表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しに夢中  作者: 虚月 悠奈


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/41

22.推しの好きな食べ物②

「コーヒー!?」


恵が華の心の中の声とリンクするように叫んだ。

杏が声の大きさに驚きつつも、ヴォイド、華、恵の目を順に見る。


「うん、多分ね。」


華はテーブルに目を向ける。

今視界に映っているのは、私たち3人が作ったカレー3種。

ナン。

福神漬け。

サラダ。

水の入ったコップ。

口の中が辛くなった時のための牛乳。

コーヒー要素なんて全くなかった。

強いていえば食後にいつも通りコーヒーを淹れようかなと思っていたぐらい。


「華ちゃんと恵ちゃん、カレー作る時、何を材料にしてた?ちなみに私は市販の甘口カレー粉に人参、じゃがいも、玉ねぎ、そして隠し味にリンゴとはちみつ。」

「私は杏さんみたいに凝ったものは入れてなくて、普通に中辛と辛口のカレー粉を混ぜました……。」

「私は……」


先程隠し味は内緒と言っていた恵は、材料を聞かれてもごもごとする。


「コーヒーでしょ。」


言いながら杏は、キッチンの棚に並べてあるコーヒーの粉が入った瓶を手に掲げた。


「……そう。杏さんよく分かったね……。」


───コーヒー?なんでそんなに言い淀んでるの?確かに隠し味にコーヒーって聞いたことある気がする。


「だよね。ヴォイドさんがよく飲んでるコーヒーの粉がやけに減ってるなぁ。買い足さなきゃ。と思ったんだよね。やっぱりカレーに混ぜてたんだね。」


杏の名推理は続く。


「それで、ヴォイドさんがカレー食べてるところを観察してたら、恵ちゃんが作ったカレーを食べた時だけ若干表情が違うというか……。それで、あぁこのカレー、というか隠し味のコーヒーが好きなんだなって。」


珍しいことに、杏の言葉にヴォイドも耳を傾けている。

自身ですら気付いていなかったようだ。


「よくよく考えたらヴォイドさんいつもコーヒー飲んでるしね。他の幹部たちもよく飲んでるなら、ヴォイドさんがって言うより、魔族がコーヒーを好むのかもしれないけど。」

「ノアはコーヒー飲んでいるところあんまり見た事ないです。プロテインばっかり飲んでる。」

「あー、確かに。泊めてもらってた時もプロテインをよく片手に持ってたような。」


といった流れで、華は推しの好物を知ることができた。

美味しいコーヒーの入れ方を勉強しようかなぁなどと考えながら華は眠りにつく。

次の日目覚めると甘くていい香りが部屋に漂ってきていた。

華が時計を見ると既にお昼すぎ。

杏が寝ているはずの隣のベッドは、もぬけの殻だった。

華は慌てて布団から出て、リビングに向かう。


「あ、華ちゃんおはよ〜」

「おはよう、華ちゃん」

「2人ともおはよう!なんかめちゃくちゃ寝ちゃってた。とってもいい香りがするんだけど……」

「そう!お菓子作ったの!もうすぐ食べられるよ〜。華ちゃんも食べられそうならぜひ!」


華が、顔を洗って戻ってくると、既にダイニングテーブルにスイーツが並べられている。

スコーンやプリン、ケーキ、サンドイッチである。

それらはスリーティアーズに盛り付けられている。

これは所謂。


「アフタヌーンティ?」

「そう!ヌン活しよ!」

「朝から?」

「あははっ、もうお昼だよ、お寝坊さん。」


杏に言われて少し顔を赤くする華。

杏と恵に促されて、席に着いた。

驚くべきことに、華の斜め前にはヴォイドが座っている。


───すごい、最近ずっとご飯一緒に食べてくれてる。夢見たい。


華はヴォイドのことが直視できず、少し俯きがちになる。

それでも視界の端ではとらえ続けた。


「「「いただきまーす!」」」

「すごい、まだあったかい。美味しい〜!」

「ほんと、上手くできてよかった!」


華はスイーツを一口食べてすぐに気がついた。

このスイーツは全て材料にコーヒーが含まれている。

お菓子を作った理由が分かり、華はなんとも言えない複雑な気持ちになった。


「恵ちゃん、スイーツ作るの得意なんだね。ほんとにお店のものみたいに美味しい。」

「杏さんが手伝ってくれたから!華ちゃんも今度早起きした時は一緒に作ろうね!」


恵の屈託ない笑顔が華に向けられる。

うんと頷きながら華も笑顔を返したが、ぎこちなくなってないか不安だった。

視界の端でヴォイドの様子を伺う。

女子3人みたいにはしゃいではいないが、黙々とスイーツを口に運んでいるのを見る限り、お気に召したのだろう。


───スイーツに夢中になってる?推し可愛い。


ヴォイドの隣に座る恵の表情は本当に幸せそうで、輝いて見えた。


「ヴォイドさん、どうですか?美味しいです?自信作なんです!」


素敵な笑顔を今度はヴォイドに向けながら、恵は感想を聞いた。


「ああ。……おいしい。」


「「え︎︎゛っっっつつ!?」」


華と恵の叫び声が重なる。

杏は2人の声に驚いて目を見開いた。


華と恵は目を合わせる。


───ヴォイドが「おいしい」って言うなんて。


乙女ゲームの世界でそのようなワードをヴォイドが口にしたことはない。

新規レアボイスが聞けたと、2人は声に出さずに語り合っていた。


恵は嬉しさで上機嫌になり、より一層深めた笑みで残りのスイーツもどんどん平らげる。

そのみごとな食べっぷりと心からの嬉しさが滲み出た姿に、華はクラクラとした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ