを教えてもらう。
やっぱり、男と言えば一度はギターに憧れるものだ。
ちょっと触ってみたが意外にも綺麗な音が出る。
古東は驚いている様子だったが、一番は本人である俺が驚いている。
もしかしたら、音楽の才能があったのかも知らない。
結局、何かを演奏しようとすると考えることが多すぎて、まともに演奏は出来なかったけど。
「最初であれだけ出来れば十分だよ。いつか一緒に演奏したいぐらい。」
「そんなに褒めるなよ。金がないのに始めたくなるだろ。」
「ようこそ、こっち側へ。」
夏休みに入れば、短期のバイトとか始めてみるのも悪くないか。
初心者用のギターであれば数万で買えるらしいからな。
もし、買わなかったにしろ貯金できるし。
悩んでいる間に星海が俺達の所へ戻って来た。
手には懐かしい思い出を呼び起こすカスタネットを持っている。
「ウチ、小学校の演奏会の時カスタネット担当ですごい褒められたんです。思い出して選んじゃいました。」
「微笑ましいエピソードだな。そういうの褒められるといつまでも覚えてるよな。」
懐かしい音を鳴らしながら思い出を語っていた。
こんなにも嬉しそうにエピソードを語っていることは珍しいので、俺達を聞き入ってしまう。
覚えてられると言っても、鮮明にエピソードを語る彼女は相当記憶力が良いようだ。
「私も面白いの見つけて来ましたー!」
会話が終わったタイミングで梨乃が楽器を持ってくる。
後ろで星海が語り終えるのを待っていたのが見えていたけどな。
言ってやらないのも優しさの一つだと思う。
「ここオルゴールも売ってましたよ。これは元々音楽が入ってるけど、すごい沢山のリストから選べるみたい。」
鳴っているのは学校授業とかで良く聴く音楽だ。
リストもかなり有名なものやアニメなど幅広い。
お手頃な価格のものもあるので、いつかプレゼントとかに役立つかも。
その後もわざわざ店員が楽器の紹介をしてくれて楽しい時間が過ごせた。
これだけしてもらったのに何も買わないのも申し訳ないので、古東はギターのピック、代表して俺がオルゴール一つ購入する。
親の誕生日まで寝かせておくことにしよう。
店を出ると星海が次を考えているらしい。
時間はいくらでもあるので、みんなで喋りながら向かう。
親睦交流会の時は二人でゲームセンターに行ったが、果たして今回はどこへ行くのか。
「到着でーす!ここはウチにとって欠かせないかなと思って選びました。」
そこにあったのはゲームセンターだった。
結局ここへ来るのかよとツッコミそうになる。
もしかしたら、前回行った時に相当楽しんでもらえたのかもな。
「ゲームセンターといえば絶対プリクラ撮りましょうね!」
梨乃からプリクラという言葉を聞いてドキッとする。
あの時撮ったのがバレたのかと思った。
よく考えれば、写真は鍵付きの引き出しに厳重に保管してあるし、そもそも俺と星海が一緒にゲームセンターに行ったことも知らないはずだ。
古東と梨乃がどれから遊ぼうかと選んでいる中で、俺の横に来て耳元で星海が囁く。
「ドキッとしちゃいましたね。」
間違いなくそっちのほうがドキッとするだろ。
「二人とも早く早く。」
梨乃が呼んでいるのに、一瞬反応が遅れたのは言うまでもないだろう。
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