この頃不幸な男の子
「……ファミレスに行くんだろ?」
「うん! いこ、シン!」
世奈が僕の右手を握る。
鍛えているからか、その手の感触は一葉さんとは違っていた。
だけど柔らかかった。
そして、思っていたよりも小さかった。
この手が鬼瓦を一発で昏倒させ、僕を何度も痛めつけて来たなんて想像つかないよな。
なんて考え事をしていたのがいけなかった。
ヤバいと思った時には、既に僕の肩が通りすがりの男の人にぶつかっていた。
「痛えな、てめえ」
アロハシャツを着た大柄なその男性はすぐに立ち止まり、凄みのある声で僕に怒鳴った。
うわー怖、眉毛無いよこの人!
昨日の鬼瓦といい、最近変な人に絡まれてばっかりだよな僕!?
「す、すみません、ぼうっとしてて」
男は一人ではなかったようで、彼のツレらしきガラの悪い連中が僕らを取り囲んだ。
なかなかマズい状況になって来た。
「すみませんで済むなら警察は要らねえんだよ! ナメたことしやがってよ、このガキが!」
いやむしろ警察を呼んでくれ!
「はっ、肩がぶつかったぐらいでバカじゃないの?」
そして僕の隣には、男を鼻で笑いつつ侮蔑と挑発の混じったような声で相手の怒りを煽る大馬鹿が若干壱名。
「何だてめえ……このガキの連れかよ。おいおい、なかなか可愛い顔してるじゃねえか。こんなガキ放っといて俺達と遊ぼうぜ」
「あいにく、サルの集団と遊んであげられるほどあたしも暇じゃないのよ」
「な―――ッ! 言いやがったな!?」
男が世奈に向かって拳を振り上げる。
よせ、そんなことしたら―――!
「やめろ!」
僕はありったけの声で怒鳴り、男と世奈の間に体を滑り込ませた。
男が手を止め、こちらを見る。
「今なんつった、ガキ?」
「やめろって言ったんだ! そんなことをしたらただじゃ済まないぞ!」
「……おい、聞いたか? ただじゃ済まないんだそうだ」
茶化すような男の喋り方に、仲間たちが笑う。
「笑い事じゃない。あんたたち、下手したら病院送りどころじゃないぞ」
「面白え。やれるもんならやってみろよ! ほらかかってこい、ガキ!」
小馬鹿にしたように、僕に対し拳を構える男。
「……え?」
「だから、かかってこいっつってんだ。ただじゃ済まないんだろ?」
「あんたたち、何を言ってるんだ?」
「ああ? お前が俺たちを病院送りにしてくれるんだろ?」
「誰がそんなこと言った?」
「え?」
「……え?」
一瞬の場の膠着。
こいつら、僕が戦うと思ったのか?
戦うのは僕の隣に立っているア〇ドーラ・ザ・ブッチャーもびっくりな暴力女に決まってるじゃないか。
しかし、この膠着した状況はチャンスだ。見逃すわけには行かない。
「あーっ! 警察だぁ!」
あらぬ方向を指さし、僕は力の限り叫んだ。
男たちが僕の指さした方を振り向く。
僕はそのタイミングを見逃さず、世奈の手を引きその場を急速離脱した。
※※※
蛇足な元ネタ解説!
※1 アブ〇ーラ・ザ・ブッチャー
プロレス界を代表する悪役レスラー。ジャイ〇ント馬場のライバル的存在。
次回もサービスサービスぅ!




