第010話 痛みを伴う恋心
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気まずそうにしていたが開き直った岡田が口を開く。
「どいつもこいつも女見れば盛りやがって。まじで気持ち悪いんだよ。だから、それ使って金稼いでるだけ。何か文句あんの。」
「おい、それは違うだろ。今仲みたいに真剣に悩んでる奴だっている。それを全部同じみたいに。」
「はぁー?そいつも犯罪者の一人じゃない。何かばってんの?私が悪いって言いたいの?」
「もう良いんです。確かに僕のやったことは許されないことでしたから。」
表情は昨日と比べものにならないほど暗い。
目にも光がないように思える。
彼の言葉が本心であるなら、第三者である俺達が傷口を抉るようなことをして良いのだろうか。
そんな迷いがある中で、一人だけは真っ直ぐな目していた。
この状況にどうしても納得出来ず、ゴールも見えない戦いに挑もうとしている目。
「その言葉は確かにそうだ。行き過ぎた愛情が歪んだ結果がこうなった。」
「キャハハ!ついには助っ人にまで見捨てられてやんの!」
「くっ・・・うぅーー。」
涙を流して項垂れる今仲。
ただ追い討ちを掛けただけにも見えるが古東はそんな人間じゃない。
もっと情に熱く、人一倍悲しみに寄り添える。
予想通り冷たく突き放すだけでは終わらない。
項垂れる彼の前にしゃがみ込み手を差し伸べた。
「でも、気付けたんだろ。戻ってこれだんだろ。それでも、岡田の思いだけが残ってた。その気持ちまで嘘にしちまっていいのかよ。」
「僕は、僕は本当に彼女を愛してます。騙されてたと知っても、あの日々が嘘だったと知っても、僕の心を救ったのは彼女だから。」
「良く言ったな。」
覚悟の声がビル内に響き渡る。
俺は声も出なかった。それがどうしても悔しかった。
あれ程意気揚々と真相を解明したのだと調子に乗っていたのに、いざ二人に会って見ればこのザマだ。
どちらの意見が正しいかばかりを考える。
カランッカランッカカカッ
何か引きずる音が聞こえてくる。
しかも、下の階段からこちらに向かって上がっているようだ。
一瞬部長達が後を追って来たようにも感じたが、足音の数がどうにも多い。
四人か五人、それくらいはいるな。
扉が開きその正体が分かる。
「んだよ、想定してたよりも人数が多いじゃねーか。」
「そんなこと気にするまでもないだろ。」
「どうも〜。俺達、岡田真衣に復讐しようの会です〜。」
五人の男達が武器を持って入って来た。
岡田真衣のストーカーは、今仲を除いて五人。
その全員が結託して復讐を計画したということになる。
「なによいきなり!男がぞろぞろ武器持って女襲おうとか恥ずかしく無いわけ!」
「おいおい、喚くなよクソ女!こっちの方が立ち場が上だってこと忘れてないだろうな?」
こいつは、昼休みに岡田と揉めていた男子生徒か。
「あれ?お前、昼休みに邪魔してくれた奴じゃねーか。」
やべぇー、やっぱりあのこと根に持ってたよ。
ここは誰も証言者がいない空きビル。
学校では大人しく身を引いたが、今回も同じようにしてくれるとは限らない。
「ちょっと趣旨とされるけどお前も一遍殴られろや!」
鉄パイプを振りかざしながら走ってくる。
ふっ。大振り過ぎるが故に脇が甘いぞ。
それが分かっていたところで、俺の身体能力では何か出来るわけじゃないけどな。
鉄パイプで殴られたことはないが、今まで散々殴られて来たんだから俺の耐久力を信じよう。
「それ、人殴る道具じゃないけど?」
間一髪のところで古東の前蹴りが鉄パイプを吹き飛ばす。
めっちゃカッコ良過ぎる。俺が女なら惚れてたな。
「薔薇姫!?こんな場所になんの用事があるんだよ!」
「それってお前らに関係ある?」
「クソッ!薔薇姫が暴れ出す前に岡田だけでも殴り飛ばしてやるよ!」
古東が俺を守ってくれたので、岡田との距離が離れてしまっている。
どう考えても助け出すのは不可能だ。
それでも体が動いている古東は流石としか言えない。
「死ねぇー!クソ女がぁーー!!!」
「きゃあーーーー!!!」
金属バットは止められることなく振り切られてしまった。
絶対に人からなってはいけない鈍い音が何もない空間に響く。
岡田の顔は真っ青になっている。
しかし、彼女自体は全くの無傷だ。
バットで殴られたのは今仲だった。
どうしてそんなことをしたのか。
俺は全くもって理解できなかったが、恐らくそれは恋愛感情から生まれた行動。
自分の身を犠牲にしてまでも守りたいと思ったのか。
両腕で顔を殴られることは防いだが、腕の骨折ぐらいにはなっているだろう。
なんとか守り切った安心感と殴られた衝撃の痛みから地面に倒れ込む。
急いで救急車へ連絡をした。
これぐらいなら俺にだって出来るからな。
「お前ら覚悟出来てるんだろうな。誰一人として逃さないから。」
今仲が倒れたのを見て、古東の怒りは限界を超えた。
その後の惨状は思い出したくないほど圧倒的に勝ったのは言うまでもない。
目の前で壮絶な喧嘩が行われているが、岡田と今仲の二人だけはまるで別の世界にいるようだった。
痛みで動けない今仲の横に気力を抜かれたようにペタリと座り込む岡田。
何度も「どうして」と「ごめんね」を繰り返している。
涙がぽろぽろと零れ落ちるところを見て、痛みの限界が来て喋るのも辛いはずの今仲が喋った。
「泣かないで・・・ください・・よ。僕・・・ちゃんと守れたから、どこも怪我・・してないでしょ?」
「分かんないわよ。分かんないけど涙が止まらないの。・・・なんでこんな無茶すんのよ。」
「好きな子の前でくらい・・・格好付けたいですから。あの日僕を・・・僕を見つけ出してくれた貴方の前で。」
救急車が到着するまでに時間は掛からなかった。
それでも時間が長く感じたのは、焦りによる不安からだろう。
どうして空きビルの中でこんなことになっているんだと大人には問い詰められたが、今仲の傷と倒れている奴らが武器を持っていたことから怒られることはなかった。
もちろん学校側にも連絡は行くだろうが、正当防衛なので大したお咎めにはしないよう言ってくれるようだ。
「ごめん!遅れてしまった。」
「糸井部長。・・・お疲れ様です。」
俺も古東も喋る元気すら湧いて来なかった。
「後は任せて欲しい。対応は僕が全部するから。」
「今回の件で貴方達は良くやったわ。本当にお疲れ様。気を付けて帰るのよ。」
恋愛支援部に入部して最初にこなす相談が、まさかこんなことになるとは。
家まで向かう帰り道が途中まで同じらしく古東と帰ることに。
さっきの今仲の顔がフラッシュバックする。
まさに悔いのない顔だった。
いつか俺にもそんな風に思える相手が見つかるのだろうか。
これは後日談になるが、遅れて来た二人は俺達が無鉄砲に出て行った後に色々と根回しをしてくれていたらしい。
おかげで全くの話題に上がることもなかった。
俺も古東も、そして岡田、今仲も問題なく学校に通えている。
最近では中庭を通ると、腕を怪我した少年とそれを介抱する少女が仲良く昼食を食べている姿が見られる。
本人同士が納得しているならそれが一番だろう。
俺はそう思いながら、屋上で弁当を食べている。
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