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[隔週更新]「女みたい」と笑われた僕ですが、美少女VTuberとして配信したら毎日が楽しくなりました。  作者: 双葉アリア


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14/17

14話 初めての配信

今回は初配信回です!

挿絵(By みてみん)


『かわいい!!』


『声かわっ!』


『やっぱ妹ちゃん!?』


『初々しくてかわいい』


『百合花先生ありがとう』


『動いてるゆのちゃんかわいい!』


「…………」


コメントが。


速い。


「えっ、ちょ、ちょっと待って!」


読もうとしたコメントが、次の瞬間には上へ流れていく。


『待ってって言われたwww』


『かわいい』


『初配信って感じする』


『「待って」って言われて止まる俺達ではないwww』


『読めるものなら読んでみなwww』


「なんでちょっと楽しんでるの!?」


またコメントを読もうとする。


でも。


『ゆのちゃんかわいい』


『声好き』


『緊張してる?』


『百合花先生見てるー?』


『自己紹介はよ』


「む、無理! 速すぎる!」


思わず後ろを振り返る。


「お姉ちゃん! これどうやって読むの!?」


「全部読もうとしなくていいんだよー」


「先に言ってよ!」


『お姉ちゃん!?』


『今お姉ちゃんって言った?』


『百合花先生いるの!?』


『妹確定キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!』


『姉妹てぇてぇ』


「…………」


ん?


なんで妹確定になったの?


「と......とりあえず自己紹介するね!」


「私、白雪ゆのって言います! 皆よろしくね!」


『ゆのちゃーーーーーーん!!!!!!』


『百合花先生はなんて罪な物を作ってしまったんだ!!!』


『全裸待機しててよかった!』


「服は着てよ!!!」


僕のツッコミが炸裂する。


『ツッコミ草』


『反応良すぎるwww』


『初配信で全裸ニキを叱る新人』


『ごめんなさい服着ます』


『↑お前だったのかよ』


『百合花先生、この子面白いぞwww』


「とりあえず、今日は他のVtuberさんみたいにファンネームとか決めた後に質問コーナーをするね!」


『待ってました!!』


「じゃあ、まずファンネームから決めるね!」


『雪民』


『アカンw』


『ホロガールズから怒られろwww』


「雪民って白花ユミィさんのファンネームだよね!?」


『知ってた』


『ゆのちゃんV詳しい?』


『即答で草』


『じゃあ雪だるま』


「みんな雪だるまになるの?」


『冬以外消滅するファン』


『春になったら引退します』


「溶けないで!?」


『ゆの民』


『普通にあり』


『ゆのっこ』


『かわいい』


『ゆきんこ』


『お』


『ゆきんこ可愛くない?』


『ゆのちゃんのゆきんこ』


「ゆきんこ……」


その名前を口にしてみる。


なんだか、すごく可愛い。


白雪ゆのの『雪』にも合っているし、呼びやすい。


「私、これ好きかも!」


そう言うとコメント欄の流れが一気に加速する。


『じゃあ決定!』


『うぉぉぉ!!』


『古参ゆきんこです!』


「開始2分で古参を名乗らないで!?」


『草w』


花園百合花『私のかわいいゆのちゃんをよろしくねー!』


『百合花先生!?』


「お姉ちゃん!?」


僕が後ろを振り返るとお姉ちゃんは舌を出しながらニコッとする。


「『テヘっ』じゃないよ!?」


『姉妹てぇてぇ』


『百合花先生も配信に出て!』


『姉妹コラボはよ』


花園百合花『そのうちねー!』


「勝手に決めないで!?」


『そのうちキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!』


『言質』


『切り抜きました』


「早いよ!!」


なんなの、この人たち。


配信が始まってまだ数分しか経っていないのに、もう完全に振り回されている気がする。


でも。


「…………ふふっ」


不思議と、嫌じゃなかった。


むしろ。


ちょっと楽しい。


「じゃ、じゃあ! ファンネームは『ゆきんこ』で決定!」


『わーい!』


『ゆきんこ爆誕』


『古参ゆきんこです』


「だから古参になるの早いって!」


『www』


その後まったりと推しマーク等を決めていたらあっという間に1時間が経過していた。


「それじゃあ最後に! 質問コーナーやるよー!」


『待ってましたー!』


『あっという間だねー!』


「今回は、お姉ちゃんのアカウントに届いた物の中からAtelierAIで無作為に選んだ質問に答えていくよー!」


そう言ってもう1個のモニターに表示されている質問に目を通す。


「百合花先生から一言お願いします!!」


そう言うとお姉ちゃんがマイクに近づきーー


「次回のコミケは、ゆのちゃんの薄い本書くねー!」


「なんで!?」


『!?』


『公式薄い本キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!』


『百合花先生!?!?』


『身内だよね!?』


『先生それは大丈夫なんですかwww』


『全年齢ですよね???』


「そうだよ! 私の薄い本なんて需要ないからね!?」


「需要しかないと思うよ?」


「お姉ちゃん!?」


『ゆのちゃん困惑してて草www』


『草超えて森超えてモーリーランドwww』


『百合花先生が一番欲しがってる説』


『先生「需要しかない(私に)」』


『家族強火勢』


「お姉ちゃんが一番の需要なの!?」


「もちろん!」


「即答しないでよ!!」


『てぇてぇ』


『仲良すぎだろwww』


『百合花先生限界化してて草』


「もう! 次の質問!」


これ以上この話を続けると、本当に次のコミケで何か出されそうなので、強引に次の質問へ進む。


「えーっと、次は……」


モニターに表示された質問を読む。


「『ゆのちゃんがVTuberになろうと思ったきっかけはなんですか?』」


「…………」


今度は、さっきまでとは違う意味で言葉が止まった。


「最初は……お姉ちゃんが、やってみない?って言ってくれたのがきっかけかな」


「それまでの私は、自分の声とか……見た目とか、あんまり好きじゃなくて」


『え?』


『こんなにかわいいのに?』


『声めっちゃ好きだけど』


「…………」


こんなに、かわいいのに。


声、好き。


学校では、まったく違う意味で言われていた言葉だった。


『もしかしてイジメ?』


「詳しいことは想像に任せるね!」


『ゆのちゃんをイジメるやつはタンスに小指をぶつけて悶絶すればいいのにwww』


『◯ねと言わないお前が好きだwww』


『じゃあ私はレゴ踏む呪いかけとく』


『それは重罪だろ』


『人の心とかないんか?』


「ふふっ……」


思わず笑ってしまった。


「みんな、ありがとう。でもレゴはやめてあげて?」


『優しい』


『ゆのちゃん優しい』


『じゃあ小指だけで』


「そっちもダメだよ!?」


『www』


コメント欄が、また一気に流れていく。


さっきまで少しだけ重くなっていた胸が、不思議と軽くなっていた。


同じ声なのに。


同じ僕なのに。


あの場所では、笑われた。


でも、ここでは――。


『声ほんと好き』


『ゆのちゃんかわいいぞー!』


『これから応援する!』


「…………ありがとう」


僕は画面に映る白雪ゆのと一緒に笑った。


「それじゃあ、次の質問にいくね!」


「ゆのちゃんのスリーサイズと今日のパンツの色を教えてください!」


『おいw誰だよクソみたいな質問したやつはwww』


『セクハラで草www』


「回答は差し控えさせていただきます」


『ゆのちゃんの真顔がwww』


『急に記者会見になったwww』


『先ほどまでとの温度差よ』


「次!」


『切り替え早っwww』


「えーっと……『今後やってみたい配信はありますか?』」


「あ、これはちゃんとした質問だ!」


「ゲームの配信とかもやりたいけど、お料理配信もやりたいかなー?」


花園百合花『私の分もよろしくー』


『百合花先生はゆのちゃんを見習ってもろてwww』


『百合の花を咲かせるより料理を勉強してくれwww』


花園百合花『ゆのちゃんを連れて行くから問題なし!』


『大問題だわ!!!』


「それはそれで気まずいんだけど!?」


後ろを振り返ると、お姉ちゃんもお父さんも大爆笑している。


「もう! 2人とも笑わないでよ!」


「いや、千尋が思った以上に配信向きでな」


「うんうん。私もびっくりしてる」


「私は普通に喋ってるだけなんだけど!?」


『普通に喋ってこれなの草』


『天然だったか』


『百合花先生の家族だぞ?』


『説得力しかない』


「どういう意味!?」


花園百合花『どういう意味!?』


「お姉ちゃんは自覚持って!!」


『www』


「じゃあ最後の質問に答えるね!」


そう言って画面を見ると、とんでもない質問だった。


「『ゆのちゃんをお嫁さんに貰う方法を教えてください!』」


『AI仕事しろwww』


『よりによって最後それかよwww』


「ご視聴ありがとうございましたー!」


『逃げたwww』


『初日が強制終了は草www』


『回答拒否www』


『またねー!』


『ゆのちゃんまたねー!』


『初配信楽しかった!』


『次の配信も絶対見る!』


「もう! それじゃあ、ゆきんこのみんな!」


「今日は来てくれて本当にありがとう!」


「また次の配信で会おうね!」


『またねー!』


『おつゆのー!』


『おつゆの!』


『おつゆのー!』


「おつゆの……?」


なにそれ?


『今決まった』


『本日の配信終了挨拶:おつゆの』


『採用』


「勝手に決めないでよ!?」


『おつゆのー!』


『おつゆのー!』


『おつゆのー!』


「もう!」


だけど。


気づけば僕も笑っていた。


「……おつゆのー!」


そう言って、配信終了のボタンを押す。


画面が切り替わった。


「…………」


急に静かになった部屋で、僕は椅子の背もたれに身体を預ける。


「終わったぁ……」


「お疲れー!」


後ろから、お姉ちゃんが僕に抱きついてきた。


「千尋、すっごくよかったよ!」


「本当に……?」


「ああ」


お父さんも笑って頷く。


「初配信とは思えないくらいだったぞ」


「ほとんどコメントに振り回されてただけなんだけど……」


「それが面白かったんじゃない?」


「そうなのかな……」


僕はもう1度モニターを見る。


配信は終わった。


さっきまであんなに速く流れていたコメントも、もうない。


緊張した。


何度も焦った。


何を喋ったのか、もう半分くらい覚えていない。


それでも。


『かわいい』


『声好き』


『また見る』


そんな言葉だけは、不思議なくらい頭に残っていた。


学校では嫌だった僕の声を。


僕自身が好きになれなかった僕の姿を。


今日、たくさんの人が笑わずに受け入れてくれた。


「……楽しかった」


自然と、その言葉が口からこぼれた。


「僕、また配信したい」


お姉ちゃんが嬉しそうに笑った。


「じゃあ、次の配信も決まりだね!」


「うん!」


こうして。


白雪ゆのとしての、初めての配信は終わった。


まだ僕は知らなかった。


この初配信が――。


僕の知らないところでも、とんでもない盛り上がりを見せていたことを。


ーー明日香視点


「…………」


配信終了。


そう表示された画面を、私はしばらく見つめていた。


画面にはもう、白雪ゆのの姿はない。


「……千尋ちゃん」


最初は、信じられなかった。


真由お姉ちゃんのイラストレーターとしてのアカウントがトレンド入りしていたので、何事だろうと思って見てみた。


そこには、初めてVTuberのイラストを担当したことが書かれていた。


真由お姉ちゃんの絵は有名だ。


だから、それだけなら特に驚かなかった。


けれど――。


『しかも今回は家族です!』


その一行だけは、何度も読み返した。


「家族……? まさかね」


そう思いながらも、気になって初配信を開いた。


そして。


『みんなー! 初めましてー! 白雪ゆのです!!』


声を聞いた瞬間に分かった。


若干いつもより声のトーンは高かったけれど。


間違えるはずがない。


白雪ゆのは――千尋ちゃんだ。


それに。


配信を見ていた人たちは誰も気づいていなかったけれど。


『いや、千尋が思った以上に配信向きでな』


お父さんらしき人の声。


その直後もコメント欄は流れ続けていた。


『普通に喋ってこれなの草』


『天然だったか』


『百合花先生の家族だぞ?』


誰も。


『千尋』という名前には反応していなかった。


「……危なっかしいなぁ」


思わず苦笑する。


でも。


学校で見ていた千尋ちゃんとは、全然違った。


コメントに振り回されて。


変なコメントにツッコんで。


お姉ちゃんに振り回されて。


それでも、ずっと楽しそうに笑っていた。


「…………」


私はアーカイブを少しだけ巻き戻す。


『服は着てよ!!!』


「ふふっ」


こんな千尋ちゃん。


初めて見た。


「……楽しそうで、よかった」


それだけで。


今は十分だった。


白雪ゆのが千尋ちゃんだということも。


千尋ちゃんが男の子だということも。


私が誰かに言うことじゃない。


「チャンネル登録っと」


登録ボタンを押す。


「次も見よ」


そして私は、そっと画面を閉じた。


ーー???視点


「…………」


配信が終わった。


「…………」


私は無言でマウスを操作する。


白雪ゆの。


チャンネル登録。


通知。


すべて。


ON。


「…………かわいい」


もう1度、アーカイブを開く。


『みんなー! 初めましてー! 白雪ゆのです!!』


「かわいい」


少し進める。


『服は着てよ!!!』


「かわいい」


さらに進める。


『溶けないで!?』


「…………かわいい」


気づけば私は、同じところを何度も再生していた。


「何この子……」


新人VTuber。


白雪ゆの。


百合花先生がデザインした、家族らしい。


それ以外は、まだほとんど分からない。


だけど。


「…………好き」


初配信を見ただけなのに。


とんでもない子を見つけてしまった気がする。


私は自分のキラキラッターを開いた。


そして――。


『新人VTuberの白雪ゆのちゃん、めちゃくちゃかわいい』


投稿。


数秒後。


『え、○○が新人紹介するの珍しくない?』


『誰?』


『○○のお墨付き!?』


『見てくる』


次々に反応が届く。


そんなものには目もくれず。


私はもう1度アーカイブを再生した。


『服は着てよ!!!』


「…………かわいい」


この時の私は、まだ知らなかった。


この新人VTuberが。


数ヶ月後――。


私の配信を見ているリスナーたちから、


「またゆのちゃんの話してる……」


と呆れられるほどの存在になることを。


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