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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
6章 悪党は世界の全ての敵となる
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第8話

王都ギルド協会本部。

ソフィアは朝刊を見て考えを巡らせた。


これだけの事件。

必ず国王からの依頼が来る。

その依頼に当てるギルドを選出していた。


「ソフィア会長。

お客様です」


職員の一人が会長室に入ってくる。


「今それどころじゃないの。

申し訳無いけど、要件だけ聞いて来てくれるかしら?」


「しかし……」


「ガハハハハ!

もう来ちまった!」


豪快な笑い声と共にネズカンが会長室へずかずかと入って来る。


ソフィアはその顔を見て深い溜息を吐いた。


「もう下がっていいぞ。

案内ありがとな」


「勝手にうちの職員に命令しないでくれる?

ごめんなさいね。

もう下がっていいわ。

あとお茶も何も出さなくていいから」


職員は一礼してから部屋の外へ出て行った。


「おいおい。

お茶ぐらい出してくれてもいいではないか」


「追い出され無いだけマシと思ってくれるかしら?

って、このやり取り何回やれば気が済むわけ?」


「そうカリカリするとせっかくの美人が――」


「無理矢理方向修正するな!」


ソフィアは再び深いため息を吐く。


「なにをそんなため息を吐くことがある?

先日の件はとりあえずは片付いたのだろ?」


「あなたも朝刊を見たでしょ?」


「見たぞ。

新しくオシャレなレストランがオープンするみたいじゃないか。

約束のディナーはそこでどうかな?」


「違うわよ!」


怒鳴るソフィアをネズカンはいつもの調子で豪快に笑い飛ばす。

ソフィアは頭痛を覚えて頭を抑える。


「わかってるでしょ。

この一面よ。

これだけの大事になってるのよ。

国王様から――」


「来ないぞ」


「そんなわけ……

まさか!」


「そのまさかだ。

儂が止めた」


またもや豪快に笑うネズカンにソフィアは開いた口が塞がらない。


「なんでそんな事したのよ」


「別に何も問題無かろ?」


「そ、それは、そうだけど……」


ソフィアは口籠る。

彼女の中で小さな悔しさが生まれた。


「もしかしてだが、弔合戦でもしようと思っていたのか?」


「違うわよ」


「やめておけ」


「だから――」


「ギルドと言うのは基本は依頼があってから動く組織だ。

それが弱みであり強みでもある。

ナイトメア・ルミナスに関する依頼は全て断れ」


ネズカンの真剣な声にもソフィアは怯む。

だがすぐに毅然とした態度で言い返す。


「そうはいかない。

私達は依頼に対して真摯に向き合う必要があるの。

内容だけで依頼を拒否なんて出来ない」


「ならSSランクにするんだな」


「馬鹿な事言わないで。

更に上のランクを作るなんて。

まだS級だって数える程しかいないのよ」


一歩も引かないソフィアにネズカンは諭すように言い聞かせる。


「ソフィアよ。

何故ギルド協会を作った?

ギルド同士の価格競争で下がる依頼料やクエストランクの詐称。

それによって次々と犠牲になるギルド員。

それを守る為に作ったのだろ?

ならギルド員を守るべきではないのか?」


「そんなに危険な奴らだとでもいうの?」


「昨晩、勇者ツバキと剣聖エルザと飲んだ」


「それはまた随分若い子と飲んでたのね」


「なんだ?

妬いてるのか?」


茶化すネズカンに、何か言い返すのも馬鹿らしくて心底軽蔑するような目で蔑む。


ネズカンはその視線に少し快感を覚えつつも本題に戻る。


「二人共今回の件で呼ばれて王都に来ている。

そして二人共ナイトメア・ルミナスとは剣を交えているそうだ。

そして二人共同じ事を言っていた。

勝てるビジョンが見えない」


「本気で言ってるの?」


「ああ、儂も耳を疑った。

だが二人共本気だった」


ソフィアはあまりの衝撃に言葉を失う。


勇者と剣聖。

ギルドランクならS級に匹敵するであろう実力者だ。

そうなってくると、今のギルド協会のメンバーでも結果は同じだろう。


「儂は国家侮辱になるかも知れんが、騎士団ではどうしようも無いと考えている。

そこに勇者と剣聖が集うとしてもだ」


「グラハム・グランドがいるでしょ?」


「逆だ、グラハム・グランドしかいないのだよ」


「なら尚更私達の協力が必要なはずよ。

今なら4大ギルドだって動かせるわ」


その言葉にネズカンは首を大きく横に振る。


「辞めておけ。

相手は裏ギルド。

どんな形であれギルド協会が動けば争いの火種になりかねん」


「私達がたった一つの裏ギルド如きに遅れを取ると言うの?」


「そうだ」


あまりにもはっきり言い切るネズカンに、ソフィアは机を叩いて怒りを露わにする。


「聞き捨てならないわ!

それは私達を舐め過ぎてる!」


「ソフィアこそ、相手を舐めていないか?」


「そんな事無いわ!

でも私達とは組織の大きさが――」


「ソフィア!」


急に大声を出したネズカンにソフィアは思わず黙る。

普段の態度からは想像出来ない迫力があった。


「儂らは知っているはずだ。

だった一人によって滅ぼされた文明がある事を」


「まさか破滅の魔道具に匹敵すると言うわけ?」


「そこまでとは言えん。

だが油断しては命取りになる。

まあ、どちらにせよ今回は依頼が無いから動けんだろ?

なら、今回の結末を見てから考えても遅くはなかろう」


ネズカンの言う通り動けない。

ソフィアはイマイチ納得出来ない気持ちを深呼吸で抑えて、ネズカンを睨んだ。


「いいわ。

今回はあなたの言うほどの相手なのか見極めさせてもらうわ」


「そうだ。

それがいい。

で、約束のディナーはいつにする?」


「そのうちね」


さっきまで言い争いにも近い雰囲気が、一瞬でいつもの雰囲気に変わる。

二人の長い付き合いが成せる空気感なのかもしれない。

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