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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
章間 悪党は決して正義にはなれない
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中編

中学生に上がっても僕は相変わらずクソガキ。

この頃にはもう僕は自分の11の美学に則って生きていた。


中学校という狭いコミニティーの中の小さなカーストで、優越に浸っている生徒にも劣等感を感じている生徒にもなれない。

ただただ馴染めずにいた。


すくすくと社会不適合者として成長していっていた。


それでも義理の家族に迷惑をかけないように義務教育だけはと、のらりくらりと過ごす日々。


学校が終われば部活はもちろん、友人なんて一人もいないから、隠れてひたすら鍛錬をしていた。

それも全ては卒業後に自由に生きる為。


おかげで転生者から習った4つの力をかなり使えるようになっていた。


義両親は職業柄正義感の強い人だった。

義姉さんも両親の血を受け継いで正義感の強い女性だった。


そんな義姉さんの将来の夢は警察官。

その為に日々努力を欠かさない出来た人間だった。


そんな戦隊ヒーローもビックリの正義の集団みたいな義理の家族だったけど、その中でも僕は上手くやっていたと思う。


そんなある日。

それは梅雨の日。


僕は学校の創立記念日で休みだった僕は、家で一人超能力の鍛錬をしていた。


昼前になると天気予報が外れて大雨が降って来た。

そして家の電話が鳴った。

隣の義母の事務所からの内線だ。


「もしもし」


「夢路。

お父さんとお姉ちゃんに傘持ってあげてくれる?」


前世の僕は夢路と言う名前だった。

この名前が本当の両親が唯一残してくれた物になる。


「いいよ。

今から行ってくる」


僕はレインコートを着て傘を二本持って家を出た。



義姉さんの通う大学はバスを使う距離だったけど、僕には関係無い。

魔力で雨を遮りながら、気力で身体強化して走った方が早い。


「さて、義姉さんはどこかな?」


大学についた僕が気配を探ろうとした時、校舎の裏から義姉さんの声が聞こえた。


「あなた達。

ここは喫煙所ではないわよ」


そっと覗いてみると、義姉さんが屯っている数名の男女に説教している。


こういうのって女一人に男数人ってのが相場だよね。


僕はこの男女を知っている。

ここら辺で幅を利かせている半グレ達だ。

なんたって僕はここら辺の悪党は全て把握している。


しかし、義姉さんの正義感の強さにも困ったものだ。

あんな奴らに一人で説教するなんて危険過ぎる。


僕は警備員を呼びに行くことにした。


「それにあなた達はまだ未成年でしょ。

タバコは辞めなさい」


「うっせえな!

お前に関係無いだろ!」


「関係あるとか無いとかの問題じゃない。

未成年の喫煙は禁止されてるの。

そんな事知らないの?」


「ああ知らないね」


「揃いも揃って残念な頭してるのね」


「なんだとコラァ!」


半グレの一人が義姉さんに掴みかかる。

義姉さんはその手を掴んで投げ飛ばした。


義姉さんは合気道の使い手だ。

だけどこの人数は分が悪い。


「やりやがったな!」


他の男共が立ち上がる。

女にやられっぱなしだと格好がつかないとか思ってるんだろうな〜

しょうもな。


「コラ!お前達!

何をやっている!」


「ヤベッ!」


僕の読んで来た警備員が現れると半グレ達は逃げていった。


「義姉さん大丈夫?」


「夢路。

どうしてここに?」


いつも通りの優しい声の義姉さんだ。


「雨降って来たから傘持って来たんだ」


「どうしようか困ってのよ。

ありがとね。

だけど〜」


義姉さんが急に怖い顔で睨む。


「義をつけるのは辞めなさいといつも言ってるでしょ。

私は正真正銘あなたのお姉さんなんだから」


「わかったよ姉さん」


「うん、よろしい」


また優しい笑顔に戻る。


全く同じ発音なのに姉さんは僕が義をつけた事を言い当てて怒る。

僕の言葉が文字にして見えるのだろうか?


「もう一本は父さんに?」


「そうだよ」


「気をつけて行ってらっしゃい」


「はーい」



義父の職場の検察庁は姉さんの大学からまたバスに乗って行かないといけない距離だ。


だけど僕は当然走っていく。


義父は検事長だったから、忙しくて少し待たされたけど無事に傘を渡せた。


「おお、夢路。

傘を届けてくれたのか。

ありがとう」


義父は僕から傘を受け取ると、大袈裟なリアクションでお礼を言った。

仕事では厳格でムスッとしているけど、家族にはいつもこんな感じだ。


「お昼はもう食べたか?」


「まだだよ」


「なら一緒に行こう。

お父さんもまだなんだ」


そう言った義父の携帯電話にメッセージが届いた。

そのメッセージで送られて来た写真を見た義父の顔色が青くなる。

そしてすぐに携帯電話が鳴った。


「ちょっとすまない」


そう言って部屋の外に出た。

冷静を装っていたが、かなり動揺している。


そりゃ、あんな写真送られて来たら冷静ではいられないね。

その写真を覗き見した僕も、怒りが湧きでている。


それは下着姿の姉さんが両腕を縛られて吊るされている写真だったからだ。


僕は義父の電話を盗み聞きする。


「はじめまして。

写真見て頂けたましたか?」


若めの男の声が携帯電話から聞こえる。


「貴様!何者だ!」


「まあ落ち着いてください。

インパクトのある写真が欲しくて脱いで頂きましたが、まだ指一本触れておりません。

まだね」


若い男の声の向こうから笑いを押し殺したような複数の声が聞こえてくる。

この笑い声はあの半グレ達だ。


「娘を解放しろ!」


「いいですよ。

あなたが条件を飲んでくれたら危害を加えずにお返しします。

ウチの親父、極豪組の組長が捕まったのは知っていますよね?

親父を不起訴にして頂きたい」


「なっ!?」


極豪組とは、ここら辺で一番大きい指定暴力団だ。

政治界にも深い繋がりがある。

この暴力団はあの半グレとも繋がっている。


その組長を最近やっと捕まえられた。

義父も深く関わっている。


いよいよ一網打尽にしようとしていた所だ。


「そんな事出来るわけ無いだろ!!」


「そうですか。

それなら、あなたの娘さんが全世界生配信でAVデビューするだけですよ」


今度はスピーカーの向こうから不快な笑い声が聞こえる。


「ふざけるな!!」


「ふざけてなんかいませんよ。

2時間後にもう一度ご連絡します。

では後ほど」


「父さんダメよ!

こんなに屈してはいけない!」


姉さんの力強い声が聞こえると同時に電話が切れた。

義父は怒りに震えている。


「すまない。

少し用事が出来た。

昼食はまた今度にしよう」


部屋に戻って来た義父は僕に悟られないように、さっきまでと変わらないトーンで僕に謝ってきた。


「わかった。

じゃあ僕は帰るね」


「ああ、今日は遅くなるかもと伝えてくれ」


「はーい」


僕が部屋を出ると義父は頭を抱えていた。


きっと義父は正攻法で姉さんを救おうとするだろう。

そして、決して不当な事をしない。

姉さんも心の底からそれを望んでいるはずだ。


でも、それだときっと姉さんを救い出すのは間に合わない。


義父も姉さんも正しい事をしている。

なのになんで傷つかないといけないんだ?

やっぱりこの世は過酷で残酷で理不尽だ。


検察庁を出た僕は大雨の中全速力で走った。

人生で今まで感じた程の無い憎悪を感じた。


この爆発しそうな感情を押し殺して耐える事なんて出来そうもない。


いいや。

耐える必要なんて無いんだ。

僕は悪党なのだから。

何も気にする必要は無い。


これを悪党の美学と言わずなんと言う。


『美学その12

憎悪の赴くままに、生きてきた事を後悔するほどの報復を!!』


僕の中で新しい美学が生まれた。

この時僕は初めて音速の壁を超えた。

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