文化祭前日
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「……よし、あとは明日の本番を待つだけっスね!」
文化祭前日、体育館で最後のリハーサルを終え、僕は言葉では言いづらいような満足感のようなものを感じていた。
なんだかんだこの一か月真面目に部活をやってしまった。
先週くらいからは美術部の方を終わらせた一葉さんも参加してくれて、すべてはとんとん拍子に進んだ。
出演者は、部長と鬼瓦と鉦緒さん。
疑っていたわけではないけれど、部長はやたら演技がうまく、舞台の上だととても小学生のようには見えなかった。それに鬼瓦も台詞の言い回しとかが器用で、役者ぶりが案外板についていた。
鉦緒さんは……まあ、最初に比べるとかなりうまくなった。これ以上はノーコメントで。
僕が振りを当てた殺陣のシーンも(そもそも無理してこんなシーン入れなくてよかった気もするが)、人に見せられるレベルにはなった気がする。
そんな僕は、当日手伝いに来てくれる一葉さんと一緒に照明を担当することになった。
ちなみに音響係は高天原さんだ。
「きっとうまくいきますよ、部長」
「そう言ってくれると心強いっス、佐藤君。君も明日はミスのないように頼むッスよ?」
「当然です。練習しましたから」
「よーし、それじゃ諸君、明日の本番に向けて今日はゆっくり休むっス! では解散!」
部長の声を最後に僕らは体育館を出た。
運動場の方では明日の文化祭に向けた準備がまだ続けられており、飾りつけや出店の看板が立ち並んでいた。
「真くん、明日は頑張りましょうね!」
僕の隣で一葉さんが言う。
「もちろん。最後のリハーサルはかなりうまくいったし、明日も大丈夫だと思うよ。ほら、一葉さんが仕上げてくれた舞台のセットとか背景とかもすごく良かったし」
「お役に立ててうれしいです。そうだ真くん、演劇部の発表が終わった後はお暇ですか?」
「うん? まあ、クラスの出店の仕事がある以外は暇だね。適当にその辺を回ってみようとは思ってるけど」
僕が言うと、一葉さんは顔を輝かせた。
「そうですか! それはちょうど良かったです! 私も出店を回りたいなーって思ってたんです! 一緒に行きませんか?」
「もちろん。っていうか」
「なんですか?」
「一葉さんにそう言われなくても、誘うつもりだったっていうか……」
やべー。
だんだん恥ずかしくなってきた。
隣では一葉さんも顔を赤くしている。
「もう、真くん……」
「あーあーあーあー、聞いてられねーっスわ、ほんとっ!」
大きな声で割り込んできたのは部長だった。
ぎょっとして振り返ると、演劇部の面々がまだそこにいた。
「な、なんでここに!?」
ため息をついたのは高天原さんだ。
「勝手に二人だけの世界に入って行ったのはあなたたちの方でしょう? まったく、呆れるわチョロロ木くん」
「だ、誰がチョロロ木だ! 一体何の用ですか!?」
「明日の本番に向けて景気づけに行くっスよ! うちで焼肉するッス!」
「ぶ、部長の家で!?」
「ほら、四の五の言ってねェでついて来いよ」
鬼瓦につまみ上げられる僕を見て、一葉さんが笑う。
……僕今、なんだか幸せかもしれない。
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