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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
4章 悪党は自分の都合しか考えない
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第19話

アークム領で起きた暗殺事件。

迫り来る暗殺者は全部僕のおもちゃと成り果てた悪夢のフィナーレ。

その後について少し話をするね。


僕は自室に戻ると迷わずベットへとダイブした。

やっとダラダラ出来る僕の夏休みが始まった。


今日は寝よう。

一日中寝よう。

思う存分寝よう。


何の意味もなく無駄に惰眠を貪る。

これぞ贅沢の極み。


ああ、このゆっくりと意識が遠のいていく感じ。

最高だ〜


おやすみなさい。


バンッ!


勢い良く乱暴に開けられたドアの音で僕は目が覚める。


「ヒ〜カ〜ゲ〜」


とてつも無く低い声のシンシアが僕の部屋に勝手に入って来る。


「剣術の稽古に付き合いなさいって私言ったよね?」


言ってた。

だけど僕はブッチするつもりだ。


「言ってたね」


「なんで来ないでベットの上にいるわけ?」


「ブッチしようと思って」


シンシアからブチッて音が聞こえた気がした。


「あんたいい度胸ね。

今すぐ引っ張り出してやる!」


シンシアが両手で僕を掴んでベットから引き剥がそうと引っ張る。


僕はベットにかじり付いて必死に抵抗した。


「いーやーだー。

僕は寝るの」


「いいからさっさと来い!」


「だってボコボコにされるもん」


「当たり前でしょ!

その為の剣術の稽古なんだから!」


「それは違う。

シンシアが強くなる為だ」


「普段わね!

でも今日はあんたをボコボコにするためだけ!」


「それは稽古じゃなくてリンチって言うんだ」


「それの何に問題があるわけ?」


「問題しか無い」


「い・い・か・ら・き・な・さ・い!」


「やだやだ。

最近夜寝れて無いから今日こそ寝るの」


「お兄ちゃん、なんで寝れて無いの?」


様子を見に来たのか、いつのまにか登場したヒナタが不思議そうに尋ねる。


「それはその……」


どうしよう。

咄嗟に言い訳が出てこない。


「どうしたの?

ストレス?」


「ヒナタ、ちょうどいい所に来た。

ヒカゲを引っ張り出すの手伝って」


「そうだね。

剣術の稽古したらストレス解消になるよ」


それでストレス解消になるのは君達だけだ。

僕はそんな青春スポ根みたいな少年の心は持っていない。


二人に両手を拘束されてベットから引き離されて僕は外に連れて行かれた。


この後僕は間違いなく二人にボコボコにされる。


いいもん。

この後アンヌに一杯甘やかしてもらうから。


今日はうさぎさんの絆創膏にしてもらおう。



「うわ〜ん、アンヌ〜

ヒナタとシンシアが僕をいじめる〜」


ボコボコにされた僕はアンヌの部屋に突撃する。


「コラ!ヒカゲ君!

ノックをしなさい!」


着替え途中で下着姿のアンヌが持っていた服で慌てて隠すが、殆ど隠れていない。


もちろん僕は確信犯だから遠慮なく凝視する。


「見てよ。

二人にボコボコにされたから今日も傷だらけになっちゃたよ」


「わかりました。

手当してあげるからちょっと待ってね。

先に着替えさせてね」


「うん」


僕は凝視したまま待つ。

でも一向にアンヌは着替え無い。


それどころか顔を赤らめたまま止まっている。


「あのヒカゲ君?」


「なあに?」


「私着替えたいのだけど……」


「わかってるよ。

だから待ってるの?」


「その……

一回出て行ってくれないかしら?」


「なんで?」


僕は惚けて首を傾げる。


アンヌがそっーと横に動くと、僕の視線も付いていく。


「せめて向こうを向いてくれない?」


「どうして?」


更に惚けて首を傾げる。

アンヌがジト目で僕を睨む。


そんな程度で見るのをやめる僕では無い。


「ヒカゲ君。

分かってて言ってるでしょ?」


「分かってて言ってる」


アンヌの顔は恥ずかしさで更に赤く染まっていく。


「ヒカゲ君ってエッチなんですね」


「僕も男の子だからね」


「いつまで見てる気ですか?」


「着替え終わるまで。

今日ぐらいはいいかなって」


「そういう賢さはいりません!」


「えへへ〜」


笑って誤魔化してる間も僕は決して目は離さない。


「もう、見せ物じゃ無いんですよ」


アンヌは諦めたように囁いてため息を吐いた。


アンヌは耳まで赤くしたまま向こうを向いて着替えの続きを始める。

それを背中を瞬きせずに見届ける。


やがてぎこちなく着替え終わったアンヌがやっとこっちを向く。

顔の赤さはまだ残っている。


「ヒカゲ君。

本当に今日だけですよ」


「はーい」


「本当は怒ってすよ」


「はーい」


「明日同じ事したら本当にお説教ですからね」


「はーい」


「ちゃんとわかってますか?」


「はーい」


「……」


「……」

「もしかして明日も狙ってますか?」


「はーい」


「コラッ!そこに正座しなさい!」


僕は大人しく正座をする。


結局アンヌのお説教が始まった。


でもお説教するアンヌも可愛いから、ついニヤけてしまう。


「ヒカゲ君。

全然聴いていませんね?」


「そんな事無いよ」


「反省してますか?」


「もちろん」


「なら私に言う事は?」


「アンヌは後ろ姿でもとても綺麗だったです」


せっかく元に戻って来ていた顔が再び赤くなる。


「感想は聞いていません!」


「次は前も見たいです」


「希望も聞いていません!」


怒っている表情を見せるが、プンプンと擬音が聞こえて来そうなほど愛くるしい顔だ。


「本当に恥ずかしいんですからね。

次はちゃんとノックしてから入って来る事。

わかりましたか?」


「はーい」


「本当にわかっているのでしょうか?」


アンヌは疑わしい目で僕を見ている。


大丈夫大丈夫。

次はノックして返事ある前に突撃するから。

今晩あたり試してみよう。


「とりあえず、手当するのでそこの椅子に座ってください」


「今日はうさぎさんがいい」


「はいはい、わかりました」


アンヌが迎えに座って手当てをしてくれる。


「強くなりましたか?」


「そうだね。

二人共学園で更に強くなったと思うよ」


「私が聞いているのはヒカゲ君の事ですよ」


「うーん……

僕も強くなったと思うよ」


「それはよかった。

二人の事を守ってあげてくださいね」


「二人の方が強いよ」


「それでもヒカゲ君はお兄ちゃんなんですから」


「はーい」


「はい、いい子です。

そのかわりヒカゲ君はお姉ちゃんが守ってあげますね」


「流石にアンヌより僕の方が強いよ」


「それもそうですね。

では私も守ってください」


「もちろん。

アンヌも僕が守ってあげるね。

ん?あれ?」


「どうかしましたか?」


「なにかおかしいような……」


「はい、手当て終わりました」


最後は僕の希望通りのうさぎさんの絆創膏を貼ってくれた。


「ヒカゲ君、あとの夏休みのご予定はどうなっていますか?」


「えーとね、ずっと家でゴロゴロダラダラする」


「何が予定は無いのですか?」


「特に無いね」


「本当ですか?」


「うん、無いよ」


アンヌは呆れてような目で僕をじっと見つめる。


そんな目で見られようが無い物は無い。

きっとダメ人間だと思っているのだろう。


でも大丈夫。

アンヌはそれぐらいで僕を見放すような人間じゃない。


「実は来週から一週間ぐらいお出かけしようと思います」


「え〜、アンヌいなくなっちゃうの〜」


「はい。

久しぶりにシンシアを誘って故郷の村に里帰りしようと思います。

ヒナタちゃんも誘おうと思っています。

ヒカゲ君も一緒にどうですか?」


「僕も行っていいの?」


「もちろんですよ」


「行く。

僕も一緒に行く」


「では、そのつもりにしといてくださいね」


「はーい」


二人の故郷か。

そういや行った事無いな。


僕が行った事無いって事は平和でいい所なんだろう。

なによりアンヌと旅行は心躍る。

凄く面白そうで楽しみだ。


僕の当初の夏休みのゴロゴロダラダラ計画とは違うけど、それはそれでいいとしよう。


『美学その4

面白そうな事には積極的に参加する』


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