第022話 妹はフレンドリー
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言われた通りファミレスに向かうと私服の二人が待っていた。
星海は一度だけ見たことがあったが、古東は初めて見るな。
いつも着ているにオーバーサイズのTシャツにスキニーか。
二人の恰好に比べて、俺の私服は相当センスがないので恥ずかしい。
このまま帰ってしまおうかと思ったが、向こうが俺を見つけてしまった。
手を振ってここだよとアピールしてくる。
これで見えなかったフリをする線も消えた。
「あっ!あの人達じゃない?こっちに手を振ってくれてるし!」
「・・・そうだな、行くか。」
「なんでそんなにテンション低いのお兄ちゃん。」
兄の心、妹知らずとはまさにこのことだ。
梨乃が迷惑を掛けそうで嫌になっているのを本人は理解していない。
そもそもどこの妹が兄の友達に興味を持つだろうか。
自然な形で会うことはあるかも知れないけど、ウキウキで付いてくるなよ。
まぁ、俺に友達がいるのが珍しいし、それが女子なら尚更であるが。
「わぁーー!!!可愛い系とカッコイイ系どっちもいるじゃん!初めまして、佐倉梨乃です!」
「佐倉、これ本当にアンタの妹?全然似てないけど。」
「よく言われるけど妹だ。」
「本当いつも愚兄がお世話になってます。こんな感じなんですけど、悪い奴じゃないんで仲良くしてやってください。」
母親かとツッコミそうになるが、冷めた空気になりそうなのでやめておいた。
一旦妹の手を掴み、十メートルくらい距離を離してからまた戻る。
「よし、丁度良い時間だから昼ご飯にでもするか。」
「ちょっと待ってよ〜!大人しくするから!」
何で俺は二人の前で兄妹漫才をしてるんだ。
これ以上立たせているのも申し訳ないので、中へ入って席に座る。
席に案内されるまでに、店内にいる男性客から鋭い視線を浴びせられたが慣れっこなので気にしない。
これだけ、女性に囲まれていたらそう言う目があるのも理解しているからな。
そんな奴らには、どうだ羨ましいかと内心で悪態をついておこう。
着席して間も無く、店員がメニューとカトラリーを準備して、営業スマイルで去っていった。
休みということもあって人が多いのに、笑顔を欠かさないとはプロの仕事って感じがするな。
もしも、ここが外国だったなら多めにチップを払いたいくらい。
お互いに軽く自己紹介してから雑談が始まった。
「どうしてお二人はこんな兄と仲良くしてくれるんですか?」
「やめろ梨乃。初対面でいきなりグイグイ行ったら怖いだろ。」
「佐倉とは比べてものにならないくらい明るいな。」
「同じ血なんだけどな。」
「顔も可愛いし、話も面白いからアタシの妹にしたいくらい。」
「うわぁー、私も華さんみたいなお姉ちゃん欲しかった〜。もちろん、凛さんもですよ。」
キャッキャと女子だけで会話が成立しているようなので、影になることに徹してメニューをひたすらに見る。
時間だけはあるので熟考した結果、今日は海鮮丼かな。
他の三人も話し合いながらメニューを決めたらしい。
なんか帰りたくなって来たな。
「ウチ、友達少ないから妹さんと知り合えて嬉しいです。」
「こんなので良ければいつでも貸すぞ。なんなら、あげようか?」
「こんなのって何よ、こんなのって。よく出来た妹でしょ?」
もし仮にそうだったとしても自分では言わないんだよ。
それが日本人が持つ謙虚という才能だ。
料理が次々に運ばれるとテーブルがパンパンになる。
注文の時点で量が多いなとは思っていたが、まさかこんなにあるとは。
最後にデザートも頼もうとか言ったけど入るのか?
「美味しそうだ。料理見てるとお腹空くから早く食べよ?」
古東がいるから大丈夫そうか。
結構、食べられるし残すことにはならないだろう。
古東と星海の並びを見て思い出したが、今日は二人で遊んでいたはず。
突然、電話があったので来たけど邪魔だったのではないか。
そんな勘繰りが生まれる。
異性の友達なんて出来たことがないから余計慎重に接しないといけない。
「今日はお二人で遊んでたんですか?」
「ちょっとウチが華さんに相談があってね。」
「そんな大事な話があったのに、俺が混ざって良かったのか?」
「大丈夫ですよ!というか、佐倉さんにも聞いて欲しかったので。」
俺にも聞いて欲しかった?
あの部活に入ってるのに、普段は相談されるような人間ではないと自負している。
だから、どんな話を切り出されるのか全く想像もつかない。
箸を止めて真剣な表情でこちらを見る星海。
じっと見られると照れてしまいそうだが、生憎そんな空気でないと察した。
「相談というのは、ウチも二人と同じ部活に興味があって。」
なんだそういうことか。
勿体ぶっていたので重大なことかと思った。
いや、彼女にとっては悩むほど考えることなのだ。
茶化すことはしないで真剣に話を聞こう。
「部活入ってたんだお兄ちゃん。」
「アンタ、妹に言ったなかったの?」
「言ってなかったな。聞かれたなかったから。」
「ドン引きだよお兄ちゃん。部活入ったのは家族に共有すべきでしょ。どんな部活入ってるの?」
部活の話をすると何部に入部したのか、絶対に聞かれるから言わなかったんだ。
決してあの部活が恥ずかしいとか言っているのではなく、自分のキャラと合っていない自覚があるからな。
誰か俺以外の人が言ってくれないかと、アイコンタクトを送るが二人は反応してくれない。
このまま会話を止める訳にもいかないので誤魔化しながら呟いた。
「・・・あい支援部。」
「何聞こえないよ。」
「恋愛支援部。」
妹は何も言わずに固まった。
あり得ないものを見ているようだ。
「色々と巡り合わせが重なったんだよ。語るには一日必要なくらいのな。」
「自ら人と関わりに行くなんて私は感動で泣いちゃいそうだよ。」
嘘泣きしている奴は放っておいて本題に戻ろう。
星海の入部の件だけど、俺達には全くの権限がない。
本人の意思と学校側の受理で成り立つ。
けれど、俺の気持ちを言って良いのならば一緒に部活をやってみたいと思う。
「ご迷惑になってしまいそうで。」
「迷惑になるのを怖がるのか?」
「ちょっとお兄ちゃん言い方が。」
空気が悪くなると思い、先程まで戯けていた梨乃が止めに入る。
それでもお構いなしに言葉を続ける。
「どうして欲しい、ああして欲しいは簡単に言えるけど、最後に決めるのは星海だ。その決断を俺達は聞きたい。」
「恋愛支援部入りたいです。二人と一緒に頑張りたい。」
「アタシ達も同じ気持ちだよ凛。凛がいたら絶対楽しくなる。」
「焦ったー!お兄ちゃん変なこと言うから大丈夫かなって思っちゃった。ごめんなさい凛さん。」
「全然大丈夫だよ!ウチの後押ししてくれたって分かってるから。」
後押しになっていたなら良いけど。
普通の人は感じの悪い奴だと思うだけだから。
それでも星海には、自分で決断する力を身につけて欲しかった。
そうすれば、今後の様々な人との交流に繋がると思う。
「よし、色々話し込んだしデザート食べるか。」
「うわぁー!何にしよう!全部頼んじゃおうかな?」
妹よ、甘い物に釣られてすぎじゃないだろうか。
心配にはなるが、今日は空気が明るくなったので良しとしておこう。
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