だが断・・・れない!
※※※
「いやー、結構面白かったわね!」
映画館から出た瞬間、世奈は開口一番そう言った。
「あ、ああ、そうだね……」
「公開が延期になった上に監督が全然別の怪獣映画を作り始めたときはどうなるかと思ったけど、無事に完結して本当に良かった! アニメ界の歴史に名を刻むこと間違いなしの名作だったわ! あ、そういえばあんたの名前がタイトルに入ってたわね。 ちょっとした運命だわ!」
「そ、そうかもね……」
一方の僕は世奈のことが気がかりで映画どころではなかった。
世奈が僕のことを好きだなんて、万に一つもあり得ないと思っていたからだ。
ということはアレか、今まで僕にやってきたことは愛情の裏返し的な奴だったのか?
こっちはそれで何度も死にかけてるんですけど……?
「どうしたの、元気ないじゃない?」
気が付くと、世奈が僕の顔を覗き込んでいた。
世奈の大きくてきらきらした瞳がこっちを見ている。
僕は思わず視線を逸らしていた。
「い、いや、何でもないよ」
「昨日の喧嘩? どこか痛む?」
そう言いながら、世奈は両手で僕の体中を触り始めた。
今まで世奈に触られた時に感じていた危機感のようなものとは違う、妙な感覚が僕の胸を襲った。
なぜか顔が熱くなる。
急に周りの視線が気になり始めた僕は、思わず世奈の手を掴んでいた。
「や、やめろよ世奈。人前だぜ」
「でも、怪我してたらいけないし」
「大丈夫、怪我はしてないから。傷の治りは早いんだ、僕」
誰かさんのおかげでね!
「そう? まあ、そうよね。でもそれじゃあどうして元気がないの?」
「えーと、それは」
今ここで言ってしまうか?
僕と一葉さんが付き合っていることを。
だけどそうなったときに世奈が暴れだしたら手が付けられないよな……。
「あ、分かった!」
突然世奈が大きな声を出す。
「な、何が!?」
「おなか空いてるんでしょ! シン、朝から何も食べてないものね! この近くにファミレスあったでしょ、お昼ご飯奢ってあげるわよ」
「……急にどうしたんだよ、やけに親切だな」
「あんたの大切なもの、失くしちゃったからね。借りは返さなきゃ気が済まないのよ」
「でもあれは世奈が見つけてくれただろ」
「それはそれ、これはこれよ。ほら行きましょう!」
世奈に手を取られ、僕は走り始めた。
こんなことしてていいのかなあ、僕。
これじゃまるで世奈を騙してるみたいじゃないか。
確かに世奈は僕にひどいことをいっぱいしてきたけど、だからってこんなやり方でこいつを傷つけるのは間違っている気がする。
「あの、世奈」
僕の声に世奈は足を止め、僕の方を振り返った。
「また呼んでくれた」
「え?」
「世奈って呼んでくれた!」
幸せではち切れそうな笑みを浮かべる世奈を見て、僕はもう何も言えなかった。




