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鬼瓦の圧力



※※※



 放課後になった。


 僕は苔河先輩たち演劇部のメンバーが待つ空き教室へ向かった。


「ちわー、どうも」

「遅いっスよ佐藤君! 文化祭へ向けた戦いは既に始まっているっス!」

「……だと思って、助っ人を連れてきましたよ」

「助っ人? ……さては舞台美術の?」

「そうです。紹介します。一葉さん、入って来て」


 僕の声を合図に、一葉さんが教室のドアを開けて顔を覗かせた。


「こ、こんにちは。美術部の東桂木です。あなたが部長さんですか?」

「そうっス! 私こそが演劇部部長、苔河汀18歳っス! ……佐藤君」

「なんですか先輩、そんなに袖を引っ張らないでください」

「どこであんな可愛い子を引っかけて来たっスか!? いくら払ったっスか!?」

「誤解を生むようなことは言わないでくださいよ。同じクラスなんです。僕らの劇を手伝ってくれるそうですよ」

「そうっスかそうっスか、それは頼もしいっスね! ぜひともよろしくお願いするっス!」


 苔河先輩は上機嫌な足取りで一葉さんの方へ歩いていき、彼女と握手を交わした。


「はい、よろしくお願いしますね。ところで、どうして小学生が高校に……」

「誰が小学生っスか! っていうかそのくだりはもう終わったっス!」


 さすが一葉さん、ボケもイケるぜ!


「えーと、私も美術部があるので今すぐに取り掛かれるというわけではないのですが、一応打ち合わせだけでもと思って伺いました。演出担当の方はどなたですか?」


 演出担当……だと?


 また僕の分からない単語が出て来た。


「そうっスね、暫定的に脚本の高天原さんっスかね?」

「部長、私も舞台関係はほとんど素人です。先達の意見も伺いたく思いますが」

「よし、そういうことなら私と高天原さんの二人が演出っス。さあ東桂木さん、こちらへ」

「あ、部長」


 僕は部長を呼び止めた。


「なんスか佐藤君?」

「一応もうひとり連れて来たんですけど。男性役に」

「……そんなに劇に出たくないんスか? 頑固っスねえ!? で、その人はどこっスか?」

「多分そろそろ来るはずですけど」


 僕が背後へ顔を向けた瞬間、タイミングよくドアが開いた。


「おぅ、演劇部ってのはここかァ?」


 ドアの向こうから姿を現した大柄な人影に、鉦緒さんが小さく悲鳴を上げるのが聞こえた。 


「よく来てくれたね鬼瓦。待ってたよ」

「お前には借りがあるからよォ、頼まれごとは断れねえんだ」

「さ、佐藤君、こちらの方は?」


 震える声で部長が言う。


「鬼瓦権蔵くん、同級生です。僕の代役をやってもらおうと思って連れてきました」

「鬼瓦だ、よろしくな」



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